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地球外生命体が魔法を持ち込んだ世界線  作者: 月影魁斗
第一章:魔導大会編
8/36

Ep.8 超越者:玲華

魔導大会の後の話になります。

天音達が打ち上げしたり、梨絵は出場したことがばれます。


そして、話は学校の授業に移ります。

特別クラスの彼らが受ける授業とは?

魔法学校の下宿先にて。

魔法学校は日本中から魔導師が集まっているため、下宿先を用意している。

さすがの魁も寮を建てる土地の用意までは出来なかった。

生徒が増えたら、意地でも探して建てるつもりらしい。

同じ下宿先である天音、月夜、朝奈の三人は晩御飯を食べていた。

今のところ、この下宿に住んでいるのは、この三人のみだ。

「今日は取り敢えず、お疲れ様ー!」

天音が二人に乾杯を促す。

「まだ終わってないでしょう?気分が早いです」

「そうよ、貴女達は魔力ほぼすっからかんまで行ったのに、休息を取らないと...」

二人が遠慮していると、下宿先の寮母である『霧島咲(きりしまさき)』が料理を持ってきて、間に入る。

「こういう気分転換は大事よ?どのみち作ってしまったお料理余っちゃうから」

彼女は玲華、雷人の母親で、少し複雑な事情をもつ彼女達の世話を任されている。

「そうだよ?今日終わる予定だった魔導大会、延期になっちゃったし、用意してくれたのは食べないと!」

目の前にはジュースや揚げ物系のオードブルが置いてある。

天音は三人の中で一番背が低いが、大食漢だ。

ただ、美味しいものを食べたいだけであるのだが。

「まあ、残すのは申し訳ないし...」

「それもそうですね」

朝奈と月夜は渋々だが、打ち上げに同意する。

「私も一緒にいいかしら?」

咲が飲み物をもって混ざってきた。

「勿論!雷人ママも一緒に!」

天音が自分の隣に来るよう手招きする。

「さて、揃ったところで...かんぱーい!」



四人が楽しんでる頃、梨絵と玲華は、剣家にいた。

大会が終わった後、梨絵の着信記録は両親の名前で埋め尽くされていた。

梨絵は親に無断で出場していたのだ。

私も同罪だし、事情説明する。と言って、玲華は付き添った。

梨絵と並んで座り、向かいには梨絵の両親が座っている。

「玲華。これお茶ね」

姉の梨亜が玲華に飲み物を持ってきた。

「大丈夫よ、私は...」

「貴女の魔装具じゃなければ、梨絵は危険だったんでしょ?」

玲華は渋々受け取った。

玲華と梨亜は、雷人と梨絵のように、幼馴染だ。

梨絵のように魔力感知や魔力視を持ってはいない、ごく普通の一般人だ。

「さて、梨絵...何か言うことは?」

梨絵の父親が娘に尋ねる。

さすが元剣道師範なだけあって、気迫が凄まじい。

「えっと...一回戦は勝ったよ?」

「ふざけるな!」

「ちょっと、玲華ちゃんの前よ...」

おおー怖い。

大抵の物は怖くないと自負しているのだけれど、この人は本当に怖いわ。

普段はとても優しいパン屋のおじちゃんなんだけど。

梨絵は半べそ状態だった。

というよりも何故火に油を注いだのかしら。

「どうして出場したんだ?」

父親の問いに、梨絵は答えた。

「魔力感知と魔力視あるから、勝てるかなって。でも魔力ないから、防御手段として魔装具を玲華お姉ちゃんに作ってもらって」

梨絵は素直に答えた。

「玲華さんの作った魔装具だからこそ良かったものの、普通だと死んでたかもしれないんだぞ!」

梨絵は一度、玲華に命を助けてもらっている。

梨絵の両親も、玲華の強さを知っているので、信頼はしている。

「玲華さん。この度は娘がご迷惑をお掛けして、誠に申し訳ない」

梨絵の父親が頭を下げる。

「いえ、私も頼まれて作ってしまったので、私の責任でもあります。ですから、頭は下げないでください」

玲華は少し気まずくなった。

謝られるのは得意じゃないのよね。

それはそうと、大事なことがある。

「その...大変言いにくいのですが、梨絵さんは二回戦出場権を持っています。どうしますか?」

玲華は尋ねてみた。

勿論、棄権は出来るのだが。

「...出場した以上、勝ち進まなければなりません。そう教えてきましたから」

少し意外だった。

大和魂からなのか、梨絵の出場を許可した。

「え、ほんとに?」

梨絵が父親に尋ねる。

「今回だけだ。次からはちゃんと相談しなさい」

「ありがとう、お父さん!」

父は少し照れてるようだ。

何だかんだ、娘には甘いとはこの事だ。

「いいから、早く休みなさい」

はーいと梨絵が自分の部屋に戻っていった。

