1話
絵とは不思議なものだ。見る物によってはその絵は違う世界に写し出されるからだ。だから俺は絵には魂が込められてると思ってる。どんな綺麗な絵だろうと、どんな駄作な絵だろうと、見る物によってはそれは価値の違うものに見えるからだ。そして絵とは見る人々の感情を左右する。例えそれが、どんなに狂喜に満ちた人にも。
俺は夏の休みを利用して、とある県のある館の観光地へと来ている。何か中世のヨーロッパに出てきそうなごく普通の館の観光地だ。だが、決して見るだけに来たわけではない。俺はその館に古くから伝わると言われる伝説を見にきたわけだ。
俺は今、館の応接間に足を出向いている。所々の壁には館の妃であろう額縁が掛けられてる。
「随分と幼い妃だったんだな。だけど背中の所から見える翼は一体何なんだ?」
不思議と威圧感を感じる絵に思わず目を反らしてしまった。俺は絵描きだ、その絵から何が伝わるか大体は分かる。
「ゴーン!ゴーン!」
館の鐘が応接間に響く。それを聞くと何人かいた人々は外へと向かい俺も外へと向かい始めた。
「おや?」
1人の女の子が出口じゃない方の角を走って曲がって行った。俺も呼び止めようと女の子の走って行った方へ向かう。
凄い速さだったのだろう、女の子の姿はその通路からじゃ確認出来なかった。俺はそのまま通路の曲がり角へと向かい走り出した。
「きゃあ!?」
「うわぁ!?」
角を曲がって直ぐの所で先ほどとは違う女の子とぶつかってしまった。俺と女の子は互いに床に尻餅をついてしまった。そして俺はその子の方を向いた。
「なっ何をするのよ~」
俺はその子を見た時驚いた、それはその館に額縁に飾られた妃そのものだったからだ。俺は有り得ないと思い目を擦りもう一度見るが、やはり額縁の妃だ。
「ここが紅魔の館と知っての不法侵入かしら?だったら貴方は運が悪いわね。待ってなさい、今貴方をズタズタに引き裂いてやるわ!!」
ガシッと右腕を掴まれた。俺はその時全身に恐怖が走った。それはとても少女とは思えない力が腕にかかっているからだ。
「まっ!?待ってくれ。俺はただ観光で来てただけのただの絵描きだ。頼むから腕をへし折るのだけは勘弁してくれ!!」
「そう…なら全身を一気に吹き飛ばされたいようね。丁度良いわ、今なら私が満足いく弾幕を放てそうだわ」
「なっ!?」
何か分からないが、その少女の左手からは凄まじい程の閃光が集結してる。ただ分かる事はそれを喰らってタダではすまないと言う事だけは理解出来た。
「あ…あ…や…止めてくれ」
「ありがたく思いなさい。妖怪をも消し飛ばす威力の弾幕を1人の人間にくれてやるのだからな」
これは完全に終わった。とっ思った時、その少女の後ろから1人の女の子が少女の肩を叩く。
「お姉様何楽しそうな事してるの?私が代わりにやりたいよ」
俺はその女の子を見てそれが先程の女の子だと言う事が直ぐに分かった。少女は左手の閃光を消して俺の胸ぐらを掴む手を離し立ち上がり、その女の子に親指を向け語り出した。
「貴方の好きな様にしちゃいなさい。ただし、ここではやっては駄目よ。ちゃんと部屋に連れて行ってから殺りなさい」
「分かったよ。お姉様」
俺はその子に襟を持たれ引きずられて行く。その子も嘘の様な力で俺をザザザッと引っ張って行く。
そして地下の階段らしき所へ俺はそのまま引っ張られ、そのままある部屋へと入れられた。
「さて、どうやってあそんであげようかしら?」
俺は今度こそ完全に死を覚悟した。だけど俺は何を思ったのか近くにある絵日記とペンが手に当たり俺はその子に語りかけた。
「その前に何か1枚絵を描かせてくれ。時間は取らせない、頼む」
「別にその位なら構わないよ」
俺はその絵日記とペンを持って少女をじっと見つめた。そして俺は手を動かし、あっと言うまに1枚の絵を完成させた。
「どうぞ」
俺はその絵をその子に渡した。少女は最初はいい加減な感じで見ていたが絵を見返すと少女の表情は驚きのものへと変わっていった。
「こっこれは私の誕生日の風景」
「はい、私が貴方を見た時に何か楽しいのが見えたんで描いたんです。まさか誕生日の絵だったとは」
「見る??」
「はぃ、どう言う訳か私は人物を見るとその人の過去を見る事が出来るみたいなんです」
その子は絵を大切そうに持って俺の方へ来て新たな絵日記を渡したそしてその子は俺が初めてみる笑顔をみせてくれた。
「もっと絵を描いて」
そして俺も微笑み返し新たに絵を描き始めた。