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クソ野郎達と糞少年の恣意的逃走

 パラパラパラとヘリの羽が回転している音がする。

 その音に混じって、グルプゲジュリアプジュルゥと僕の腹から異質な音が響いた。


 痛い。

 お腹がものすごく痛い。

 腹パンされているみたいな感じだ。

 僕はううう……とゾンビのような死にかけの声を出した。


 「どうしたんだお? 出産直前の妊婦のようなうめき声だしてお。まあどうせ、ブリブリ系の痛みなんだおな」

 「排泄を我慢するうめき声と出産時の声を一緒にするな!! 必死に赤ちゃん産もうとする全ての妊婦さんに謝れや!!」

 「ごめんだお☆」

 「死ね☆」


 ピュアな気持ちで、僕は☆マッチョを呪った。

 直後、操縦席から忌々しい声が聞こえた。


 「ウ◯コを空中投下すればいいんじゃないかフォイ?」

 「僕は変態の前で絶対に恥を晒したりはしないからな!!」

 「もし漏らしたらどうするんだフォイ?」

 「お前らを道ずれにして死ぬ!!」

 「プププ、たかがウ◯コごときで死ぬフォイかwww」

 「草を生やすなや!! 僕はガチなんだぞ!」

 「世の中には◯◯◯ロな女優さんが、一生懸命日本のチェリーボーイ達をビデオを通して慰めているというのに、君は何てザマだフォイ!!」

 「ス◯◯◯な女優さんが社会貢献しているのは事実だけど、僕の場合はただの変態扱いで牢屋行きの結末が見え見えだろ!!」


 興奮したためか、僕の腸がジュルルと泡立った音を出す。


 「ふひ!? ふひひひひ!?」

 「おや? ついに壊れたおか?」

 「ふひっ!!??」

 「とう、だお!!」


 マッチョは僕のケツに浣腸した!!