「ごめんね、挨拶も無しに」

「いえいえ」

ほんとお転婆な子。



所変わって、打ち上げ会場にて。

天音と月夜は疲れからか、食べ終わった後、その場ですぐ寝てしまった。

二人に毛布をかけて、咲は後片付けを始める。

片付けをする咲の隣に朝奈が来る。

「手伝います」

「あら、ありがとう、朝奈ちゃん」

洗い物を手伝いながら、朝奈は尋ねた。

「あの...私が暴れたことを知っていますか?」

「...ええ」

咲は手を休めず答える。

「私、怖いんです。あの二人は許してくれたけど、心の中では私のこと嫌いなんじゃないのか、怖いんじゃないかって」

朝奈は作業を止め、少しだけ震えながら話している。

「力を消してもらったとはいえ、また魔力が暴走するんじゃないか。そう思ってしまいます」

作業の手が止まった朝奈に、咲は話しかける。

「心配しなくても大丈夫よ」

「咲さんは私が怖くないんですか?」

朝奈が振り向いたのを感じたのか、咲は朝奈の方を見る。

「勿論、怖くないわよ」

そのまま咲は広間で寝ている二人を見るを

「...あの子達もね、昔、貴女のように魔力で悩んでたのよ」

「え?」

咲は二人の過去を簡単に話す。

「天音ちゃんは、小学生の時に魔力に目覚めたの。光魔法という特別な魔力をまだ幼かった彼女は制御出来ずに、暴走させてしまった」

雷人と天音、些細な喧嘩から始まった暴走だった。

「月夜ちゃんは、中学生の時に魔力に目覚めたの。孤児院の育ちだから、魔力のせいで両親に捨てられたって思って、自殺しようとしたわ」

『月の因子』による特殊な魔力。

その力で、人を傷つけた。

「二人とも、雷人と梨絵ちゃんに助けられたの。今日みたいに無我夢中で助けようとしてたわね」

そんな経緯があり、二人は雷人と梨絵には感謝と絶大な信頼を持っている。

「今ではああやって、自分の力を理解して、伸ばそうとしてるの。そんな二人だからこそ、貴女の気持ちを理解できるのよ?」

「そうだったんですね...」

話してるうちに、片付けが終わった。

「ふう。手伝ってくれてありがとうね」

「いえ、私も話を聞いてくれて感謝しています」

と、咲が朝奈を優しく抱き寄せた。

「な、何を...!」

「強がらなくていいのよ。泣きたいときは泣けばいいの。今は私がお母さんよ」

温かい。

久々に感じる母の温もり。

朝奈は少しだけ子供に戻った。

二人が寝ているのを忘れ、声を上げ泣いた。



「今日はありがとうございました」

玲華は剣家の玄関で、礼をした。

「いえいえ、いつでも歓迎よ」

梨絵の両親が見送ってくれた。

「あの、やはり12年前の事が...」

12年前。

玲華が梨絵の命を救うことになった事件だ。

「そうだね、過保護なのは分かってるけど、まだ少しだけトラウマがね」

梨絵の父は自分が情けないと思ったのか、苦笑いで答えた。

「それは親として当然のことだと思います。頼りないですが、雷人がついてますよ。それに私も」



「ふふ、泣き疲れたのかしら?」

咲の腕の中で、朝奈はそのまま眠りに着いた。

朝奈をソファーに寝かせ、椅子に座った。

「あら、久しぶりね、波鈴ちゃん」

振り向かず、そのまま答えた。

「ご無沙汰してます」

いつの間にか、波鈴が立っていた。

「今日はどうしたの?」

「朝奈ちゃんのことでご報告を、と思ったのですが…どうやら大丈夫そうですね。流石です」

波鈴が答えると、咲は少し微笑んだ後、席を立つと、ティーカップを用意する。

「せっかくだし、お茶でもどう?」

「ぜひお願いします」

波鈴が席に着いてすぐ、咲が紅茶を持ってきた。

「玲華は迷惑かけてない?」

咲が波鈴に尋ねた。

超越者の管理者としてではなく、玲華の友達として。

「どちらかといえば、かけてますよ?今日だって梨絵ちゃんをあんな事に巻き込んで」

波鈴は少し困った顔で答えた。

「ですが、自由奔放なのが、あの子の良いところでもあります」

高校の同級生である彼女達もまた、雷人達と似たような関係を持っている。

「梨絵ちゃんの件は私からも言っておくわね。波鈴ちゃんだから、私も安心してあの子を任せれるのよ」

波鈴が切り出す。

「そこで一つ提案なんですが...」



翌日。

「んんー…いい匂い…!?」

天音が目を覚ますと、広間だった。

「あれ!?何でここに!?」

「あの後すぐに寝てしまったようですね。魔力がほぼ0だったので、仕方ないといえばそうですが」

月夜は先に目を覚ましていた。

既に朝食を食べている。

「ずるいー私もー!」

天音が月夜から朝食のおかずを少しつまみ食いした。

