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地球外生命体が魔法を持ち込んだ世界線  作者: 月影魁斗
第一章:魔導大会編
6/36

Ep.6 魔導大会 3

前回、朝奈が怪しい感じで終わりましたね!

今回は、ボス戦を書いてみました!

「...まずいな」

氷牙が席を立つ。

「黒い魔力に取り憑かれかけてしまっている。あのままじゃ...」

魁も合わせて席を立った。

氷牙が直ぐにスタッフ達に通達する。

「観客の避難させろ!試合は一旦中止だ!繰り返す!一旦中止!即刻観客を避難させよ!魔導師には避難誘導の護衛を!」



「ねぇ、ちょっとやばいんじゃない?」

神奈が二人を見る。

「...神奈、『渦』の準備を。座標は指示します」

「ええ、わかったわ」

波鈴が神奈に指示し、彼女は作業に移る。

一人、映像を見据えてる玲華。

「...何かがいる。あの子の中に」

「ええ、レベル測定の時は奥深くに眠っていたようですが、負の感情に影響されて出てきたみたいですね」



「あれではまずいですね、天音!」

月夜が天音に指示を飛ばす。

戦いながら、天音は答える。

「わかってる!!ちょっとやり過ぎたかな...」

「いいから距離を取りなさい!」

月夜がこれだけ警戒してるのか...

「大樹、梨絵、お前らは下がってろ。正直、守れるかわからねぇ」

雷人は二人に告げるが、大樹は納得していない。

「俺は残るぞ!朝奈は幼馴染で...」

「そんなことはわかってる。だが今の彼女ににその感情はない」

辛いだろうが、言うしかない。

今の『あれ』はそれほど危険な存在だ。

「そんな...」

大樹は今にも泣きそうな顔だ。

絶望の表情と言うのが正しいか。

「いいから、避難誘導手伝っておけ。お前の魔法で守るんだ」

「...わかった。朝奈を...頼む」

大樹は悔しそうな顔で避難誘導へ向かった。

「雷人...」

梨絵はまだ残っていた。

「心配すんな、俺は負けねぇよ」

雷人は彼女の頭を撫でる。

「うん...頑張ってね...!」

梨絵も大樹のあとについていく。

幼馴染だし、今ので伝わるだろ。

「雷人のお父様達は観客の護衛に行ってます。ここは私達3人で止めなければいけません」

月夜が伝えに来た。

確かに父さん達は主催者側だ。責任問題になりかねない。

とは言え、あれを三人か...

