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カンナガラ  作者: 醒
冬空に飛ぶ
8/11

冬空に飛ぶ:漆

     漆.


 水秦神社境内にある宝物庫は、神社の規模に比してかなり大きい。

 二十畳ほどの空間に、細い通路を残してぎっしりと棚が詰め込まれている。

 覗き込むと未来が映るという盥やら、朝と夜で女性のポーズが変わる浮世絵やら、どこぞから預かったいわくつきの品々も収められているが、棚の容量の半分以上は書物である。

 史料的価値が高いとのことで、博物館や図書館から寄贈の打診を受けることもあるが、曲直瀬家は断り続けている。燐太郎もそれにならうつもりだ。

 それらの書物には、共通点がある。

 鬼に天狗に河童に山姥、一本蹈鞴(いっぽんだたら)大太郎法師(だいだらぼっち)、魍魎や怨霊――さまざまな姿と名を持つ、異形のものども。

 書籍、巻物、絵画と体裁はさまざまだが、それらの書物は、一般的に『妖怪』と呼ばれるものについて語り、綴り、描いたものなのだ。

 短い階段を昇り、燐太郎は宝物庫の鍵を開けた。

 宝物庫の内部は、陽が落ちた境内に負けず劣らず冷えている。自宅よりよほど頻繁に掃除しているのだが、収められた物品が醸し出してしまうものか、古い埃の匂いが鼻につく。天井のLED灯だけが、やけにしらじらとしている。

 靴下のまま踏み込む。

 りん、と鈴のような音が聴こえた。

(おっと、いかんいかん)

 燐太郎は音のしたほうへ目を向けかけ、すぐに逸らす。

 隅に飛ぶ蛍のような光は視なかったことにする。ここでああいうものを気にしていてはきりがない。

(悪いもんじゃあないなら、それで構わんさ)

 板張りの床をぺたぺた踏んで奥の書棚へ向かった。

「さて、と」

 水秦神社宮司の役目のひとつとして叩き込まれたので、書物の収められている場所はだいたい把握している。燐太郎は書棚に視線を走らせ、やがて一冊の和綴じの本を抜き出した。

 ぱらぱらとめくる。

 一ページに一点ずつ墨絵が描かれ、解説らしき短い文章が添えられている。思わず引き込まれるような力強い筆致だ。名のある画家の作かもしれない。

 だがその題材は、尾が蛇になった獅子だったり、烏賊か蛸のような胴体に女の頭がついていたりと、怪物としかいいようのない不気味なものばかりである。造形そのものは現代のホラー映画などに比べれば単純なのだが、なまじ活き活きとして魅力的な絵だけに、真に迫る恐ろしさがある。

 燐太郎はしばらくめくり続け、あるページで手を止めた。

「黒い脚……複眼……繭……こいつ、かね」

 前後のページを確認してから本を小脇に抱え直し、白い息を吐きながら次の棚へ向かう。

 準備すべきことはまだある。夜はいつでも短いのだ。


     ◆


 深夜になっても、白山通りの往来は途切れない。この時間帯に東京の幹線道路を通る車といえば大半がタクシー、そして都市間輸送のトラックだ。決して営みを停止しない大都市の需要は、人に移動を続ける宿命を負わせる。

 しかし通りから一本入った住宅街は、対照的な静けさだった。マンション群の四角いシルエットが立ち並ぶさまは、ぼんやり光る冬の曇り空を背景にして、終末後の世界めいている。

 ちかちかと点滅する街燈の下。

 マンションの前に、くたびれたハイエースワゴンが停まる。

 運転席から下りた燐太郎は、門の前に立つ人影に気づいた。

「本当に来たのかね」

「来たわよ。気になるもの」

 高い位置でくくったポニーテールにダッフルコート。コートは昼間と同じだが、口元までマフラーで覆って両手をポケットに突っ込んだ杏子は、やたらともこもこしていた。

「同行はお勧めせんと言ったのに、物好きだな」

 杏子は頬を膨らませたようだが、マフラーの下ではよくわからない。

「燐太郎ひとりに危ないことさせて、家で寝てるわけにはいかないでしょ。身体、もう大丈夫なの?」

「昼間のありゃあ当てられただけだ。もう何ともない」

 切れ長の目がきろりと燐太郎を睨む。

「それならいいけどさ……その格好で運転してきたわけ?」

「袴で運転くらいできにゃ神職は務まらんぞ」

「そういう問題じゃなくてさ」

 杏子は燐太郎の姿を、頭からつま先まで眺めた。

 藍色の狩衣、浅葱色の指貫。足元は浅沓(あさぐつ)