「ちょっ…!私の物を取らないでください!自分の分を取りに行きなさい!」

「いいじゃーん!ちょっとだけぇー!」

「貴女のちょっとは、ほとんどなんです!」

月夜と天音が言い合っている。

「あの、普段からあんな感じなんですか?」

朝奈が配膳をしている咲に尋ねた。

朝奈は今まで、一緒に朝食を食べなかったので、この様子を知らなかった。

「そうよ?」

朝奈は少し呆れたが、微笑ましく思えた。



「んー…8割回復ってとこか」

鏡を見ながら、雷人は軽く肩に手を当て、クルクル肩を回している。

雷人は学校の準備をしていた。

大会終了後、一番の重傷者だった雷人は、神奈の『渦』によって家に帰り、すぐさま寝てしまった。

神奈の呪符の力で、魔力だけは充分に回復している。

だが、体の疲れはどこか完全に抜けていなかった。

そんな雷人を残して、母親は寮母、父親は後処理、姉は気分転換で家にいない。

「朝から一人か。寂しいねぇー」

咲が用意してくれていた朝食を食べながら悪態をついていると、チャイムがなった。

「んあ?この魔力は…」

雷人が玄関に向かい、ドアを開ける。

「どうした?大樹」

「おはよう雷人!可愛い幼馴染じゃなくて、すまんな!」

そこには大樹が立っていた。

「何の用だ?こんな朝から…」

「せっかくだしよ、一緒に行かね?ちゃんと喋ってないだろ?」

まあ、確かにそうだな。

それに梨絵も色々あって今日は来れないとか、連絡来てたっけな。

「わかったよ。ちょい待ってろ」


雷人と大樹は二人で登校している。

「そういやよ、お前らはどうやって出会ったのよ?」

大樹が雷人に質問をした。

大樹と朝奈は同郷の幼馴染だ、と紹介している。

梨絵はともかく、天音と月夜については詳しく話してなかった。

「梨絵は幼馴染ってのは知ってるか。天音は小学生の時、月夜は中学生の時だな。二人とも何だかんだ紆余曲折あって…」

と、言いかけて雷人は止めた。

「ん?どうしたよ?」

「いや、本人の許可無しに話すのはよくないかなって」

あの事件達のことはまだ話すべきではないだろう。

咲は朝奈に話してしまっているが、雷人は知らない。

雷人の感情を何となく察したのか、大樹は問い詰めることはなかった。

「…そうか、なんかごめんな」

「気にすんな。いつかきっと話すことになるから」



チャイムを鳴らすが、誰も出ない。

「おかしいなー?雷人出ない…」

「もう学校に向かってるんじゃないの?」

天音が思案顔してるところに、朝奈が突っ込む。

「雷人がこの時間に行ってるとは思えません」

月夜も少し思案顔で答える。

あいつ、ほんとに信用されてるの?

昨日の咲さんの話が若干嘘に思えてきた。

朝奈がそんな事を思っていると、誰かが玄関の扉を開けた。

「どうしたのよ皆?」

そこには、如何にも寝起きな状態の玲華がいた。

「あれ?玲華さん?珍しいね、家にいるなんて」

「昨日のことを考えなさいよ?寝るに決まってるでしょう」

天音の問いに、玲華は欠伸混じりで答えた。

雷人は姉はいないもの、と考えているので、まさか部屋で寝てるとは思っていなかった。

「あの、雷人はいませんか?」

月夜が玲華に尋ねた。

「あら、愛しの雷人をご所望で?」

「ち、違います!昨日のことがあったので、心配で来てるんです!」

あ、分かりやすい。

朝奈は心境に思った。

「ふふっ、冗談よ。靴がないから、もう学校に行ってるんじゃない?」

玲華がそう言うと、天音は少し怒った。

「はぁ?私を置いていくなんて、許さない!」

少し魔力を使い、天音は学校へ向かう。

「こら天音!そういうことに魔力を使わない!」

月夜が後を追い掛ける。

「あの、昨日は色々とありがとうございました」

朝奈は玲華に礼を言う。

しっかりと言えてなかったので、いい機会だ。

「あれが私の仕事よ?気にしないで。中の子にも伝えといてね」

流石は超越者の玲華さん。アクアの存在に気付いてる。

少し驚く朝奈だったが、再び頭を下げ、二人の後を追った。

「元気ねー。さて寝ようか…」

「玲華?」

後ろの気配に悪寒を感じる玲華であった。


雷人と大樹が学校に着く。

教室に入り、席に着くのと同時に天音が勢いよくドアを開けた。

「雷人ー!!置いていくなんてひどい!最低!」

「いや、最低はないだろ」

天音が少し涙目で雷人に問い詰めてきた。

「まあまあ、天音さん。俺が雷人を誘ったからさ、許してくれよ?」

ここまでになると思ってなかったからか、大樹が間に入る。

「むー…次からは気を付けるように!」

ん?それって遠回しに「私以外と登校するな」って言ってない?