「ああ...やろうか!」

心なしか、わくわくしている。




「アリエナイ...ワタシガ...ワタシガアアアアァァァァ!!!」

朝奈は悶え苦しんでいる。

明らかに魔力が『黒い』。

一定の距離を保ち、雷人が尋ねる。

「月夜、どう見る?」

「...内に眠るものが目覚める。といった感じでしょうか」

月夜が『衛星(サテライト)』を動かしながら答える。

最適な位置を探っているようだ。

いつの間にか、数も先ほどの戦闘の倍の数を配置している。

「今まで負けたことない、みたいなこと言ってたもんね...私のせいかな?」

天音は光装を解き、二人の側にいる。

流石に後悔の念が強い。

「本人の心の弱さが原因です。気持ちが分からないわけではないですが...」

「ああ、全力で答えることに間違いは...くるぞ!」

雷人が話してる途中で魔力が増大した。

三人が構える。

「ウアアアアアアアアアァァァァァァァァァ!!!」

朝奈を中心に、水が一帯に弾け出す。

三人はそれぞれ防御障壁を作り、防いだ。

朝奈が居たところから、巨大な水柱が現れ、徐々に生き物のようにうねりだす。

巨大な龍が現れた。

全身鱗で覆われ、辺りには、魔力球が無数に浮いている。

「あれは...」

魔素生命体(まそせいめいたい)...!」

人々の強い信仰心や思いなどが、魔素に影響を与え、魔素生命体を作り出す。

思いの強さがそのまま魔素生命体の強さになる。

「あいつらの村で祀られてるのは『水神龍』らしい」

三人が魔力感知で感じる魔力の強さは、村人達の信仰心の強さがわかる。

「すごい魔力ね...月夜、朝奈の位置は?」

天音が問い掛ける。

月夜の高感度な魔力感知は意図も容易く位置を看破する。

「頭部です。正確な位置は、衛星で情報共有します。あと、分かっているでしょうが、文字通り化け物です。レベルで換算すると、600は超えてるでしょう」

三人が戦ってギリギリ勝てるかどうかである。

だが、天音は表情を変えることなく、返事をする。

「わかった!雷人!『雷装(らいそう)』は残ってる?」

雷装(らいそう)』。天音がが使用する『光装(こうそう)』と同じタイプの魔法だ。

「梨絵との戦いは脚だけ着けてたから、まだいけるぜ」

それにもう試合ないし。

「私の『光装(こうそう)』はリミット近いから、手足だけの簡易版で、月夜の援護に回るね!攻撃は雷人だけになるかもだけど...」

「ですね。魔力感知に集中することになるので、攻撃は自己防衛しか出来ませんし、正直、全て捌けるか自信ありません」

月夜は攻撃手段が限られる。

空間が水神龍の魔素に侵食されつつあり、魔力感知が妨害されている。

座標固定は月夜にしか出来ない。

「心配いらねーよ。俺は負けねぇ」

雷人は構える。

「すぅー...はぁー...」

魔素が集まったのを感じ、自身に定着させる。

「雷魔法『雷装(らいそう):雷綱(いづな)』!」

雷で出来たスニーキングスーツのような魔装具が体を覆う。

光装(こうそう)』ほど派手じゃないが、攻撃防御共に期待できる。

「来ます!」




「っしゃおらぁ!」

雷装(らいそう)』を纏った状態なら、『鉤爪(かぎづめ)』などの攻撃魔法を即刻発動できる。

雷人は両腕に『鉤爪(かぎづめ)』を纏い攻撃する。

「少しは効いてるみたいだな」

