昂灼馬討伐と初めての食事
「此処がの住み処か…」
驚きつつも辺りを見回すしょうにぃ、辺りは一面の草原だ。そこには今まで倒したスライムやその他に、鳥のようなモンスター、大きな木のモンスターまで居るが数はそこまで多く無く、とても静かな草原だった。
「ねぇねぇいずっちそろそろ魔法教えてくれる?」
私は、出雲の方を見ながら言った。出雲は手でも大きく表しながら、
「ええっとね。まずは、体のエネルギーを魔力変換するんだけどね。心臓から手に送ることをイメージするとやり易いんだけど、血管を伝って血が流れるイメージをしてみて?」
言われた通りにイメージすると、心臓の鼓動が速まり、心臓と手が熱くなる。
「そのまま力を入れると魔力が放出される。でもそのままだと意味がない。その時に水や炎等をイメージすると、できなくもないけど…」
そのまま炎をイメージする、すると、掌から大きな木を包める程の業火が出た。
「けど?」
さっき出雲が言い掛けていたのが聞こえたので反応した。
「…術式を唱えないと大きなのは使えないって言おうとしたけど…何でできるの?」
説明は良いとして質問は何故するんだ?
「え?出来たら駄目なの?」
その後暫く考えた出雲は
「うん。普通はね。まず詠唱魔法と無詠唱の違いなんだけど、まず魔法は詠唱することによって魔素が集中する。魔素って言うのは魔法の流れのもとね。んで、その魔素が集中することによって魔法が形作られる。詠唱に魔素への命令が含まれる。だから、流れも決まって使える。一方で、無詠唱だと詠唱が無いことによって命令ができず流れが纏まらずに形に成りにくい。それに使うとしてもかなりの集中がひつようだから精神力が無茶苦茶必要で、使うとしても、魔法学園の試験に才能を測るために使うくらいだからさ。つまりはこんなデカい魔法を無詠唱でするには鬼才か、エルフかしかないしってこと。ミカエル様でも、勝てるのかな?」
と、説明をしてくれた。その後、雷や水も試すと、以外にもスッ、とできた。
「昂灼馬は水に弱かった筈だから有効打が出来たね。」
そのときだった。馬の嘶く様な大きな声がした。それを聞いた出雲が
「昂灼馬だ!こっち!」
と、大きな森林を指差した。奥へ行くと赤みのかかった艶のある黒に馬のような鬣と丸い顔の形をし、頭には大きな角を携えている馬ともなにとも言い難い隣の大木程の大きな四足歩行の生き物が居た。
「あれが、昂灼馬、余り強くはないけど奴の焰息吹は上級ハンターでも苦戦するよ。」
そう言い放った出雲としょうにぃは少し離れた所に身を屈めた。私は、支給された剣を使い、(伝説の剣(仮)はしょうにぃに禁止された)片手には魔力を貯めた。
「行くぞ!昂灼馬!はあぁぁ!」
構えたと同時に昂灼馬へ、斬りかかる。狙いは弱点の角だ。その角は案外脆く、以外と簡単に切り落とせた。すると、昂灼馬は大きく鳴いた。
それと同時に膝を着く、そこへコンマ零秒で左手に貯めた魔力を水に変換しぶっぱなす。威力は剣で切りつけている時も貯めていた為、かなり強い。それを受け、昂灼馬は天を仰ぎ、倒れ、そしてスライム同様、白くなった後、光の欠片となり、消えた。自分の手持ちには赤みのかかった艶のある黒い毛皮と赤いより赤い昂灼馬の結晶的な何かがあった。
「凄いね。普通じゃあこんなにも速くないし、それに、攻撃を一切合切させないなんてね。私でも出来ないかも。」
と、褒めるので、少し照れくさい、でも、嬉しいものは嬉しい。
「それに、こいつを倒すと何故か経験値が、多いから結構レベルいくんじゃない?」
その言葉を聞いて一つ引っ掛かった。
「経験値とレベルの概念があるの?」
それを聞くと驚いて、
「え?!知らなかったの?経験値はある一定数貯まると次のレベルになるけど、そのレベルは限度がないんだよ。」
それを聞いて、興奮した。
「ねぇねぇ?私のレベル、分かる?」