と、雷人は少し思ったが、突っ込むのを止めた。

その後、月夜、朝奈と続き、特別クラスの5人が揃った。

先日のような遠い距離感ではなく、仲良しグループのような距離感で。



朝のホームルームが終わった後、生徒はそれぞれのクラスへ別れた。

特別クラスの5人は、取り敢えず校庭集合とのことだった。

今回の魔法の授業は初めての屋外のようだ。

雷人達5人は、校庭の片隅で待機していた。

「始めてまともな授業だね」

天音はわくわくしながら話す。

「あんまり動きたくはないんだけどな」

雷人の怪我は完治したわけではないので、本音をもらす。

「そういえば、魁先生は?」

朝奈が雷人に質問する。

「昨日の後始末だと。氷牙さんだけだと、何しでかすかわからないからって」

伝説の5人リーダーとしての責任感からか、付き添っている。

雷人はあまり心配していないのだが。

その後、5人で他愛ない話をしていると、魔導書を持つある人物がやって来た。

「おはようございます、皆さん」

波鈴の登場に5人は驚く。

月夜が誰よりも早く尋ねた。

「波鈴さん?どうしてここに?」

「それは私が新たに先生となりましたので」

波鈴が答えると、そのまま続けるように言った。

「それともう一人」

後ろを振り向くと、こちらに向かってくる人影が一人。

何かブツブツ言いながらやってくる。

「なんで私が...」

「姉さん!」


「新たにこのクラスの先生となった霧島玲華よ。お母さんと波鈴から無理矢理連れてこられたんだけど」

玲華が横目に波鈴を睨むが、波鈴はスルーした。

「私も一応このクラスの先生ですが、玲華が暴れないよう監視するのがメインですね」

波鈴が使う魔法の一つ『不思議な世界(ワンダーランド)』は、空間内の魔素を支配する魔法だ。

例え超越者である玲華も、魔素が使えなければ無力となる。

「あの、今日は何をするんですか?」

朝奈が二人の先生に尋ねると、玲華が少しにやけながら答えた。

「私にかかってきなさい。1対5でいいわよ」



「玲華先生と戦いなんて...月夜、天音、雷人。先生の実力は?」

朝奈が戦った経験のある三人に尋ねる。

余程の余裕があるのか、玲華は五人に準備と作戦を練る時間を与えた。

「私達が中学生の時は、全く歯が立ちませんでした。ですが、今の私達なら勝ち目はあるかと」

月夜が答え、雷人もそれに頷いて同意した。

「最初から全力で、だね!」

天音は適当に答えるが、誰よりもやる気に満ちている。

「喰らえば分かるが、雷属性は勿論の事、消滅属性も気を付けろ。今の俺たちには、あれを対処する方法がないからな」

雷人が説明すると、大樹がそのまま続けるうに話す。

「一人で二属性とかずるいよなー。波鈴先生も全属性とか…」

「あら、私が化け物みたいな言い方ですね」

波鈴がいつの間にか大樹の後ろに立っていた。

「い、いつの間に!?」

大樹を驚くのを見て、波鈴は軽く咳払いする。

「私の魔法は魔導書の再現、謂わば『魔導書属性』というもの。そういう性質の魔力なんですよ。これを『魔力特性』と言ったりします」

『魔力特性』を持つのは稀なことで、特性の有無が、超越者の条件の一つにもなっている。

「初めて聞きました。波鈴先生はどのような特性なんですか?」

「そうですよ、何なんすか?」

朝奈が尋ね、大樹が続いた。

雷人、天音、月夜の三人も詳しくは知らないので、片耳立てている。

「魔力特性『解析(アナリシス)』。魔導書(アカシックレコード)を網羅出来るのは、この特性のお陰です」

波鈴が言うには、魔導書(アカシックレコード)は魔族の文字が使用されていて、人間には読むことが出来なかった。

それを玲華が読もうとしていたところを、波鈴が容易く解析したそうだ。

「まあ、その話は今度にしましょう。今は試合に集中してください。相手は超越者ですよ?」



準備が出来たところで、五人は玲華の待つ校庭の中央に向かった。

特別クラスが試合をするとの噂を聞いてか、他のクラスの生徒でギャラリーが出来ていた。

「負ける用意は終わったかしら?」

玲華が挑発してきた。

「黙れ姉さん。今日は勝つ」

雷人が構え、他の四人も構えた。

玲華は笑っている。

「では、試合始め!」

波鈴の掛け声と同時に、天音が動いた。

いつの間にか『光装:オーディン』を纏っている。

光装を纏った状態での、亜光速による(グングニル)での突撃。

「ふっ、ますます光速に近付いたわね」

フェイントを交えながら攻撃する天音。

それを玲華は目で追っている。

「けど、まだ遅い。武器召喚『魔法刀』!」

天音の攻撃を刃先で受け止めた。

「あの速さを捕らえるの!?というか、槍を刀の刃先で止めるなんて!」

僅かな誤差も許されない受け方だ。

「ぼさっとしない!天音に続くのです!」

月夜が前に走った。

「っしゃ!ちょいとガチの魔法使うか!」

大樹は自分の両腕を地面に差しこんだ。

「土魔法『戦士の籠手(バトルグローブ)』!」

大樹の両腕に、岩で出来た籠手を纏った。

「大樹、それは魔装具か?」

「腕だけだが、真似てみたぜ!」

雷人の問いに大樹が答えた。

意外と器用なんだな。

そんなことを思いつつ、雷人も『雷装:雷綱(いづな)』を纏い、玲華の方へ向かった。

「武器召喚『水神刀:(おぼろ)』!」

朝奈も水神が作ったとされる刀を取り出した。

村に伝わる神刀である。

(力は貸せるけど、無理はしないで朝奈)