 「くぁwせdrftgyふじこlp!!!」

 「懐かしの叫びだおね。時代の経過を感じるんだお」

 「遠い目で和んでんじゃねーよ!! 漏らしかけたぞ!!」

 「ちゃんと手加減したお。だから君が後生大事にしているウ◯コは漏らさなかったんだおよ?」

 「後生大事になんかしてないわ!! 捨てるに相応しい場所があったら、速攻で捨ててやるところだ!!」

 「まあまあ、正気に戻ったんだからいいんじゃないかお?」

 「もっと別のやり方があったはずだ!!」

 「ああ、下剤を飲ませるとかだおか?」

 「もっと鬼畜すぎるわ!!」


 マッチョの果てしない悪意をその言葉から感じた。


 「クソ……とりあえずどこに向かってるかだけ教えろよ。着いたら1番にトイレへ行きたい」


 と、僕は操縦席に座るパイロットデブにそう言った。


 「とりあえず、ダイアゴ◯横丁へ行くフォイ!」

 「それは魔法界にしか存在しないし、しかも普通の人には入り口の漏れ鍋は見えないし、そもそもフィクションだ!!!」

 「ツッコミが無駄に長いフォイ。キレがそろそろ悪くなってきたんじゃないかフォイ?」

 「余計なお世話だ!!」

 「ツッコミに無駄があるのは、中途半端に紳士だからじゃないかフォイ? この、ムッツリな穢れた血めフォイ!」

 「2巻のマ◯フォイみたいなことを言うなや!! と言うか、変態と血は何にも関係ないし!!」


 僕がそう叫ぶと、◯ルフォイデブはやれやれと全くかっこよくないポーズをとって、やっとまともな答えを返した。


 「このヘリは目立つから、乗り物を変えるフォイ」

 「何にするんだよ?」

 「ハ◯ーのファイアボルトだフォイ!!」

 「あれば目立たないのは分かるけど、架空のアイテムはリアルで存在しない!!」

 「なら、飛行タイプのポ◯モンでそらをとぶはどうだフォイ?」

 「だからそんなのは存在しないっつの!! もし出来るなら、ポッ◯に秘伝わざマシンのそらをとぶを覚えさせて、お前を墜落させたいわ!!」

 「じゃあ僕のハチロクだフォイ!」

「少しは現実的になったけど、Dな主人公の愛車なんて絶対に見つからないだろ!!」

 「むむ、同志3号はわがままだフォイねぇ」

 「お前がぶっ飛んだ妄想発言をするからだ!!」


 僕がデブの妄想をバッサリ斬り捨てている間、マッチョが後部座席の窓の向こうを指差す。


 「追っ手だお!!」


 僕とデブはその言葉に反応して、後ろを見る。

 そこには、まだ遠いが1台の武装ヘリが近付いていた。


 「なんかやばそうなヘリだぞ」

 「流石に人質がいるから重火器はないにしても、追跡されるのは鬱陶しいフォイ」


 そうだ、デブの言う通りだ。

 デブの隣にはアヘ顏で気絶中のパイロットが1人いる。

 まず攻撃はしてこないはずだ。

 少しすると、ヘリから通信が入ってきた。

 デブはスピーカーをオンにして、俺たち全員に聞こえるようにする。


 「ハロォーハロォー!! ブラックリストボーイ達!! 俺達は正規に国から雇われたてめえらの死神だぁ!! 今から飛びっきりのスウィートをお前達にファッ◯してやるから覚悟しなベイベー!!! どうぞぉ!!!」


 とんでもなく口が悪い刺客だった!!!


 「こちらフ◯ッキンマスコミ号だフォイ!! お前ら程度の武装ヘリでこっちの最高にイカしたフォルムのヘリを撃墜出来るとでも思ってんのかフォイ!! タマァ全部避け切ってやるから人権無視してそっちのショボいチ◯ポをケツにぶちこんでみなフォイ!! どうぞぉ!!!」


 デブはもっと口が悪かった!!!


 「挑発してどうするんだよ!!」

 「大丈夫大丈夫だフォイ。こっちには人質がいるんだフォイよ? どうせ撃てやしないフォイ」

 「……本当か?」


 僕は半信半疑の状態ではあるが、黙っていることにした。


 「キタキタキタキタァァ!! アーメン・ハレルヤ・ピーナツバター!! デッドオアアライヴショウは終了だぁ!! 良い子のお前らには俺からの親愛の証として、ミサイル弾頭をプレゼントフォユゥ!!! どうぞぉ!!!」


 逆に相手は挑発にノリノリで乗っかってしまった!!!