「オオオオオオオォォォォォォ!!」

水神龍は、全身を使い暴れる。

尾の部分が、観客席を破壊した。

「まずい!会場壊されちゃう!」

「任せなさい!『衛星(サテライト)』配置変換」

月夜は何かの形を型どるように手を動かす。

月夜の『衛星(サテライト)』は、ある法則に配置することで、特殊な効果を持たせることができる。

それは、星座。

「化け物相手は怪物を!」

神話では、神が使わした石にされた海の怪物。

「月魔法『召喚:くじら座(ケトゥス)』!!」

くじら座といっても、一般的な鯨とは似ても似つかない容姿の怪物。

神話の通り、螺旋模様の鱗を持ってる四足歩行の怪物。

水神龍ほどの大きさはないが、拘束するには十分の強さだ。

「グオオオオオオオオオオ!!」

と、大きな鳴き声と同時に、水神龍の尾を押さえ込む。

「尾は捕らえました!」

「ナイス月夜!あとは斬り刻むのみ!」

雷人は、水神龍の全身をを鉤爪で次々に斬っていく。

斬りながら朝奈のいる頭部まで昇っていく。

水神龍も魔法を出しながらそれを妨害する。

浮いている魔力球から水が出てくる。

「くっそ!ただの水なのになんて威力だ!」

時には避けたり、斬ったりしながら昇っていく。

「くっ...!集中しなきゃ...!」

くじら座(ケトゥス)』のような召喚された魔素生命体は主に従うが、魔力である程度制御が必要だ。

勿論強い分消費量と集中力が必要だ。

さらには、魔力感知で二人のサポートも行っている。

月夜に攻撃に対応する余裕はない。

そんな彼女に水が襲いかかろうとする。

「させないよぉ!」

天音が月夜と水の間に割って入る。

「『武器召喚:グングニル』!」

天音が槍を手にした。

魔素を利用して武器を呼び出す魔法だ。

予め武器を魔素と同化させ、体内に魔力として収納するのだ。

収納した後の出し入れは簡単だが、最初が一番難しい高度な魔法だ。

「せいっ!」

天音が槍を突き、魔法を破壊する。

「感謝します、天音!」

「御安い御用!」

あの二人なら安心だ。

と、雷人がチラッと見て思うとほぼ同時に感じた悪寒。

「オオオオオオオォォォォォォォォォォ!!!」

水神龍の叫び声と同時に魔力球から、小さい龍達が無数に現れた。

「何あれ!?」

「分身体...というよりも、水神龍の子供というほうが正しいでしょうか」

月夜もよう分かっていないようだ。

完全に未知の魔法。どう対処したものか。

「取り敢えずまあ、『子龍(こりゅう)』とでも呼ぼうか」

子龍達は三人に襲いかかる。

たが、子龍自体は大した強さはない。

「!!あの子龍達は魔力に惹かれます!避難誘導してる魔導師達の方に!」

月夜が魔力視で性質を見抜く。

精度が上がれば魔法の特性も見極めれるようになる。

「てことは、攻撃が当たれば魔力が吸われる的な!?」

天音が月夜と自分、二人分の子龍を対処しながら言う。

「くそっ!流石に全部はやれねぇぞ!このままじゃ観客に被害が!」

観客に魔力を持った人がいるかもしれない。

「なら心配ないよ!大樹くんもいるし、それに『あの人達』が!」



「まずい!攻撃がくる!」

「魔導師は早急に対処しろ!」

出場選手や警備の魔導師達が観客を守るため奮闘している。

子龍達は一体につきレベル50程度だが、数の暴力で戦線を押している。