アクアの声が脳に響く。

(分かってるわ。でもせっかくの力を合わせる練習、無駄にしないわ)

脳内で会話しながら、朝奈も玲華の方へ向かった。

「十二星座が獣の王よ。焼き尽くせ」

月夜がある星座を指でなぞる。

それに合わせて、上空の衛生が形を変える。

「月魔法『召喚:獅子座(レオ)』!」

月夜の詠唱とともに、巨大な赤い獅子が姿を表した。

鬣は炎のように揺らいでいる。

「何だあのライオン!というか、炎?」

「月魔法の中でもトップクラスの火力の星獣だよ。さすがの姉さんも…」

大樹と雷人は、すかさず距離を取り、獅子座(レオ)の通り道を作る。

一番そばにいた天音も、分かっていたかのように玲華から離れた。

「流石ね月夜ちゃん。魔法を使わざるえないわ」

左手を構えると、獅子座をギリギリの距離まで詰め、魔法を放つ。

「『雷波』」

雷人の『雷波』よりも威力、範囲ともに上の魔法を放つ。

だが、獅子座(レオ)は怯むことなく、前足で踏みつけようとする。

「あら、意外としぶとい」

玲華は少し驚きながらも、冷静に跳躍で回避した。

「いくぜ大樹!」

「おうよ!」

すかさず雷人と大樹が挟むように魔法を放つ。

「雷魔法『雷玉連射(サンダーバレット)』!」

「土魔法『岩弾の大砲(キャノンショット)』!」

無数の雷と岩の塊が、玲華を襲う。

しかし、玲華は空中で全ての攻撃を回避した。

影を残すことなく、一瞬で移動し回避している。

「なんで空中であんな動きを!?」

大樹の叫びに、玲華が答えた。

「飛翔魔法。魔力をコントロールして宙に浮く魔法よ」

魔装具魔法(雷装や光装)を纏った状態だと、ある程度可能な芸当だが、通常状態で飛翔魔法を使うのはかなり難しい。

武器召喚がかわいく思える難易度だ。

「雷人!空中戦は任せた!援護する!」

「簡単に言ってくれんな!」

雷人は玲華が待つ空中へ向かう。

朝奈は、出るタイミングを逃してしまい、様子見している。

そこに、獅子座(レオ)が近寄ってきた。

「…朝奈さん。ちょっといいですか?」

月夜が獅子座(レオ)の上に立ちながら、朝奈を呼んだ。

「これ、炎みたいなのに乗れるの?」

そう言いながらも、刀を鞘に収め、獅子座(レオ)の背中に飛び乗った。

「大丈夫ですか?」

「正直、ビビってしまったわ。空中だと私も何も出来ないもの」

月夜の問いに朝奈は答えた。

遠距離攻撃を持っていない訳ではないが、雷人と大樹の攻撃を見る限り、回避されるのは目に見えている。

「私も今のところ成す術無し。前衛のサポートしか出来ません」

衛星(サテライト)で、前衛のアシストを行っているが、それが精一杯だった。

玲華は天音と雷人の超高(光)速の攻撃を捌きながら、衛星(サテライト)の破壊も行っていた。

現状厳しい状況だが、劣勢というわけではない、と月夜は見ている。

「一つ考えがあるのですが、いいですか?」

月夜はある作戦を朝奈に告げた。

「そこまでやる必要がある?このまま上手くやれば、勝てるのに?」

朝奈は疑問に思い、月夜に尋ねた。

「否定はしません。ですが()()()()()()()()()()()()()()()()です。だからこそ警戒する必要があります」

「確かに、何年も同じ強さってのは引っ掛かるわね。わかったわ。私も試したいことがあるし」

朝奈が同意し、鞘から刀を抜いた。

「雷人!大樹さん!玲華さんに全力で戦ってください!」

月夜が衛星(サテライト)を使って、作戦を二人に告げる。

水神龍戦の時に天音や梨絵との会話に使用した魔法だ。

「いや、無茶言わないで...」

「ああ、わかった」

「雷人ー!?そんなあっさり!?」

大樹が渋る中、雷人は迷うことなく了承した。

月夜の事を信頼しきっている。

「何かあるんだろきっと。信じてやるしかない」

「...だな!」

雷人と大樹は再び玲華に戦いを挑みに行った。

「そう言えば、天音には言わなくていいの?」

確かに、天音は話を聞かずに、そのまま玲華と戦っていた。

「あの子は魔法を見て、私の作戦を理解するでしょう。口で言っても分かんないでしょうし」


彼らが衛星(サテライト)で会話している様子を見て、玲華は警戒していた。

「...何かあるみたいだけど...」

