第5話 フィラルド王国へ リューン王子はモテモテです
3/14 この話の最後の部分から大幅改稿して話が前と全く違う話になっております。
痛い……また、死んだ……
また牢の中なの?また死ぬの?
あなたは……誰……?
血……?
いや……駄目……死なないで……
「いっ、いやあぁあああー‼︎」
私は叫び声と共に起き上がった。顔は青白くなり、手は震えている。体は汗で全身濡れている。
震えていた手に手が重ねられる。右にリューン王子、左にカイナス王子がいて、私の手を握っていた。
「大丈夫かい?随分うなされていたようだけど」
リューン王子はハンカチで額の汗を拭ってくれた。
「夢を……見ていたんです。あの悪夢のループを。……ごめんなさい、汗をかいたので着替えても良いですか?」
私はそう言い、二人に一旦退出してもらった。
扉を閉めて息を吐いた。そこでふと疑問に思いあたりを見渡す。
「ここは……どこ?」
確か王宮の離宮で三人で話をしてて。その時にまるで走馬灯のように、ループで起きた出来事が頭の中に映像として入ってきて……
いっぱい吐いて、倒れた。
私はしゃがんで頭を抱えた。そして、声を押し殺して、心の中で叫んだ。
私、王子たちの前でゲーゲー吐いちゃったの⁈ちょっ、女としてどうなの⁈
いやあぁあああーー‼︎恥ずかしくて穴があったら入りたいぃいいいーー‼︎
一頻り叫び終えると、両頬を軽く叩き気持ちを切り替えることにした。取り敢えず落ち着こう。
まずはここが何処か知るべきだ。
白い壁紙に、茶色を基調とした落ち着いた調度品。どれも素晴らしい物ばかりだ。
窓の外を見ると綺麗な花々が咲いている。しかし、見慣れない風景だ。その奥に小さく見える街並みも見覚えがない。
一体ここは何処なのだろう?
ふと下を見ると、ベッドの横に私が着ていた服が畳んであった。
今更ながら自分の体を見ると、寝間着を着ている。
誰が着替えさせたの?まさか、あの二人のどっちか?
想像したら恥ずかしくなり、頭を横に振った。早く着替えよう。外で待っている二人が心配してしまうだろうし。
そう思い慌てて着替えていると、急に扉が開いた。
「アデルリア。言い忘れていたが、君の服……」
「きゃあぁあああーー‼︎何勝手に入ってこようとしてるんですか、カイナス王子ーー‼︎」
着替えの途中で突然入ってきたカイナス王子に、私は手近にあった枕を思いっきり投げつけた。顔面に食らったカイナス王子は、その場で尻餅をつき、首根っこをリューン王子に掴まれて、部屋の外に出され扉は閉まった。
数分後、着替え終わり扉を開けた。
涙目になって座り込んでいるカイナス王子の姿が目に入った。
「ごっ……誤解なんだ。着替えの場所を言い忘れたのを思い出して」
「だからって、女性の着替え中に部屋に入るのは、マナー違反ですよ。いきなり開け出すからこっちがヒヤヒヤしましたよ」
「リューン王子の言う通りです。ドア越しに言ってくだされば良いのに」
「そっ、そうか‼︎……なんで気づかなかったんだろう」
カイナス王子ってば、おっちょこちょいね。
私はおもわず笑ってしまった。だが、すぐに咳払いする。
「えっと……。お待たせしてしまい、すいません。どうぞ中へ」
私は二人を中に入るよう促した。
するとリューン王子はソファーの近くの棚へ行き、紅茶の準備をし始めた。
「リューン王子?」
「ああ、先に座っていてくれないか。すぐに用意するから」
そう言いリューン王子は、テキパキ用意していく。それはもう手早く準備が進められ、あっという間にテーブルに紅茶とお茶菓子が置かれた。
しかし、絵になる。動作は素早いが動きが優雅。一つ一つの動作が気品があり絵になる。流石王子様だ。
そう言えば、二人は王子だけどタイプが全然違うわよね。リューン王子は線が細く、気品がありエレガントな王子。
カイナス王子は少しガッチリしていて大らかで気さくな王子。そう言う王子だからさっきのようなアクシデントもそんなに心象悪くならないのよね。得な性格だわ。
「おっ、流石リューン王子。リューン王子に紅茶を入れてもらった女性は、必ず恋に落ちると言われているだけあってすごく美味しい。……はっ‼︎だっ…ダメだ、アデルリア‼︎これを飲んだらリューン王子に惚れてしまう‼︎」