そう聞くと、うん、まぁ、と、答えるので
「じゃあしらべて!」
と、お願いした、すると、出雲は服からある紙を取り出した。それを私の体に当てた。
「こ、これはどういうこと、なの?」
驚愕したような顔でこちらへ聞く。
「どうしたの?」
そう聞くと、焦ったように説明した。
「レベルが物凄く低い。可笑しい。このレベルでは大型は倒せない。と言うか倒した後にこんなにも低いはずがない。」
どういうことだろう。そこまで強い敵ではないからこの程度かな?と、思っていたが、相手よりも自分が弱かったと言うこと。さらにレベルも殆ど上がっていないと言うことだろう。
「そ、そんな奴だったんだ。知らなかった。台座にあった。剣のお陰かなとか、思ってたけど、」
それを聞いてまた、出雲は驚いていた今度は、 はぁ?!と言う声も混ざっていた。
「え?まさかとは思うけど、アラスマルソードを引き抜いたの?はぁぁぁぁぁ、」
何故か反応が大袈裟な気がする
「そんなに凄いものなの?」
それを聞くと、出雲は、目を見開いて言った。
「凄いどころじゃないよ。大変だよ。世界問題だよ。そのアラスマルソードは全てのモンスターの攻撃を耐え絶対的な力で相手を叩きのめす。強すぎるが故に魔王によって勇者しか抜けない台座にに差し込み、その台座にワープの呪いをかけ、色々な場所を転々とするようになっているんだよ?!それを此所に来た時に見つけて、更にそれを引き抜く、もう、大事件だよ。所でその剣は今は何処に?」
そう、出雲が聞くと、
「この鞄の中にあるよ。」
と、しょうにぃは、私のバックを指差した。
出雲がそのなかを探すと見つけた。
「あ、あぁ、これが本物。初めて見た。」
語彙力が無くなっていたのが分かりやすいほどだ。そんなに凄いものだとは。
「…ハッ!これは後でじっくり見るとして早く宿に戻ろうよ。」
と、出雲が背を押してまた、ゲートを潜った。
視界が一瞬だけ暗くなった後に直ぐ木の暖かい匂いがする。受付のおねーさんが
「おかえりなさい。お疲れ様でした。報酬がこちらです。」
と、ドサッ、と、重い音のする布袋を私たちの手元へ寄越した。そのとき、
ギュルルルルル
と、情けない音がお腹からした。しょうにぃは、ははは、と、笑いながら
「そうだなお腹空いたよな。よし、じゃあなにか食うか。」
それを聞いて、あっ、と、受付のおねーさんが
「お食事なら良いお店を知っていますよ。向かえにあるデルタリンクって言うお店です。あそこの翼龍鳥の肉は絶品でタレも芳ばしくてとても美味しいですよ。今日の仕事は切り上げますので、一緒にいきましょう。」
と、仕事着をそそくさと綺麗にたたみ、直ぐに着替えた。話を聞く限りはとても美味しそうなお店なので行ってみる価値はありそうだ。
「じゃあ行きましょう!」
連れられそのお店に行くと少し黒めの木材で建てられた民家程の大きさの建物だった。
「さぁさぁ、入って!」
中に入ると肉の言い香りがする居酒屋のような雰囲気のお店だった。
「ふぇぇぇぇぇ。人が多いなぁ」
それを聞くとしょうにぃも同調し
「確かに外からだと分からないくらいだけど。かなりいるな」
店全体は結構奥行きがあるものの、席の八割ほども埋まっていた。手前の席が空いていたのでしょうにぃの後を付いていき座った。
「すみませーん。いつもの三つとマーレサリ下さい。」
直ぐ近くに居た定員に言うと、はい!と、厨房へ走っていった。ものの五分で料理は来た。おねーさんが言っていた[いつもの]とは、所謂焼き鳥だった。肉は少し小さいものの、タレが光に反射し黄金色に光る。少し焦げの有り、炭火の言い香りがほんのり薫る。
「いただきます」
しょうにぃと、同時に言う。