「こうなりゃ...」

大樹が両手を地面に着け、魔力を流し込む。

「土魔法『岩弾の大砲(キャノンショット)』!」

5門の大砲から次々に魔力球が発射される。

当たればそこを中心に爆発し、周囲の子龍も倒せる。

「おぉー!」

「何者だあの魔導師は!?」

他の魔導師は雷人達の試合を見てたので、大樹の実力は知らなかった。

当たった地点に穴は開いてるが、戦線は押されている。

「くそ、処理が追い付かない!!」

魔導師達の士気が下がりつつある。

「観客の誘導が終わり来てみれば、押されているではないか」

後ろから威圧感のある女性の声。

「貴女は!」

伝説の5人の一人、氷牙だ。

「大樹と言ったか。見事な魔法だったぞ」

「あ、ありがとうございます!」

大樹は無意識に敬礼していた。

彼女が軍服を着ているのが影響してしまったようだ。

「ふっ。雷獣の生徒じゃなければ、部下に欲しかったな」

氷牙が大樹の前に出た。

「だが」

氷牙が魔力を溜める。

周り一帯が肌寒くなる。

「範囲攻撃とは、こういうものだ!」

氷牙が手を前にだし、魔力を一気に解放する。

「氷魔法『猛吹雪(ホワイトアウト)』!!」

氷牙より前の地面が凍っていく。

子龍達を吹雪が覆い、真っ白になる。

「な、何が!?」

「まあ見ておけ、これが伝説の5人(クインテット)の力だ」

周りの魔導師が戸惑う中、氷牙は前を見据えている。

視界が晴れると、子龍達がほとんど凍って、動けなくなっている。

それどころか、次々に落下していき、割れていく。

「一撃で、全滅!?」

大樹や他の魔導師も驚いている。

軽く腰を抜かしている者もいるようだ。

「ふん。他愛もない...だが、諦める様子はなさそうだな」

会場から再び子龍達が迫ってくる。

「まだ来るのか、懲りないみたいだな」

魁がいつの間にか駆け付けている。

「先生!」

「さぁ、これからだぞ大樹くん!」

伝説の5人が二人いて、先程の魔法。

魔導師達の士気は一気に上がる。

それを感じた氷牙が声を張る。

「魔導師諸君!あの龍をこちらに来させるな!自ら持てる力全てを使え!」



「おらああああ!」

雷人は子龍を産み出す魔力球を壊しながら、頭部を目指す。

子龍が避難誘導している魔導師達にほとんど惹かれている。

「さっき氷牙さんがバカみたいな魔法使ってたから、そいつを奪おうとしてるな!」

おかげで、雷人達への攻撃はかなり軽くなった。

月夜も一人で対処し始めている。

「天音!ここは大丈夫ですから、雷人の援護を!」

「わかった!」

天音は上空の衛星(サテライト)を足場にして、飛び上っていく。

「くっそ!」

雷人は既に頭部にたどり着き、攻撃を仕掛けている。

元々かなりの魔法防御力なのだが、朝奈の周囲だけやたら防御が固い。

つまり、弱点なのは正解なのか。

だが、本気の雷を当てると、朝奈にダメージが入ってしまう可能性がある。

「万事休すだな」

「雷人どう!?」

天音が雷人に追い付く。

衛星(サテライト)で月夜が最適なルートへ導いてくれていた。

「防御力が高過ぎる!だからと言って強い魔法当てると朝奈さんにダメージがいってしまう。現状少しずつ攻撃するしかない!」

「わかった!合わせてね!」

天音の方が速いから、俺に合わせるべきなんだけど...

