姫と無愛想と初防具と
転移した場所は暗い地下のような場所で、大きなクリスタルのある大聖堂にも似た綺麗な場所だった。
「ここは…天の大聖堂。古より言い伝えのある場所。」
そう言うのは出雲だ。
「そろそろ行きますよ。時間は有限です。さぁさぁ」
さっと出口へ向かわせるシャル。
「あぁ、いくか雫。」
さっと雫の方を向くと出雲と一緒に出口の方へ居た。
「しょうにぃ~早くしないと置いてくよ~」
もう既に扉に手をかけている。
「おう。そうだな、直ぐ行く。」
そそくさとそこからでると大きな商店街だった。然し、雰囲気は全くをもって違うかった。まず、人の多さが違う。
「うーん。アルゲイラスの時から思ってたけどさ女性が居ないね?」
はい。と、シャルが繋げる
「この国、いえ、大陸全体でのことなのですが、女性は差別を受けているのです。女性は子供、大人、老人関係なく奴隷にされることが多く、と言うよりかは大概が奴隷にされてしまいます。例え奴隷にされなくても街では差別にされることが多いのです。この大陸は…」
最後、シャルが言い掛けたときだった。ファンファーレと共に大通り皆が道を開けた。そして歓声と共に椅子にのった冠を被った国王と思われる人が来た。
「やあ、皆の者。相変わらずこの国は平穏で……ん?そなたは、もしや、シャルか?!メルナルト・ルナ・シャルか?!」
シャルの方をみて指を指す。そこでみんなの注目がシャルに向く。
「おぉ、シャル!漸く戻ってきてくれたか。今宵は祝福の宴を…」
それを聞いたシャルは俯き、パッと上を向き言い放つ
「私、メルナルト・ルナ・シャルはこの大陸の姫としてはもう二度と戻らない!前にもそう言って出てきたはずです!」
そう言い歩いていってしまった。
「シャル!シャルちょっと待って!」
さっさと歩くシャルを雫が呼び止める。それを聞き、ピタッと止まり振り向いて、
「誠に勝手なことをしてしまい、勇者様達にご迷惑をお掛けしてしまいすみません。」 と、俯きながらシャルは言う。然し、雫は気にするどころか違うことに目を着けていたようで、
「シャルってお姫様だったの?!はぁ~。だからか~こんなにも素敵な人だもんね?礼儀も凄いしさ。」
ぽろ、ぽろ、と、シャルの目から涙が零れる。
「ありがとうございます。こんな私をそこまで良く言ってくださり。」
そして、身の上の話をしてくれた。
「私は、この大陸の王の三人目の末の娘でした。姫、と言っても、私がするのは、従者と同じ、いえ、それ以下でした。扱いも酷く、毎日泣いていました。そんな中、私は、決意しました。この国からでると。それが二年前の三月前でした。王には「もう、この王国の姫としては戻りません。今までお世話になりました。」と、言い、この王国を出ていろんな所を転々としました。」
そんなことがあったのか…シャルは俺らの比じゃないくらい辛かったんだろうな。
「まぁ、今は勇者さん達のお陰で凄く幸せであることは間違いないことですので、お気になさることはありません。」
と、言うシャル。然し、彼女の目は悲しみの色をしていた。すると、
「はぁ、こんなに辛気くさい話してて疲れました。じゃあ勇者さん…あっ名前を教えてもらっても良いですか?」
パッ、とさっきまでの悲しそうな色は無くなりまるで何も無かったかのように笑顔になった。
「あぁ、俺は翔、で、こっちが雫だ。」
「はい!ありがとうございます。翔さま。雫さま。では、この国一有名な鍛冶屋シュライさま…ではなく、昔、私がお世話になったカムイさんのところに行こうと思います。確か、この辺りに居たハズ…あっ、ありましたありました!」
と、指を指すのは石の壁だった。
「ここの壁が…えいっ」
シャルが壁を押す。すると、カチッ、と言う音と共に石の壁が横に動き道が開けた。暗い廊下をシャルに付いて行くと、橙色の照明で照らされた工場があった。
「あぁん?お、おめぇさんはルナじゃねぇか。久しぶりだな?おう、今日はどうした?」 と、奥から、人が出てきた。
「お久し振りです。カムイさん。こちら、勇者の翔さまと雫さまです。翔さま、雫さま、こちらが[ドワーフ]のカムイさんです。カムイさん。今日はこの御方達に装備をお願いします。」
と、互いの紹介をし、ドワーフのカムイに用件を伝えた。
「そうか。あんたらの装備か。おう。何持ってっか見せてみろ。」
と、きくカムイに雫はバックの中身を大体出す。内容としては、
スライムの瓶×290個
