第5話「朝」
僕は学校へ行く。玲奈と会うのが楽しみだ。
玲奈はきっといつもみたいに綺麗な恰好をしているに違いない。
僕は制服に袖を通した。
階段を下りていく。
「おはよー」
奏が僕にそう言う。
「おはよう、奏」
僕は返事をした。
妹はいつも通りに部屋で朝食を食べているだけだ。
僕は少しうとうとしてソファに横になった。
頭の中がなんだかぼんやりする。
吸血鬼のことも魔法使いのことも忘れたい。
ただ真面目に普通に生きてたい。
玲奈と結婚したい。
無理な話だった。
なんとなくそんな気がした。
僕も玲奈も長くは生きれないだろうなと思った。
「どうしたの? お兄ちゃん」
奏が僕にそう言う。
「なんでもないよ」
僕はそう言った。
「どうしてソファに横になってるの?」
「だって疲れたから」
「それならしょうがないね」
奏はそう言って、黙々と焼き鮭を口に運んだ。
とてもおいしそうな匂いがする。
僕も食べてみたくなる。
ソファから起き上がった。
妹は朝食を食べ終えてた。
「じゃあ行ってくるね」
奏は僕より一足早く家を出ていった。
僕は朦朧とした意識のまま洗面台に行った。
そしてただぼんやりと自分の境涯について考えた。
このまま生きていて大丈夫なのか。
それだけが不安だ。