 燐太郎の装いは、儀式に臨むときのものだ。

 深夜のマンション街と平安時代から続く装束の取り合わせは、奇妙を通り越してシュールな風情すらある。

「戦闘服だよ。これでも邪魔すぎるから烏帽子は置いてきたんだ」

 燐太郎は服装になんとも不似合な仕草で肩をすくめ、ワゴンの後部ドアを開けた。

 後部座席には、古びた革の手提げトランクが収まっていた。彼はトランクを引っ張り出し、杏子を振り返る。

「見届けたいってんなら構わん。行こうか」

 この期に及んで断られると思っていたのか。杏子は一瞬だけ意外そうに目を見開いたあと、こくりと頷いた。

 トランクを携えた燐太郎に続き、杏子もマンションの敷地へ踏み込む。

 昼間は管理人に追い出されたが、いまは誰の姿もない。マンション前の公園のタイルを踏む、浅沓とスニーカーの足音だけが響く。

 沈黙に耐えかねたように杏子が口を開いた。

「ねぇ、本当に佳弥ちゃんを目覚めさせられるの?」

「保証はせんがな」

 さすがに素っ気ない気がして、燐太郎は付け加える。

「おそらく佳弥は(スジ)に囚われている。解放するための準備は一応してきた。効いてくれることを願うよ」

「スジって、何なわけ? 昼にも言ってたよね」

「境界線さ。あっち側とこっち側を隔てる場所、あるいは繋ぐ場所だ」

「……全然わかんない」

 隣を歩く杏子の睫毛が街燈を反射していた。彼女の声が不満そうなことに、燐太郎はなぜか安心をおぼえる。

「アンズよ、この世は何でできてると思う?」

 杏子は胡散臭そうな目で燐太郎を見上げた。

「いきなり何よ。禅問答?」

「禅宗は仏教だがね」

「……この世界は炭素と窒素でできてるって、ディスカバリーチャンネルで言ってたわよ」

「素晴らしい回答だ」

 燐太郎は喉の奥で笑った。

 鉄棒の前に至る。低いフェンスを越えた目の前は立木の生垣だ。その先に、例の空き地があるはずだった。

 燐太郎は立ち止まり、杏子が数歩の距離を追いつくのを待つ。

「何なわけ。この世界がどうたらって」

「アンズ」

 真剣な声色で言うと、杏子の顔が緊張をはらむ。

「頼みたいことがある。佳弥を救うために、とても大事なことだ」

「……何よ」

 真面目な表情を崩さず、杏子をまっすぐに見つめ。

「実は、煙草を車に忘れてきた」

「はぁ!?」

 頓狂な声を上げた杏子に、車のキーを軽く放る。

「ちょっと、あたしをパシらせる気? いい度胸じゃない」

「精神集中に必須なんだよ」

「あんたまさかここで吸うつもりなの?」

「ちゃんと携帯灰皿は持ってるぞ。頼む。俺は他の準備があるんだ」

「ほんっと、信じらんない!」

 杏子は全身を使って溜息をつくと、それでも踵を返した。

 街燈の下を駆けていく背に声をかける。

「たぶん、助手席に落ちてる。頼んだぞ」

「ニコチン中毒で死ね!」

 スニーカーの足音が軽やかに遠ざかっていった。

 燐太郎は街燈に背を向け、満足げな笑みを浮かべる。

 フェンスを踏み越えてトランクを草の上に下ろす。手早く留め金を開け、中から銀色の水筒を取り出した。蓋の中央を押してロックを外す。

 それから彼は水筒を持ったまま腕を振り、中身を撒き散らした。

 透明な水が街燈の光を反射し、フェンスの外側、公園と生垣の間の乾いたタイルの上に、黒い滲みをつくる。

「祓い給い、清め給え、守り給い、(さきわ)い給え……」

 独特の抑揚。低い声でつぶやく。

 燐太郎はトランクを持ち上げた。

「アンズよ。この世はね――(ことば)でできてるのさ」

 彼は狩衣の袖を押さえて立木をかきわけ、奥へ向かう。

 今宵の目的地へ。


     ◆


 その場へ踏み込んだとたん、背筋が粟立つような感覚が襲ってきた。

(こりゃあまた、一段と禍々しい)

 木立を抜けた先の、あの空き地。

 公園の街燈もここには届かない。昼でも淀んでみえた空気はいっそう昏く、濁って、凝り、手で触れられそうなくらいだ。

(だがまぁ、これならハズレってこともあるまいて)

 緊張を隠すように唇を舐める。

 他に誰もいないはずなのに、無数の目が自分を見ているような錯覚に陥る。圧迫感に耐えながら再びトランクを漁った。

 二本めの水筒であたりに水を撒く。

 飛び散った水は、焼けた鉄にでも触れたかのように音を立て、水蒸気となって立ち上る。

 しかし、のしかかってくる空気の重さは消えない。

(やっぱりこの程度じゃあ効かんか)