「お前もな!」

二人は斬ったり突いたりを繰り返す。

水神龍も、攻撃の人数が増えたことで、攻撃を激しくする。

「だめ!びくともしない!」

一度距離を置いて、衛星(サテライト)に着地した。

「状況は?」

天音が乗っている衛星(サテライト)から、月夜の声がした。

「え、何それ!これって会話も出来るの!?」

「今はそんな場合じゃないでしょう!!」

天音に月夜が突っ込んだところで、雷人も戻ってきた。

「さっきから攻撃はしてるんだが、少し傷が付いたくらいだな」

「貴方達の攻撃を耐えるとは...相当ですね」

二人の攻撃力は決して低くない。

寧ろ、伝説の5人(クインテット)とほぼ同等と言ってもいい。

その攻撃力が通じていないのだ。

「雷人ー!!!」

と、試合で使われていた巨大なディスプレイの上から声がする。

その声は、梨絵だった。


「梨絵さん!?何をしてるのですか!」

近くに配置していた衛星を梨絵に近付け、話す。

月夜の衛星(サテライト)でも捉えてなかったようだ。

「あのバカ...!」

雷人もすぐ梨絵の方に向かった。

「魔力持ってないから、私に攻撃は来ないの!」

「そりゃそうかもだけど、それでも危険だよ!早く避難を...」

天音も衛星(サテライト)の通信に入り込んで、話す。

「そうだぞ、ほら捕まれ」

雷人が手を差し出す。

「それより、これ使って?」

梨絵が手渡そうとしたのは、あの木刀だった。

「『魔力無効化』の木刀...これを届けるために?」

雷人が梨絵に尋ねると、月夜が意図に気付く。

「!魔素生命体なら、『魔力無効化』で斬れます!」

魔素で生成されてる魔素生命体だからこそ出来る特効技。

「でも...」

「梨絵さんは逃げる間は、衛星(サテライト)で守りますから」

月夜が話した後、梨絵が木刀を渡す。

「早く朝奈さん、救ってあげてね?」

「わかった!任せろ!」

梨絵から木刀を受け取り、雷人は水神龍の方へ向かう。


雷人が天音の元にたどり着いた。

「天音、わかってると思うが...」

「うん!いくよ!」

会話を衛星(サテライト)越しに聞いてた天音が返事をする。

ふたり再び水神龍を攻撃し始める。

隙を見て木刀で斬る。

「...くじら座(ケトゥス)!」

月夜の声に応じるように、くじら座(ケトゥス)が押さえ込む力を強くする。

「オオオオオオオォォォ!」

一瞬水神龍の動きが止まった。

「今だっ!!」

雷人が一気に近付き、木刀を一太刀。

今までの攻撃が嘘かのように水神龍の頭部が裂け、朝奈への道が開けた。

「っしゃ!届いた!...けど!」

裂けた時の衝撃で、雷人は吹き飛ばされた。

「私が行く!」

天音がすかさず朝奈まで向かう。

「朝奈!」

「...天音...?」

『魔力無効化』の影響もあり、意識ははっきりしてないが、いつもの朝奈に戻っていた。

手足は水神龍と一体化しており、動ける気配はない。

朝奈は天音の傷や半壊の会場を見た。

「...!私は...なんてことを...」

「いいから!!」

天音が朝奈の手足の周りを少しずつ削っていく。

自分が何をやったのかを見て、今にも泣きそうな朝奈。

「天音..」

と朝奈の言葉を聞く前に、天音は水に押し出された。

「くっ!再生した!」

「だったらもう一度だ!」

再び三人は攻撃を始めた。



何もない暗い世界。

水の中にいるような感覚が朝奈を包む。

そんな朝奈は、既に生きる気力を見いだせていなかった。

私はやってはならないことをした。

魔力に取り憑かれ、水神龍を目覚めさせてしまった。

村人の信仰心がいかに強いか理解している。

それなのに力を求めてしまった。

制御が利かない神の力。

今の私に還る資格はない。

お願い。

『私を殺して。』



「...!水神龍の魔力が増しました」

月夜が衛星越しに告げた内容に、二人は驚く。

「バカな!『魔力無効化』を喰らったのにか!?」

「恐らく、朝奈さんが意識が戻った時ににこの惨劇を見て、生きる気力を無くしたのかと」

それを聞いた天音は怒っている。

「あのおバカ!雷人!もう一回斬って!」

「言われずとも!」

何か察した雷人は、隙が出来ていないにも関わらず斬りに行った。

少し攻撃を受けながらも、水神龍の頭部に辿り着き、木刀で斬り裂く。

「斬った!...けどまたぁ!」

雷人は再び吹き飛ばされるが、月夜の衛星(サテライト)に助けられ、先程より飛ばされなくすんだ。

「朝奈!!」

天音がすかさず飛び込み、呼び掛ける。

「天音...お願い...私ごと...殺して」

朝奈は泣きながら訴える。

彼女の表情に、生気はなかった。

そんな顔の朝菜を、天音はひっ叩く。

「このおバカ!友達を殺せるわけないでしょ!」

朝奈は驚いた。

叩かれたことではなく、言われたことに対して。

「友..達?」

「あんたとは何かこう、張り合ってたけど!仲良くなりたいし、好敵手でいたい!強い人と戦うの好きだもん!朝奈は強いし、そのー...」

天音は少し顔を赤くした。

「とにかく、友達だから助けるの!」

彼女なりの説得だった。

「天音...」

「ああ、再生しそう!」

徐々に再生し始めており、押し出されるのも時間の問題だ。

「一度しか言わないよ!この龍の魔力、自分のものにして!」

そう言うと天音は押し出されてしまった。



友達。

そう言われて嬉しかった。

今まで勝つことが正解だった。

負けは認められない、と。

村の皆は、水神龍の加護を受けた偉大な魔導師として接してくる。

誰も朝奈自身を見てくれなかった。

だが、負けることで得るものがあるということを学んだ。

『友達』が教えてくれた。

『友達』は私を認めてくれる。

その『友達』が望むのなら...

朝奈は魔力視と魔力感知に集中させる。

力が一番集中している場所を探す。

どこだ?どこにある?

流れを辿っていくと、核のようなものを感じた。

この核を支配できれば!

