第2話「魔法の青い炎と吸血鬼のナイフ」
僕は学校へ向かう。学校は公立高校だ。
高校の同じクラスに恋人の玲奈がいた。
僕は駅まで歩いていく。
駅までの道は十分くらいだ。
その間、僕はふいに玲奈のことをまた思い出した。
僕は駅までの道の途中で偶然吸血鬼に出会う。
吸血鬼の姿は魔法使いにしか見えない。
やつらは黒い服に覆われていて青白い目と口からはみ出した鋭利な牙が特徴だったが、やはり人間と大部分は同じ体をしている。
世界は急に真っ暗になった。突如異世界に現実世界が突入する。
吸血鬼はなんでもないように僕のことを見ていた。
西洋の映画にでも出てくるような顔の整った吸血鬼だった。
「やあ」
吸血鬼は魔法使いの僕に話しかけてきた。
「なんだ?」と僕は答える。
「お前のこと殺しにきたんだ」
吸血鬼は笑っていた。
「僕もお前のこと殺すけど」
僕はそう言った。
吸血鬼は持っていた鋭利な小さなナイフをとてつもない速度で僕に指ではじいて投げた。
瞬間、右の眼が砕けて血がほとばしる。
「僕のこと舐めるなよ?」
片目を失った僕はそう言って、ポケットから鉛筆みたいな杖を取り出す。
「死ね」
杖から僕は青い炎を放つ。
吸血鬼の体が少しずつ燃え始める。
「こんなの効かない」
吸血鬼は笑っていた。
いつだって自分の命にやつらは執着しないようだ。
徐々に吸血鬼の体が僕の炎で燃えていく。
「ぐああああああ」
吸血鬼は炎が全身を覆い尽くすと叫び声をあげた。
その姿はやはり同じ姿の人間が燃えていくようでグロテスクだ。
吸血鬼は少年の僕のことを舐めすぎていたようだ。
僕の青い炎はそれなりに破壊力を持つことをやつらは知らない。
僕は朝の路上の異世界で吸血鬼の体が燃えていくのを眺めていた。
周りの人たちと僕は同じ世界の中にいるが、ここはパラレルワールドのような異世界で、奇妙に現実とリンクしているが、周りの人間には僕らの姿は見えていない。
彼らは何事もなかったかのように僕らの事の顛末には気づかず同じ空間を通り過ぎていくだけだ。
僕は砕けた右目を魔法で治した。
なんだか変な感触がした。右目はすぐに再生する。
痛みにも慣れてしまっていた。
吸血鬼は半ば自虐的に捨て台詞を吐いて死んだ。
「なんで俺は生まれてきたんだろう? いつか俺の仲間がお前らを殺しに行くからな」
吸血鬼はそう言って灰になって燃えた。
最後には煙になって何もなくなった。
我ながら自分の能力に少しだけ怖くなる。
やろうと思えば人間を同じように殺すことだってできた。
吸血鬼が消えると世界が元通りの明るい世界に戻る。
僕はいつも通り街を歩いて駅まで向かう。
駅前には多くの人がいるのが見えた。今日は雲一つない快晴だった。