 今度取り出したのは、細長い棒状のものだ。

 長さは三十センチを少し超えたくらい。表面はなめらかな白木で、断面はやや楕円。

 燐太郎はそれを両手で持ち、身体の前に平行に構えた。

 耳の奥にちりちりと、何かが焦げるような音が聴こえはじめていた。足元が泥に変わっていくような感覚がある。

 それらをすべて意識の外へ追いやって、燐太郎は、夜に向かって呼ばわった。

「――掛けまくも(かしこ)伊邪那岐大神(いざなぎのおおかみ)

 朗々と。

筑紫(つくし)日向(ひむか)の橘の小戸(おど)阿波岐原(あわぎはら)に禊ぎ祓え給いしときに、生りませる祓戸(はらえど)の大神たち」

 大気に罅が入る。

 燐太郎が一言紡ぐたびに、空気が変わる。

「諸々の禍事(まがごと)罪穢あらむをば、祓い給え清め給えと」

 夜陰にくろぐろとした木々が、きしるような葉擦れを立てた。

「白すことを聞こし召せと、恐み恐れみて白す」

 白木の棒を持った両手を左右に引く。

 しゃらん、と。

 鈴鳴(すずなり)()を響かせて、棒は半ばから割れた。

 闇中、姿を現したるは白刃。

 白木の鞘を払った短刀が、みずから光を発するがごとくさえざえと輝く。

 否、実際に光っていた。いかなる仕組みによるものか、わずかに湾曲した刃には、円や曲線、三角や四角などの図形を組み合わせた文様がいくつも浮かび上がり、淡くあおじろく発光しているのだ。

(こいつにお出まし願うのも、随分と久しぶりだな)

 燐太郎の手にあるのは、水秦神社の収蔵品のひとつだ。

 短刀、銘を鳴神(なるかみ)

 はるか昔に直刃の長剣として生み出され、長い年月のうちに何度も打ち直されて、今は短刀の姿になったと伝わる。

 変容した空気がぴりぴりと肌を刺す。拒絶か、それとも歓待か。

(どっちでも構わんが)

 燐太郎は左手に残った鞘を放り出した。

「掛けまくも畏き美那波多貴与良大神みなはたきよらのおおかみ、古の盟約(さだめ)に拠りて、幸先の巫覡(かんなぎ)たる曲直瀬燐太郎、恐み恐みて(こいねが)う、不祥(さがな)禍津魂(まがつひ)清明(さや)かに示し給え。いざ事問(ことと)わん――」

 何もないはずの空中を、鳴神で横一文字に切り裂いて。


「――絡新婦(じょろうぐも)!」


 空間が裂けた。

 文字通りに、である。

 鳴神で薙いだ中空に一筋、裂け目ができているのだ。

 裂け目から風が轟々と吹き出し、燐太郎の髪を、袖を、引きちぎらんばかりの勢いで吹きつけてくる。

 昏く見通せない裂け目の奥で何かが蠢いていた。黒くごつごつとした、巨大なものが。

 空間の裂け目が広がる。布か紙のように横に広がり縦に破れて、場を侵食する。

 ぞぶり、と。

 裂け目を押し広げて、奥から何かが這い出してくる。

 それは脚だ。

 燐太郎の腕ほどの太さの脚。黒と黄のまだら模様で、途中で何度も折れ曲がっている。よく見れば表面にびっしりと毛が生え、毛の一本ずつがざわざわと動く。先端は鋭く尖った蹴爪になっていた。