しかし、考える隙を天音は与えてくれなかった。

「ほんとその光装やっかいね!」

「流石の玲華さんでも、捌ききれなくなったかな!?」

天音の光装の防御力は、雷人の雷装よりも格段に高い。

更には、攻撃力補正、機動力補正も上だ。

「一番最初に覚える魔装具魔法の性能じゃないわよ!」

玲華は刀で攻撃するが、光装に弾かれる。

弾かれた隙を見て、天音は咄嗟に槍で突いてくる。

この試合中に成長している。

「ほんと、バトルセンス高すぎ!」

玲華が天音からある程度の距離をとると、雷人が突っ込んできた。

両腕には、『雷獣の鉤爪』が展開されている。

「姉さん!」

「雷人...私に勝てるの?」

玲華は余裕ぶってみるが、内心焦っていた。

天音との戦いで、緊張感を得てしまったから。

隙を見せる余裕が無くなってしまっていた。

「おらぁ!」

「っこの!」

玲華の刀と雷人の鉤爪が激しくぶつかり合う。

しかし、パワーは雷人が少し上だった。

魔力で強化しているだけの刀では、足りなかった。

これは、玲華も予想してなかった。

「姉弟喧嘩に茶々入れるぜ!土魔法『双土璧(ダブルウォール)』!」

雷人はギリギリまで玲華と鍔迫り合いをし、魔法が当たるスレスレで回避した。

玲華は鍔迫り合い後の硬直のせいで逃げる隙を作れず、咄嗟に刀を鞘に納め、両側から迫る壁を両腕で防ぐ。

「これくらい...!」

しかし、圧されつつある。

玲華の肘が徐々に曲がっていく。

「意外とパワーあるわね!『双雷波(そうらいは)』!」

雷で壁を破壊し、魔法を相殺した。

「隙だらけ!」

玲華の一瞬の硬直を突き、雷人が距離を詰めた。

だが、そう来ることを玲華は予想していた。

『双雷波』の魔力をを手に残していた。

そのまま刀に手をかけ、魔力を流し込む。

「雷魔法『雷一閃(らいせん)』」

勢いよく雷の刃を抜く居合斬り。

雷人は鉤爪で受けるが、容易く飛ばされた。

「くっそ!」

一瞬見えた玲華の表情は、真剣だった。

「雷人!」

「天音ちゃん!そのパターンは飽きたわよ」

天音が助けに来たところを、雷の魔力を纏っている刀で斬りつける。

だが、斬った感触がなかった。

両断された天音は、影となり消えていく。

「!フェイント…!」

玲華の魔力視が反応した。

左右に天音と朝奈が衛星の上に立っていた。

天音の周囲には、光で生成された無数の矢が浮いており、朝奈も自らの持つ刀に水の魔力を纏っている。

「光魔法『光矢の雨(ルミナス・レイン)』!」

「水魔法『水連刃(すいれんじん)』!」

同時に飛んできた矢と刃の魔法。

回避しても、光の屈折や反射で、思いもよらない所から攻撃が来ることは目に見えていた。

回避させないための広範囲攻撃。

玲華に残された手段は一つ。

「『魔力消滅(ディスペル)』」

指をならすと、無数にあった魔法が一瞬で消えた。

「これが消滅属性…!想像以上に厄介だな!」

大樹は魔導大会の会場では、観客の避難誘導に当たっていたので、消滅魔法は初見だった。

「姉さんが『魔力消滅(ディスペル)』を使用したってことは、余裕が無くなってきたってことだし、それに…」

「玲華さん!もう結界は出来てます!」

月夜が獅子座(レオ)の上で、片方の手のひらを玲華に向けていた。

「結界?一体何を…」

魔力感知の感度を上げると、三体の星獣の存在を感じた。

戦っていた四人を捉えることに魔力感知を使っていたので、気づけなかった。

「月魔法『召喚:白鳥座(キグヌス)琴座(リラ)鷲座(アクイラ)』!」

月夜が唱えると、三体の星獣が姿を現した。

しかし、三体の力を合わせても、獅子座(レオ)には及ばない。

「…星獣三体じゃ足りないわよ」

玲華は魔法を放つが、上手くいかなかった。

似たような感覚を味わったことがある。

「これは…『不思議な世界(ワンダーランド)』と同じ!?」

「範囲内の魔素を乱す結界です!月魔法『結界:夏の大三角』!」

玲華は結果の中に取り残された。

ほかの四人は、結界の範囲外から攻撃していたのだ。

「月夜さんのことは信じてたわ!」

朝奈は飛び上がった。

三角形を両断できる角度へ。

(いくよ、アクア。準備はいい?)

(ええ、朝奈。貴女を信じるわ)