核に触れ、魔力が逆流するのを取り込む。

私は強いんだ!

友達のために!

水神龍!私に従え!!!!

突然、核から流れ込んできたのは、何となく見覚えのある景色。

誰かが立っている。

誰なの?

次の瞬間、朝奈は核に飲み込まれていった。



「グオオオオオオオオオオォォォォォォ!!」

水神龍の雄叫びと共に、徐々に体が魔素に戻っていく。

「やった!?」

「とにかく、月夜のとこに行くぞ」

お互い光装と雷装を解いていた。

くじら座(ケトゥス)、お疲れ様です」

月夜もくじら座を魔素に還す。

「お疲れ、月夜」

天音と雷人が月夜のところに着いた。

「皆ー!」

梨絵も三人のもとに駆けつける。

「梨絵、これ返しとくな」

雷人が木刀を渡す。

「うん!お疲れさ...!!」

「...!、そんな...!!」

木刀を受け取ると、梨絵と月夜が何かを察知した。

「二人とも?どうした...!」

天音も気付いたようだ。

さっきまで水神龍がいたところに何者か立っている。

その姿は朝菜ではない。

少しだけある龍のような名残と、先程より大きな魔力。

「...えらく小さくなったと思えば、強くなりやがったな」

雷人も既に臨戦態勢に入っている。

「おい!朝奈さんはどうした!?」

「あの娘は完全に取り込んだ。我が魔力の糧として大いに役に立ったぞ」

今回のは会話が出来るらしい。

というよりも糧?