一口目。先の肉を少し齧る。すると、 物凄い量の肉汁が溢れだす。肉は少し弾力があり、噛めば噛むほど味が出るそんな肉だけでも美味しいが、タレがまた絶品で少し辛味があり、とてもコクが深く、この肉との相性が良い、いつの間にか二口目、三口目、と、手が進む。そして、もう一つ頼んでいた、マーレサリが来た、その正体は日本人なら誰もが知っているであろう穀物、米だしかし、断然違うものがひとつあったそれは、見事なまでの輝きであることだ。米、一粒一粒が繊細で、まるでそれだけで一つの芸術のようだ。米と一緒に運ばれてきた割箸で一口、馬鹿にしていた。口に入れた瞬間、爽やかな香りと共に少しの甘味が広がる。どちらかと言えばフルーツに似ている。そして粒を噛むと、香りと、味がより、鮮明になるのがはっきりとわかった。更にさっきの肉と合わせてみると、さっぱりとした和風のような感じになりとても旨い、と、考えていたらいつの間にか食べ終わっていた。
「そんなに旨かったか?雫」
満身創痍の表情であろう私の顔を見るにしょうにぃも食べ終わっているようだった。
「はぁ、美味しかったぁ。」
そう、横ではいつ頼んだか分からないが、皿が山積みになっていた。しょうにぃも気付いなかったようで、
「い、いつの間に頼んだんですか?!」
最後の一口を口に運び、食べ終わると、
「まあまあ、良いじゃないですか。あのぉ、もし良ければ旅に着いていっても良いですか?」
と、聞くシャル
「勿論だ。戦闘も有利になるしな。」
と、しょうにぃはいった。
「あ、ありがとうございます。これから宜しくお願いします。あ、自己紹介がまだでしたね」
しょうにぃも私も、ハッ、と、してしまった。
「改めて、私は、メルナルト・ルナ・シャルと申します。宜しく御願い致します」
余りにも、礼儀が正しいので、つい、頭を下げてしまった。
「…いつまで空気でいれば良いの?」
と、確かに今まで空気だった出雲だが、地味に料理を食べていた。
「まぁ、喋らせて貰うけど、ここの次、いく場所さ、ロテルヘン王国にいくよ。そこならこの大陸の王が居るから。強装備の素材とかの調達も楽だし、腕の立つ良い鍛治屋があるし、色々便利だから良いと思うよ」
それを聞いたシャルは
「え!?あそこに行くのかぁ…」
と、シャルはなぜか嫌そうにしていた。それを見たしょうにぃは、
「どうしたんだ?何かあるのか?」
心配してかしょうにぃが聞く、シャルは少し苦笑いで
「なんでもないです。大丈夫です。…よし!行きましょうか。御代も払いましたし」
と、何かを決心したように言って席を立つ、
「なら、良いけど。って言うか、いつの間に支払ったの?」
そう言いしょうにぃをガン無視して
「いっぱい食べたし…そうだ!この前見つけた本にあった転移魔法試してみよっと」
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昨日の真夜中のことだ。何故か突然起きてしまったのだ。
「ふぁぁぁ。起きちゃったし、散歩いこっかな」
しょうにぃにバレないように、こっそりと、ドアから抜け出した。
「うーん。夜はこんなに静かなのか~。」
虫の声一つ聞こえない静かな街道、街灯の明かりも仄かなものであり、細やかなもので、今にも消え入りそうな位だ、そんな街道を宛もなく歩いていると、一つ、見覚えのある店を見つけた。それは、昔、しょうにぃと、言ったことのある古本屋に酷似しているものであった。中もその本屋のままであったが、なぜそこにあるかまでは考えなかった。本を見ていると、一冊だけ如何にも古めかしい本があった。それを手に取り見ていると、レジに立つおじさんに、
「それ、なかなか売れないからお嬢ちゃんにあげるよ。」
そう言ってニコッ、と、笑った。
その本をペラペラと捲って中を見ると、魔法の方法、種類が乗っていた。
その後、またこっそりベッドに戻っていった。
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