朝奈は刀を構え、魔力を貯める。

「今なら出来る!『精霊召喚:水神(アクア)』!」

朝奈の顔には、龍のような模様が出来ている。

アクアを水神龍の呪縛から救ったことで、体を持たないアクアは朝菜の中にいた。

それが結果的に精霊として存在することとなったのだ。

精霊召喚は、精霊との信頼関係が十分でないと出来ない魔法だ。

「なっ!もう呼び出せるようになったの!?」

玲華が驚いている中、朝奈は魔力を貯め終わった。

()()をなめないでください!水魔法『青龍(せいりゅう)』!」

水神龍が波鈴に向かって放った水でできた龍の魔法だ。

威力自体は、水神龍には及ばない。

だが、放たれた水の龍は、少しずつ大きくなっていく。

「夏の大三角に水...まさか!」

「気付いても遅いです」

やがて龍は、巨大な川となって玲華を襲ってきた。

「「月水混合魔法『天ノ川(あまのがわ)』!!」」

精霊の持つ力を使い、夏の夜空を再現したのだ。

「...ちっ!」

簡単には相殺できないと見た玲華は、結界が張られてから貯めていた魔力を使った。

「『高出力魔法消滅(ハイディスペル)』!!」

玲華を中心に消滅属性の爆発が起こった。

結界ごと天ノ川を消滅させた。

「無効化させられた!あれでもダメなのかよ!」

「いや、何か腑に落ちない。何か忘れてる…?」

大樹が落胆している中、雷人は思案顔になる。

無効化された魔法から天音が飛び出した。

「まだだ!」

玲華は驚き、動こうとするが、動けなかった。

玲華は高出力魔法消滅(ハイディスペル)の反動で動けない。

「玲華さんの消滅属性は、物質を消滅させることはできない!魔法の中に隠れた天音は消せない!」

月夜も結界の反動で、動けずにいたが、獅子座(レオ)が足の代わりとなっている。

「大きい魔力の中だから、感知されても上手く隠れるという算段よ!」

天音自身は光装で防御ができるため、中にいてもダメージはほとんどない。

朝奈と月夜たちも魔法をコントロールして、天音のスペースを確保していた。

「私達の勝ちだー!!」

五人は勝利を確信し、笑みがこぼれ始める。

天音の槍が玲華に近づく。

しかし、玲華と波鈴は表情を変えてない。

「...これは予想外だったわ。まさかここまで追い詰められるなんて」

玲華も笑みをこぼした。

地面から植物の根が生えてきて、天音の動きを封じた。

天音の槍は玲華にあたる寸前に止められた。

「何これ!動けない!」

天音は抜け出そうと必死にもがくが、びくともしなかった。

ほかの四人は信じられないといわんばかりの表情をしている。

「あれは...木の根…でしょうか…」

月夜、朝奈、大樹の三人が雷人のほうへ振り向く。

勝ちを確信していたので、天音以外の四人は一ヶ所に固まっていた。

「姉さんが植物系の魔法?俺は知らない...」

「弟の雷人が知らない魔法ってなんだよ?」

三人は驚いた。

弟が把握していない未知の魔法だったのだ。

玲華はふーっ、とため息をつく。

「まさか、この魔法を使うことになるとはね...」

「玲華先生!それは一体?」

朝奈の問いに、玲華が答える。

「私が超越者たる所以の力よ。雷と消滅だけでは足りないもの」

「それってどういう意味なんですか?」

朝奈が再び聞いたところで、月夜は思い出したことを話す。

「玲華さんの属性は両親から継いでいるものですが、完璧ではないという意味です」

雷人がさらに付け足すように答える。

「雷属性は父さんから。消滅属性は母さんから引き継いでいる。だけど、それぞれの属性は、両親よりも性質的に劣っているんだ」

親から属性を受け継ぐことは、魔導師だとよくあること。

天音や月夜のように、オリジナルの属性を持つこともある。

「お母さんの消滅属性は、物質も消せるし、お父さんの雷より魔法の最大威力やバリエーションは少ない。この二つでは、私の魔力は引き出せない」

玲華が軽く説明したところで、大樹が雷人にあることを尋ねる。

「お前の母さん、やばくね?」

伝説の5人(クインテット)の6人目みたいな感じだったらしい。父さんも頭上がらない程の」

朝奈はかなり驚いた。

あんな優しい人がそんな強い魔導師だったとは。

「それもあとで聞くとして、あの根が、玲華先生の真の力?」

「どう見る?月夜」

高度な魔力視をもつ月夜なら、自分達が見えていない何かが見えているかもしれない。

そう思い雷人は月夜に尋ねた。

「まだよく分かりませんが、一つ言えるのは...()()()()()()()()ということです」

三人は驚き、玲華の方を見た。

「流石ね、月夜ちゃん。ひとつ話さなきゃね」

そう言うと、玲華は続けて話す。

「朝奈ちゃんの加護である水龍神の加護は、今や『水神アクア』へと進化し、精霊として体に宿っている。名前を授かったことで、魔力が増しているわね」

魔素生命体は、自らの名前の知名度、信仰度で魔力の強さが決まる。

アクアの場合、知名度は村一つ分しかないものの、信仰度が高いので、普通の魔素生命体よりも強い。

精霊として、人に憑くことで、さらに力を得ることが出来る。

「だから、魔力を消したのに元に戻ってるんですね」

朝奈が今使っている魔力は、アクアの力でもあった。

「それとなんの関係が?」

