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第3話 人生初のモテ期到来です

 リューン王子は、事件当日から先程までの出来事を事細かく話してくれた。


 私が悲鳴をあげて現場で捕まった後、手紙を拾い一生懸命助けようとしてくれたこと。彼も私が二度処刑されるところを体験し、三度目で助け出せたが途中で殺されてしまったこと。そして一年前のこの日になっていて今に至ると。


 カイナス王子に関しては、私が捕まった後にカイナス王子に面会を求めたが、毒を盛られて死んでいたことを話してくれた。


 リューン王子は王と、カイナス王子を殺した人と、私に罪を着せた人は同じ可能性が高いといった。

 先程のメイドに毒を盛られたというカイナス王子の発言から、実行犯と黒幕は違うかもしれないが。


 兎に角、三人の事が邪魔だと思う人物が犯人である可能性が高い。そうなると一番怪しいのは第二王子のケイル王子派の誰かということになる。


 後、これは事件に関係あるか分からないが、リアの事だ。

 彼女はもうすぐ入学予定の王立学園で出会う生徒だ。私とは正反対で皆に好かれ、愛されていた。そして魔法の才能に秀でていた。

彼女は良い人を振舞っているが、何か引っかかるらしい。

 まだ出会っていないが、一応用心しておこう。


 リューン王子の話を先に聞けてよかった。カイナス王子は犯人ではなかった。寧ろ私と同じ被害者だった。

 婚約破棄の話は、私にカイナス王子が生きていると思わせ、尚且つ王子に捨てられた事実を突きつけて、精神的にダメージを与え大人しくさせるためだろう。


「オレが死んだ後にそんな恐ろしい事が起きていたなんて…」


 話を聞いていたカイナス王子は青ざめていた。


「オレが不甲斐ないばっかりに…そのような事件が起きてしまい、すまない」


「そんな、カイナス王子は既に亡くなっていたんですからどうにも出来なかった事ですよ」


「いや、オレは君が危ないような目に遭わないようにずっと気をつけて来ていたんだ。君も気づいていると思うけど、リアが現れてから君に対する態度が変わったよな」


「そう、ですね…。辛かったです、とても」


「すまない。しかし、ああするしかなかったんだ。そうしないと君がリアの標的にされると思ったから」


「標的?」


「彼女はオレを狙っていた。理由は分からない。次期王妃の座が欲しかったのかもしれない。彼女は皆に優しかったが、人を陥れる印象操作をしていた」


「えっ⁈あの、リアが?」


「ああ。自分がさも可哀想な人だと同情を誘い、相手を悪者にする。オレには効かないが、魔法の力も使って相手を信じ込ませていた。そうやって君の評判が悪くなる噂が流れたんだ」


 そうだったのか。前から多少は嫌われ者ではあったが、入学してから更に酷く嫌われるようになったのはそのせいなのか。


「だから、君と少し距離を置いて、リアと仲良くした。そうすれば、リアが君のことを目の敵にしないと思ったから。…しかし結果として、周りにオレとリアが付き合ってるのでないかと思われて、君の評判も悪くなる一方だった。本当にすまない。あの事件の日の朝、意を決してリアにアデルリアが好きで、リアの事はなんとも思っていない。これ以上、君との仲を皆に誤解されると困ると告げたんだ。その後、あのような事件が…。偶然かもしれないが、もしかしたら、リアが事件に関係している可能性もある」


「じゃあ、カイナス王子は私の事…」


「今も昔も変わらず君が好きだ。他人にも自分にも厳しいところも、たまに見せる優しい笑顔も」


 まさかの愛の告白にアデルリアはビックリした。


 カイナス王子、本当にごめんなさいー‼︎

 王子は色々私の事を考えてくれていたのに。それなのに私は政略結婚の道具としか思ってないとか勝手に思って、二度の死で、色々あって百年の恋も冷めたとか、勝手に嫌いになって。

 私は本当に酷いやつだ。

 しかも、王子の好きな私と今の私は違う。私は前世の記憶を取り戻し、変わってしまった。

 確かに私はアデルリアとして今まで生きてきた。体に染み付いたことはアデルリアのままだが、考え方とか性格は多少二人分混ざったかもしれないが、概ね前世のものだろう。

 今日過ごしてみて、そんな感じがした。

 なので、今の私は王子が好きになったアデルリアとは違うんです。

 本当に色々ごめんなさい。

 私は心の中で何度も謝った。


「ちょっと良いかな?」


「どうしました?リューン王子」


 リューン王子は私の手を取りじっと見つめている。とても真剣な表情だ。


「いや、いきなりカイナス王子の告白が入るとは思わず、ビックリしてな。私も言いたい事があるんだ。アデルリア」


「はっ、はい」


「好きだ」


「えっ?」


「君に結婚を申し込んだのは、君を守りたいという意味ももちろんあるが、君が好きだからだ。学園で出会って、過ごしているうちに君に惹かれた。年月ではカイナス王子には勝てないが、君を思う気持ちは誰にも負けない」


 えっ、えぇえええーー‼︎

 私はビックリした。結婚は本当に私が好きだから申し込んだって……

 えっ?私、今二人に告白された⁈

 前世で恋愛とかと無縁だったんだけど、ここに来てモテ期到来⁈


 モテた試しのないアデルリアは呆然としていた。


「……ル…ア。アデルリア」


「あっ…」


「大丈夫かい?」


「すいません、リューン王子。まさかお二人からその…愛の告白をされるとは思っても見なかったので」


 私は自分で愛の告白と言ったのが恥ずかしくなってきて、下を向いた。この恥ずかしさを消すために、話題を変えねばと私は思った。


「あのっ、私まだお話していないので、してもよろしいですか?」


 そう言い、私は捕まって二度も処刑されて、最後はリューン王子と逃げてる最中に殺された話をした。そして一年前に戻った話をした。


「アデルリア。本当に辛い思いをして。先に死んでしまい、なにも出来なかった自分が憎い」


 そう言い、カイナス王子は涙を浮かべながら私を抱きしめた。私のことを本当に心配している。

 昔のカイナス王子のままだ。


「いつまでアデルリアにくっついているんですか?カイナス王子」


 リューン王子が後ろから私の手を掴んで言った。


「昔から仲が良く、今日婚約しようとしていた仲だ。別に良いじゃないか」


「しかし、先程婚約はしたくないと言われていましたよ」


「あれは、リアの事を誤解されてたり、オレが死んだ後に婚約破棄を言われたりしたからじゃないか‼︎」


「私は先程結婚を申し込んで、アデルリアに受けてもらえましたよ」


「なに⁈」


 カイナス王子は驚いて私を離し、私の両肩に手を置いてじっと目を見つめた。


「ほっ…本当なのか?」


「えっ…ええ」


 カイナス王子は青ざめて俯いてしまった。


 確かに言ったわ。だって、あの時の私は皆に嫌われていて、リューン王子は、唯一私を信じて助けてくれた人だったから。

 それに、彼は隣の国の王子。彼と結婚すれば、この国から出られる。




 ーー貴方は、本当にそれで良いの?ーー



「えっ?」


 急に何処からか声が聞こえた。



 ーー歴史はまた繰り返されるーー


「誰?」



 そして、ループで体験した事と、先程二人から聞いた体験が色褪せた映像として頭の中に流れ込んできた。


 何これ……なんでこんなものが……。

 繰り返されるって、また起こるの?


 心の中で叫んでも、もう何も聞こえない。


 全ての映像が流れ終わると、急に吐き気をもよおした。


「うっ……あっ……」


 そして私は吐いて、そのまま倒れてしまった。

 

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