Ep.2 この世界
2話です。
前回書いてる内容のおさらい回になっています。
ちょっとした新情報もあるかもしれませんが…
「どうも、皆さん。私は霧島魁。この学校の代表教諭。まぁ、校長先生みたいなものです」
霧島雷人の父親であり、伝説の5人の一人『雷獣』の異名を持つ魔導士である。
教室がざわついている中、彼は話を進める。
「まずは、この学校に入学してくれたこと、感謝しています。ここでは、魔導士としてさらなる高みを目指すために入ってきたことでしょう。私たち教師一同、誠心誠意教えてまいります。勿論、普通の勉強もありますが、メインは魔法です。皆さん。ともに歩んでいきましょう」
スピーチ下手だな、父さん。
雷人は、心の中で呆れていた。
魁は、堅苦しいのが苦手で、初対面でもない限り敬語は使わない。おかげで、敬語を使おうとすると、言葉が変になる。さっきのスピーチも、お世辞にも上手いとは言えない。
続いて、保護者の方へ、と入ったところで、
「雷人のお父さん、喋るの下手だね」
と、天音がド直球に小声で言った。
「なんというか、相変わらずって感じですね」
「あんな見た目だけど、伝説の5人なんだよなぁ」
魁は覚醒した当時、18歳で、伝説の5人の中で最年少だった。生き残っている4人は、伝説の5人の一人『賢者』の魔法の影響で、普通より体の成長が遅くなっている。
魁も暦的には、33歳になるのだが、肉体も見た目も20代前半ほどである。
だが、どの魔導士よりも修羅場をくぐり抜けている。見た目で油断すると痛い目を見るというやつだ。
「これで、入学式を終了とします。生徒の皆さんは残ってください。申し訳ないですが、保護者の方は、席を外してもらえると助かります。魔導士の彼らと話がしたいのです。保護者説明の会場まで、うちの教師が案内します」
それを聞いて、保護者は全員教室を出た。
「…さて、魔導士である君たちだけに話すことがある」
これまでとは打って変わって、フランクな話し方になった。
「先生、魔導士である私たちにのみ話すこととは?」
一人の女生徒が尋ねる。
「そうだな、これを知るのに、25年前のことについても、おさらいしとかなきゃな」
そうゆうと、魁は語る。25年前の戦いを。
1995年、この星に地球外生命体がやってきた。
魔法のような力を使う種族『魔族』と呼ばれ、地球を支配しようとした。
その時、俺ら5人の覚醒者が現れ、魔族を撃退した。
ってのが、皆が習う大戦の内容だ。だが、それより詳しい内容を知る必要がある。
俺たち5人はそれぞれ『雷獣』『氷牙』『鷹目』『陽炎』『賢者』と呼ばれていた。
覚醒した当初、俺たち五人で魔族一人に勝つのがやっとだった。それでは、魔族に勝てないと判断した俺たちは、賢者の魔法を使った。
『潜在能力開放』。俺たちの力を限界まで引き上げる魔法だ。そのおかげで、俺達は魔族を圧倒して、奴らを退けることに成功した。
だが、その影響で、賢者は命を落としてしまった。俺たちの力不足のせいでな。
「…そんなシラケるな。過ぎたことをいつまでも悔やんではいけない」
そうはいっても、雷人たちを除く全員が、初耳の内容である。驚くのも無理はない。
「だが、ここからが重要だ」
そういうと、魁は語る。
「君たちが魔法を扱えるのは、大戦の余波のせいだ。魔法の源になる素粒子『魔素』が地球に満たされた、つまり俺たちのせいだ」
皆黙り込んでいる。
「それじゃあ、先生はその罪滅ぼしで僕達の面倒を?」
男子生徒の一人が尋ねる。
「地球を魔素が覆ったことで、覚醒者が現れ始めて、彼らの魔力コントロールの術を教える立場に俺らがなったというわけだ。学校はその延長さ」
魁は正直に話している。
その素直さが、数々の魔導士を救ってきたのであろう。
「さて、何か質問は?」
一人の女生徒は手を挙げる。
「そういえば、魔素って何ですが?」
そうか、義務教育では習わないのか。
雷人たちは、修行してきたこともあり、ある程度の知識はあるので、気づかなかった。
「魔素というのは、魔力の素になる素粒子だ。宇宙のほとんどを構成しているダークマターの一種と考えられているが、詳しいことはわかっていない。わかっているのは、俺らの知っている科学の常識が通用しないことだ」
現にブラックホールや重力波は、計算上の存在だったが、どちらも観測されている。
今までの科学が覆ることは、決して珍しいことではない。
「その魔素をコントロールし、魔法を扱う遺伝子を持っているのが、覚醒者である俺たちだ」
皆聞き入ってるなぁ
と、雷人たちは他人事である。
ここで月夜が、確信な質問をぶつける。
「…先生、さっき『退けた』と言いましたが、それはどういった意味でしょうか?」
…なるほど、そうゆうことか。
雷人も月夜が言いたいことは理解した。
天音は、分かっていない様子だ。
「察しがいいな。文字通り『退けた』だけだ。残党がいつ戻ってくるかわからない。つまり、俺ら含む君達は、この国の戦力として数えられる運命になる。その時が来れば、な」
学校からの帰り道。どことなく暗い空気が漂っている。
自分たちは兵器のような扱いになる運命…
と、なることはない3人である。
「魔族ってどのくらい強いのかな!?本気で戦えるかな!?」
「さすが天音、戦闘狂だな」
雷人がほぼ二つ返事に答える。
「私たちなら、魔族ごとき、よね」
珍しく月夜も興奮しているようだ。
二人ともちょっと変わった魔法を使うので、所謂試したくて仕方がない、というやつである。
「とりあえず、明日魔法使えるだろ?久々に戦えるんだ、絶対負けないからな」
雷人は二人に宣言する。
「雷人こそ、私の速さに勝てるのかな?」
天音は余裕の表情でそれに答える。
「勿論よ。二人とも逃がさないんだから」
月夜もまた、余裕の表情だ。
明日は、ちょっとしたレクレーションだ。
次回、新キャラを予定しています。
天音や月夜の魔法も出ますので、お楽しみに(*´ω`*)
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