スライムから出た青い球体×86個
ラムヒカスの牙×19個
ラムヒカスの爪×12個
ラムヒカスの鬣×24個
ラムヒカスから出た紅い球体×10個だ。
これをみてカムイは目を見開き、
「こりゃ魂消た。こんだけの素材集めんのに数ヵ月、いや、一年はかかるぞ。」
それを聞き、首を傾げ、
「そーなの?これ、大体二時間位だよ~?」
「はぁ、そうか…よし。んじゃこれ、全部使って良いな?」
と、聞く、雫はすぐに
「うん!じゃんじゃん使って。でも、動きやすい装備をお願いしまーす」
と言う風に頼む雫だが、
「いや、少しスライムの球を少しだけ残しておいてくれ」
と、頼んだ。勿論売却用だ。
「おう!じゃあそこでお茶でも飲ん出てくれ。」
と、お茶をだし、工場の 奥へと行った。すると、奥にいってから一分足らずで出てきた。手には、金槌が握られていた。
「おう。出来たぜ。奥に来いよ。」
そう言い奥に手招きする。奥には高炉や、金床等が置いてありその横の机に装備がおいてあった。
「こいつは昂灼馬の核をベースにスライムの核で形作った指輪と胸部装備だ。火炎耐性は勿論核で作ってあるが故に耐久にも優れている。」
と、二セット、見た目はそこまで厚くはない皮で出来ているようだか、柔軟性こそあるものの、強度は鉄以上だった。色は片方には明るい赤を基本に蔦のように黒く塗装がされている。もう片方は蒼色だ。
「それと、こいつだ。魔力強化、身体能力上昇の皮手袋こいつには俺のおまけで海蛇龍
の瞳をつけてある。こいつは嬢ちゃん用だ。」
「お、おぉぉ!凄い!体が軽い!それに集中しなくても魔法がぶっぱなせそうなくらい力が溢れてくる!」
と、おおはしゃぎだった。すると、カムイは次に、
「お前さんはこいつだ。」
と、靴と頭巻布を渡した
「こいつは昂灼馬の鬣を使った靴でな状態異常無効化を全身に回すようにした物だ。それと、頭巻布は呪詛無効化出来る奴だ。あと、こいつもお前さんに」
と、渡してきたのは綺麗な鉱石で出来た剣だった。
「こいつはお前さん達の持ってきた爪、牙、そしてこの世界一固いロナー石をふんだんに使った剣だ。お前さんに使いやすいように軽めだ。」
と、言う通りに確かに軽くて振りやすい、しかし、軽い剣の方が使い易いと分かったのだろう。
「なんで分かったんだって顔してんな。ただの職人勘だ。」
それぞれを渡すとそそくさと前の部屋へ戻り
「お代は要らねぇから、とっとと出てけ。」
と、追い出されてしまった。
「カムイさんは昔から不器用なんです。でも、とても心が温かくて優しい人です。さぁ迷宮にでも行きますか!」
と、いつものこと、と言う風に流し迷宮にいくこととなった。
「しかし、まぁ、本当にこの防具使い易いな。動きもつける前より滑らかになるし、装着前とおなじかそれよりは軽いくらいだし。」
さっきもらった頭巻布と靴、赤の胸部装着と、指輪を装着した。雫も、同様に革手袋、蒼の胸部装備、指輪をつけた。
「うーん。でも、本当に強いのかな?…そうだ。しょうにぃ、固有能力を解除して試してみてよ。やり方知らないけど、」
そういえば淫魔の戦いでそんなことをいっていたと、思い出した。
「それなら簡単だよ?」
と、後ろから現れたのは出雲だった。
「あっ!置いてっちゃって忘れてた。ごめん!」
と、謝る雫だったが、出雲は、
「いいよ。私は、わざと、追いかけなかったんだし、それにちょうどいい道具も買えたし、」
と、手元に出したのは菱形の青い石だった。
「これは固有能力不発動石、これは、その名の通り、自らの固有能力を無効化する石。ついでに全体的なステータスがさがる。大体百分の一くらいに。前は修行とかに使われてたけど今はそんな使い方する人もいなくて、さっぱりでさ」
出雲が言うには、俺たちからステータスを百分の一くらいにすれば普通のハンターと、同じくらいになるらしい。から頼んだ。
「じゃあいくよ?」
と、出雲は手に力を込め、俺たちの方へ向け、
『汝、精霊の加護の元に我が命令を聞き入れよ。終焉により受けし個の力、今、封印せん。』
と、出雲が言うのと同時に体から光の粒が溢れ出す。それが消えると同時に体が少しだけ重くなったような気がした。
「はい。終わり。じゃあこの力は私が預かっておくからね。よし。じゃあ行こうか。」 と、出雲に着いていった。
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