 脚に遅れて、上に乗った身体が姿を現す。

 大きく膨らんだ胴体は黒と黄の毒々しい色合いで、一部が細くくびれ、頭につながっている。

 それは、巨大な蜘蛛であった。

 昼間に気配に圧倒されたときほどではないが、折れた脚の頂点が二メートルほどの高さにあり、尋常な大きさではない。

 しかも、その頭部は。

 皺だらけの顔。人相はよくわからない。しかもよく見れば、目のあるはずの場所にレンズめいた半球がいくつもくっついている。昆虫の複眼のようだ。

 しかし、それはたしかに――人の顔を、していた。

 髪を振り乱した女の頭が、口を開く。

「■■■――」

 その声は人の解するものではなかった。黒板を引っ掻いたときの音にも似た不快な音色が背筋を刺激してくる。

 場は変容していた。一見すれば蜘蛛が出現した以外に変わったところはない。しかし木立の隙間から見える空は赤黒く、都市の夜空は消え失せている。

 燐太郎は、鳴神を振りぬいた姿勢のままつぶやいた。

「見つけたぞ」

 彼の視線は蜘蛛の腹の下に注がれている。

 そこに抱え込まれているのは、繭に似た塊だった。大きさが蜘蛛の胴と同じくらいある。繭の表面は半透明で、たくさんの小さなものが、中でもぞもぞ動いているのが視える。

「■■■■――!」

 それ以上の観察は許されなかった。

 蜘蛛が手前の脚二本を振り上げ、無造作に振り回したからだ。

「うおっと!」

 燐太郎は草の上に転がった。一瞬前まで彼のいた場所を、ナイフほどもある蹴爪が横切っていく。

 転がる瞬間に女の目と視線が合って、胃の底が冷たくなるような感覚をおぼえた。

 異界。深淵。

 人の住む世界とはまったく別の原理で動く存在が、そこにある。

「……こいつぁ、大物だ。こんなの、雫だって相手したことないんじゃあないか」

 せりあがる恐怖を独り言で押しこめる。

 言葉は秩序だ。人は言葉で世界を切り開き、規定し、維持する。

 蜘蛛が再び前脚を振りかぶった。腹が(あらわ)になるのを視界に収め、燐太郎は蜘蛛に向かって走り出す。

 鳴神を構えたまま腹の下へもぐりこみかけて脚に阻まれた。

 蹴爪が袖を裂き、左腕に鋭い痛みが走る。構わず目の前の蜘蛛の脚に斬りつけた。

「■■■■■――!」

 蜘蛛の口が悲鳴を上げた。

 闇雲に振り回される脚をかいくぐり、いったん距離をとる。

「――沖津鏡(おきつかがみ)辺津鏡(へつかがみ)八握剣(やつかのつるぎ)生玉(いくたま)死返玉(まかるがえしのたま)

 鳴神を腰だめに構える。

 いつの間にか燐太郎の瞳は、仄と銀色に光っていた。その目で蜘蛛を睨み据える。女の顔は視ない。視てはいけないから。

足玉(たるたま)道返玉(ちがえしのたま)蛇比礼(おろちのひれ)蜂比礼(はちのひれ)品物之比礼(くさぐさもののひれ)

 蜘蛛が脚を振り上げる。四本の脚がでたらめに持ち上がった。

 地面を蹴る。狙うは腹の下。

一二三四五六七八九十ひとふたみよいなむななやここのたり布留部(ふるべ)由良由良止(ゆらゆらと)布留部(ふるべ)!」

 体当たりするように、蜘蛛の抱え込んだ繭に鳴神を突き立てる。

 光が弾けた。

「……ッ!」

 燐太郎を正面から衝撃が打ち据え、彼は数メートルほども後ろへ飛ばされた。

「いってぇ……っ!」

 背が木立にぶつかって息が詰まる。

 何度か頭を振って立ち上がろうとする。そこで眼前の光景に気づき、彼は動きを止めた。

 蜘蛛は、仰向けにひっくり返っていた。

 抱え込んでいた繭が破れ、中から金色の光が溢れている。光は小さな塊に分かれて、そこかしこに散らばっていた。

 闇が満ちていた空き地は、いまや光の坩堝であった。

 光の塊のひとつが燐太郎の足元まで転がってきた。見る間に塊はほどけ、輪郭がゆらぎ、翅を広げ、羽ばたいてふわりと浮き上がる。

 二対四枚の翅をはためかせる、その姿は。

「蝶……なるほど、な」

 飛び立つ無数の蝶。

 光をまとい、翅を広げ、金色の鱗粉を跡に残して、蝶が飛ぶ。

 草に座り込んだまま、燐太郎はぼんやりそれを眺めた。

「魂の運び手、か」

 蝶が人間の魂を運ぶとみなす考えは、洋の東西を問わず存在する。

 そして、そう考えるものがいるならば――つまり、語り、述べ、書き記すものがいるならば――それは起こりうることなのだ。

 再び轟と風が鳴る。

 見ればようやく起き上がった蜘蛛が、裂け目に這い込んでゆく。

 追う意味はない。燐太郎は座り込んだまま、異形の存在が溶け崩れながらもといた場所へ還るのを見送った。

 やがて金色の蝶はすべて飛び去って、燐太郎ひとりが残された。

 もはや、空き地はただの空き地だった。

 燐太郎はまだしばらく空を見上げていたが、不意にくしゃみをひとつする。

 肩から力を抜く。こわばった手を開くと、鳴神が手からこぼれ落ちた。ゆっくりと立ち上がる。

「あ、っつ」

 左腕が痛んだ。狩衣の袖がざっくりと裂け、血の乾きかけた腕が覗いている。

 肩をすくめて鳴神を鞘に戻し、トランクに収めた。

 その場を離れようとしたところで、白っぽいものが視界に入る。見れば、空き地中央の丘の一箇所に何かがあった。埋まっていたものが露出してきたらしい。

 近づいて確認すると、小さな木の札だった。

 立木をかきわけて公園に出たとき、空はまだ暗かった。低く垂れ込めた雲に街の灯が反射している。

 蜘蛛も、蝶も、どこにもいない。ただ、東京の夜が続いているだけだった。

思ったより長くなりましたが、この話はあと一回で終わります。

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