「何言っているんですか、カイナス王子。いくら美味しい紅茶でも、飲んだだけでは恋しませんよ。多分、リューン王子の紅茶を入れる所作とかそう言うのも関係あるかと。エレガントな所作で、自分の為に気品溢れるリューン王子が紅茶を入れてくれる。しかも、すごく美味しい‼︎という感じで恋に落ちるのでは?」
「アデルリアは見てしまってるじゃないか。あぁあああ、どうしよう」
「落ち着いてください。別に私は何も特に変わりはありませんよ」
カイナス王子はその言葉にホッとして、紅茶とお菓子を楽しんだ。
「残念。君は私に恋してくれないんだ」
「えっ?」
リューン王子は私の手に手を重ね、私の目を見つめる。
「別にそんなつもりはなく、今までは人に紅茶を淹れていたけど、君にはその効果があったら良いなと思うよ」
リューン王子は椅子に腰掛け優雅に微笑む。この微笑みヤバイ。心臓に悪い。流石モテモテの人は違うわね。
カイナス王子も皆に人気があるが、それは人柄とかで、リューン王子のは色気が凄い。頭がクラクラしてきたわ。
私は顔が火照っていくのを感じ、話題を逸らした。
「そっ…そう言えば、リューン王子はよくテキパキ用意出来ましたね。まるで棚の中をしっかり把握されていたみたい」
「ああ…。ここは私の部屋だからね。どこに何があるかは分かるよ」
……私の……部屋?
そう言えば、ここってどこか聞いてなかったわね。
「あの、初歩的な質問なのですが、ここは一体どこなのですか?」
「ここは、私の部屋。フィラルド王国の王宮内のオレの私室だ」
フィラルド王国⁈
だって、私たちは、メイルディーン王国の王宮内の離宮に……
「えっと……あの……」
「君はあの時倒れてしまったからね。何も覚えていなくても無理はない。大丈夫、順を追って説明するよ」
そうしてリューン王子はここに来るまでの経緯を話してくれた。
私が倒れた後、二人は私を一旦カイナス王子のお母様のいる離宮へ運んだ。そして医者に診てもらった。
気を失っているだけで、大丈夫だと言われた二人は、その医者に診断書を依頼した。
アデルリア嬢は心身ともに負荷がかかって意識を失っている。目が覚めても環境が変わらなければまた繰り返す可能性が高い。
療養の為、国を出て違う風にあたった方が良いだろうと。そう書いてもらった。
そして、リューン王子の計らいで、フィラルド王国でしばらく療養する事になった。
カイナス王子は、婚約発表する予定だった相手がいきなり一人で行くのは不安だからついて行くといい、ついてきた。
次期国王が軽々と他国へ……と思ったが、どうやら元々、来月あるフィラルド王国の式典に出席する予定だったのだ。その折、フィラルド王国の各所を回る予定で一週間後に行く予定になっていた。
一週間程度ならリューン王子も快諾しているし、早まっても問題ないという事になり、カイナス王子も一緒に来ることとなった。
そして転移装置と馬車を使って二日で到着し、ベッドで私は半日寝ていた。
転移装置は、メイルディーン王国では国内の主要都市に一つずつある。フィラルド王国はどれだけ存在するか知らないが、国境は超えれないので馬車も必要になるのだ。
存在は知ってるけど、私は使ったことがないのよね。どんな感じか見てみたかったな。
取り敢えず、国は出れたし少しは安心ね。でも、いつまでもいられるわけではない。リューン王子と結婚しない限りは。
私はチラッとリューン王子を見た。王子は私に気づき微笑んだ。良心が痛む。
こんな良い人を利用して良いのか?リューン王子のことは大切だ。私を信じてくれた大切な人。
でも、今になって冷静に考えてみると恋とは違う。確かに素敵な人だと思うし、結婚したら幸せになれると思う。好きになる……気がする。
でも、今は違う。まだそこまでの感情じゃない。
聖女として生きてきて、恋愛事は何もなく転生した。アデルリアはカイナス王子に恋していたが、それは私であって私じゃない。
いつ人生が終わるか分からない。終わりはある日突然やってきたりする。転生して、私はそう痛感した。
だからこそ、恋したい。私は、恋がしたいんだ‼︎
死んだらおしまいじゃんとは思う。でも、恋もしたい。恋して命も守る。
私はそう決意した。
「目覚めたばかりで申し訳ないが、国王に会ってくれないだろうか?」
「そうですよね。他国の者が王宮に滞在させていただくわけですし、国王様に挨拶するのは道理ですものね。私はもう大丈夫です」
こうして私たち三人は国王様に謁見することになった。