完全に吸収したようだ。

「友達を餌扱いするのは許せないなぁ!」

「同感です!」

二人もかなり怒っているようだ。

しかし、雷人も天音もほとんど魔力が残っていない。

月夜は余裕そうだが、残り3割くらいだろう。

それを察してか、月夜が作戦を告げようとする。

「ですが、光装、雷装ともに使えない今、厳しいのは変わりま...!!」

「...!まずっ...」

月夜と梨絵が反応したが、わずかに遅かった。

天音と雷人は感知すら出来なかった。

水神龍が魔力感知を掻い潜り、梨絵に一撃入れたのだ。

魔力視を使えた月夜と梨絵は辛うじて攻撃を読めた。

木刀で防御は出来たが、衝撃で吹き飛んでしまう。

「梨絵ー!!!!」

雷人は残った魔力をすべて使って、梨絵を助けいに行く。

「間に合った...けど魔力が!」

防御魔法を使う魔力の余裕すらなかった。

梨絵と庇いながら、壁に衝突する。

「ぐはっ!」

激しい痛みと同時に、雷人は気を失う。

「雷...くっ!」

心配した天音が二人のところに向かおうとするが、水神龍に止められる。

「天音とやら。貴様にようがあるのだ。外野は退場を願おうか」

水神龍はいつの間にか用意した刀を天音に向ける。

「月夜!雷人のところに!」

天音に言われるが、月夜は動こうとはしない。

「ですが天音の今の魔力じゃ...」

魔力視や魔力感知が鋭い分、見えてしまう敗北のイメージ。

「いいから!」

天音は覚悟を決めている。

月夜は腹をくくるしかなかった。

「...わかりました。ご武運を」

月夜が雷人と梨絵のほうへ向かった。

「これで一対一だよ!」

天音はグングニルを構えて、水神龍と対峙する。

「我の刀と貴様の槍。どちらが強いか決闘といこうか」



「ねぇ雷人!しっかりして!死んじゃだめ!!」

雷人は辛うじて息している。

「梨絵さん!雷人は!?」

月夜は駆け付けて直ぐ顔が青ざめる。

雷人の下には赤い水溜まりが出来ている。

「月夜ちゃん!!血が止まらないよぉ!」

梨絵は泣きながら月夜に訴えかける。

「十二星座が水の乙女よ、我らに癒しを」

月夜が手を動かし、詠唱を始める。

「月夜ちゃん!その魔法使ったら魔力が...」

詠唱が必要な魔法は、威力効果ともに大きいが、その分消費魔力はかなり増える。

「今の私に出来るのはこれくらいです!」

衛星が星座を型どる。

「月魔法『水瓶座(アクエリアス)()回復液(ポーション)』」

瓶からエメラルドグリーン色の回復液が流れる。

徐々に雷人の傷が塞がっていく。

「う...もう...!」

月夜の魔力が尽きた。

「月夜ちゃん!」

力が抜けるように倒れかけた月夜を梨絵が支える。

「ごめんなさい...傷を塞ぐくらいしか出来なかった...」

月夜は少し目に涙を溜めている。

自分の不甲斐なさを悔しむ。

「そんなことないよ!今はとにかく、天音を見守ろう!」

魔力を持たない梨絵には、かける言葉が思い付かなかった。



「...っく、この!」

天音のグングニルは空を突いた。

途端に後ろからくる斬撃。

それを天音は避け、すぐさま距離をとった。

「...流石は光魔法の使い手よ。我を目で追うとはな」

光魔法を使う天音は、魔法を見るため、自身が亜光速で動くため、動体視力が常人の遥か上を行く。

さらに魔力で強化されるので、ほとんどの魔法を見て対応できる。

だが、魔力がほとんど残ってない天音は、身体強化をするのでやっとだ。

動体視力を上げれるほど、魔力に余裕がない。

「ふん!遅すぎて当てる気にもならないのよ!」

強がるが正直厳しかった。

カウンターを何度か試みてるが、全て見切られていた。

「こうなったらもう...」

一か八かの一撃にかける!

天音は先程と同じ状況を、作り出す。

突きが避けられ、後ろからの斬撃。

かかった!

天音は身体強化していた魔力で脚部だけ光装を展開し、亜光速で水神龍の後ろに回る。

水神龍は気付いていない。

「これで最後だ!」

天音は渾身の一撃を水神龍の頭に入れる。

しかし、天音の攻撃は避けられた。

頭を傾けて、最低限の回避をしたのだ。

「そんな...読まれて...」

「なにか狙ってることは分かっていたのでな」

驚く天音に水神龍が告げると、刀で斬りつける。

天音は咄嗟に防御しようとグングニルを構える。

「...!グングニルが...!」

だが、今までの攻撃のせいか、グングニルが耐えれず、折れてしまう。

水神龍が斬った勢いのまま、蹴りを入れてくる。

天音は防御魔法でダメージを軽減するものの、飛ばされてしまう。

「ああっ...!」

天音は三人のところまで勢いよく転がった。

「うっ...」

「天音ちゃん!」

梨絵が言葉をかけるが、天音は動けなかった。

天音の魔力も尽きてしまった。

「もう終いか。意外と呆気なかったな」

水神龍は刀をしまい、魔力を溜める。

「まさか...ここまで計算されていた?」

四人は一ヶ所に固まっている。

大きな魔法を当てれば、容易く殺される。

そんな絶望的状況のなか、梨絵が三人の前に立つ。

「私が...」

梨絵は木刀を構える。

「止めて梨絵...貴女だけでも逃げて...」

「いやだ!友達を置いて逃げるなんて!」

天音はか細い声で話すが、梨絵は動かない。

「我の前に立つか、震えているようだが?」

「う、うるさい!」

梨絵は恐怖で震えている。

「梨絵さん、ダメです!...っく...」

月夜は止めに入ろうとするが、体が上がらない。

魔力を溜め終えた水神龍が手を構え、術を放つ。

「仲良く消えるがいい。水魔法...」

水神龍が魔法を出そうとした瞬間、声が聞こえた。


「そこまで」

いかがでしたか?

朝奈が見た情景の正体は?

最悪の状況の中、最後に現れた人物は?

因みに、最初の予定では、この後の展開が少し続き、倒しきる予定でしたww

長いのは違うなと思い、切りましたw

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