朝奈は玲華に尋ねた。

「精霊を宿してるのは、貴女だけじゃないのよ?」

玲華が答えると、左目が緑色に輝き、木のような紋章が浮かび上がった。

「『精霊召喚:ユグドラシル』」

背後に、精霊が現れる。

少し明るめの緑色の髪で、白いドレスを着た少女だった。

「あんなもん隠し持ってたのかよ。笑うしかねーわ」

雷人は冷や汗をかいた。

「玲華先生の精霊!?」

「ユグドラシル...名前を知らない人間のほうが少ないだろ...!ありえねぇ魔力!」

大樹が驚きの声をあげ、雷人が説明した。

知名度、信仰度共に桁違いの精霊だ。

「あの時の...波鈴さん以上です!」

魔力が大きすぎて、魔力感知がほとんど役に立たない中、月夜の正確な魔力感知のお陰で、何とか比較できた。

「アクア!同じ精霊としてどう!?」

そばにいたアクアに、朝奈が尋ねてみた。

「...同じ名持ち精霊、だけど格が違いすぎる。私じゃまず歯が立たないわね」

まだ精霊としてのキャリアも短いアクアは、朝奈との力の合わせ方の熟練度が低かった。

「わー!」

玲華が根を操って、天音を四人のほうへ放り投げた。

「っと、天音、大丈夫か?」

雷人がキャッチすると、すぐに天音は体勢を立て直した。

「近くじゃ魔力の圧で身動き取れなかったよ…」

近くにいた分、玲華の強さを肌に感じていた。

「私の衛星から感知するレベルは、最低でも100万以上...」

月夜の言葉に大樹が反応した。

「100万!?波鈴先生のレベルが53万なのに!?」

月夜の衛星(サテライト)込みの感知だから、間違いはないだろう。

「雷と消滅しか使わない姉さんが1000くらいだ。魔力を解放してない状態、だけどな」

超越者はあまりにも莫大な魔力を有するが故、普段は魔力を封印している。

波鈴は、管理者ということもあり、ある程度解放しているが、玲華、神奈の二人は、ほとんどの魔力を封印している。

玲華はユグドラシルの力で、神奈は呪符による呪術で、波鈴はアカシックレコードで封印している。

二人とも日常生活では、レベル1000程度の魔力を使うようにと波鈴からきつく言われている。

「1000くらいだったからこそ勝ち目があった。だが、今の姉さんは、魔力を解放してないにも関わらず100万以上...化物だな」

もはやどんな魔法も無意味だった。

「さて、ユグ。やるよ」

ユグドラシルが頷き、玲華が一歩動くと、体が急に重くなった。

「そこまでですよ、玲華」

波鈴が玲華の前に立った。

「波鈴...」

「これ以上は私の『不思議な世界(ワンダーランド)』も持ちません。それにもう大体わかってますよね?」

波鈴は少しだけ睨むように玲華を見た。

「...わかったわよ。ごめんねユグ。戻ってくれる?」

ユグドラシルは頷くと、玲華の中に戻っていった。

同時に天音を捕らえていた根も消えていった。

波鈴はやれやれといった感じに溜め息をついた。

玲華と波鈴は五人のもとに近付く。

「さて、実習は以上!一人一人にアドバイス!」

玲華がそう言うと、大樹の前に立った。

「まず大樹君!君は魔力に無駄があるね。高威力範囲攻撃は構わないけど、使う場面をもっと考えなさい。一点集中型の魔法を覚えることね、最初の籠手みたいなね」

岩弾の大砲(キャノンショット)』や『双岩壁(ダブルウォール)』といった大きな魔法ばかりで、低範囲魔法はあまり得意ではない。

「あ、はい!」

大樹の返事を聞き、朝奈の前に移動した。

「さて、朝奈ちゃん!精霊を呼び出せるのは正直驚いたわ。もっと仲良くなって力を引き出せるようにしましょう。冷静なのはいいけど、時には思いっきり来なさい。魔法はまあ、今のところ文句ないわ」

最初の攻撃で、自分に成す術がないと早期に判断したことを突っ込まれた。

「あ、りがとうございます」

朝奈の返事を聞き、月夜の前に移動した。

「月夜ちゃん!少し周りを頼りすぎね。自分で解決する魔法を編み出しなさい」

攻撃魔法の少なさを突っ込まれた。

星座由来の武器を召喚は出来るが、使いこなせるかどうかは別だった。

「…ごもっともです」

月夜の返事を聞き、天音と雷人の前に移動した。

「さて、天音ちゃんに雷人、あんたらは猪突猛進の単純バカな攻撃しかしないの!?魔装具魔法と速さで調子に乗ってたら足元掬われるわよ!」

シンプルだからこそ強いこともあるが、そればかりでは意味がない。

その分読まれやすくなってしまう。

「...めちゃ怒るじゃんねー」

「な?あん時やられかけたくせに...」

天音と雷人がこっそりと話している。

「何か言った?」

「「いえ!別に!」」

思わずはもってしまう二人。

「ま、何だかんだ楽しめたわよ」

「何終わった雰囲気を出してるんですか?授業はまだ続きますよ?」

まとめようとする玲華を波鈴が止めた。


その後、玲華が朝奈を、他の四人を波鈴が見ることになった。

いかがでしたか?

因みに、「〇属性」というのは、詠唱部分になります。

玲華は詠唱省略で魔法を出しています。

大きい高威力な魔法になるほど、詠唱が長くなる設定です。


次回は、皆でお昼ご飯を書きたいなと思っています。

あの子が出ます。

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