 「上等だフォイ!! 国の犬ごときが偉大なる神の紳士である僕を殺せるとでも思ってんのかフォイ!! どうぞぉ!!」

 「神が犯罪者だってかぁ!! 面白れぇ!! 神の穴にファッ◯してやるよぉ!!!」


 そうスピーカーから応答が途絶えた後、ヘリから異音が聞こえた。

 見ると、ミサイルがガチンとヘリの両サイドからその姿をあらわにしていた。

 人質がいるのにも関わらず。


 「やばいぞ!! 僕達、死ぬのか!?」

 「死ぬなんて言うなお! 命を大切にしない奴なんか、大っ嫌いだお!!」

 「元はと言えば、お前ら変態コンビが招いた命の危機だっつの!!!」

 「変態じゃなくて紳士だお!! このムッツリスケベが!!」

 「お前が否定したい箇所はそこだけかあぁぁぁ!!!!」


 僕はマッチョの首を掴んでグラグラ揺らした。

 そして……


 「ウリリイイィィィィィィ!!!!」


 悪のカリスマが言いそうな叫びがヘリから聞こえてきた。

 その瞬間、法治国家たるここ日本の上空で、ミサイル2発が僕達めがけて発射された。


 「やっぱり人質がいても、撃ってきてるじゃないか!!」


 僕は大丈夫だと呑気に言っていたデブを睨みつける。

 が、いい加減なデブは僕の目線にわざと怖がるようにマッチョへ助けを求めた。


 「同志エモン、何とかしてフォイ〜」

 「しょうがないんだおなぁ〜同志君は」


 猫型ロボットのようにデブに応えたマッチョは、後部座席のドアを全開にする。

 そして、黒光りする三角形のパンツに両手を突っ込んだ。

 モゾモゾと両手を動かして取り出したのは……


 「休憩時間にア◯ルプレイをしようと学校から拝借したボールと、匂いを嗅いだり僕がはいたりする為に気絶させた女性教師から盗んだストッキングぅだお!!」

 「盗んだ目的が変態まっしぐらすぎるだろ!! しかも某猫型ロボットは、そんなマニアックな代物をのび◯君に出したりはしないし!!」

 「けど、僕の足のサイズにストッキングが合わなくて、はけなかったんだおおお!!!」

 「んなことで泣くなぁぁ!! 僕は今の命を落としかねないギリギリな状況で、こんな変態の助けなしでは生きられないという事実に泣きそうだわ!!」


 こうしている間にもミサイルはどんどんこっちに迫っていた。

 小型ミサイル。

 だが、人を複数爆殺するには十分な代物。

 あんな物に対して、黒ストとボールで何をしようと言うのか?


 いつの間にかマッチョは、ストッキングの中にボールを詰めていた。

 グルグルと回転させ、狙いを定める。

 マッチョの筋肉が脈打つ。

 筋肉から伝達された運動エネルギーは、ストッキングを超兵器へと昇華させる程に高速回転していた。


 「ボールを相手のゴールへシュゥゥッッだお!!!」


 マッチョは高速回転したボール入りのストッキングを手放す。

 投石機のように放たれたソレは、ミサイルに真正面から激突する。

 直後、爆発が起こった。


 「超エキサイティンフォイ!!!」

 「ツ◯ダオリジナルからだお!!」


 マッチョは爆発の向こう側にいるヘリに指差してそう言った。

 なんにもバト◯ドーム関係ねぇよと僕は思った。


 「おい!!まだミサイル1つ残ってるぞ!!」


 僕は叫ぶ。

 まだ、ミサイルは僕達のヘリを追ってきていた。


 「やべぇんだお! もう投球用のストッキングがないんだお!!」

 「そもそもストッキングに投球用なんて存在しないし!!」

 「必殺のロー◯ョンショットでも、あのミサイルには歯が立たないんだお!」

 「当たり前だ!! と言うかまだロ◯ション持ってたのかよ!!!」

 「それこそ当たり前だお!! 紳士どころか、男の嗜みだおよ!! これを使わないで女の子が痛がったらどうする気なんだお!?」

 「普通こんな状況でそんなことを想定するかぁぁ!!!!」


 僕は喉が潰れんばかりにキチガイマッチョの耳元で叫び声をあげた。

 それを聞いても、当の本人はロー◯ョンを大事そうにパンツの中に収納するだけだった。

 こいつは自分の命よりもロー◯ョンを懐にしまうことの方がプライオリティが高いらしい。

 誠に死ねと僕は思った。


 「まあ、心配するなフォイ、同志3号よ。僕がミサイルを蝶のように舞い、蜂のように刺してやるフォイ」

 「蜂のように刺してミサイルを爆発させるのは余計だけど……躱せるのか?」

 「僕を誰だと思っているんだフォイ? 戦争法人のエースパイロットフォイよ? 永遠を生きるキルドレなんだフォイ」

 「お前は絶賛逃亡中の変態容疑者だし、永遠に生きるわけでもないし、このヘリは戦闘機でも何でもないわ!!!」

 「じゃあ、ブルー◯ンダーのパイロットというのはどうだフォイ?」

 「多分そのネタは殆どの人が知らないだろうし、そもそもこれはブ◯ーサンダーじゃなくて、ただのマスコミの使ってたヘリコプターだ!!!」


 操縦席の妄想デブに向かって僕はそう言った。

 だが、何故だか理由は分からないが、デブがヘリを操縦出来ているというこの事実。

 もしかしたらと思わなくもない。

 どっちにしろ、僕の命はこのデブに託されていた。

 そのデブはと言うと、迫るミサイルを見て、こう呟いた。


 「おもしれえフォイ。おもしれえってのは大事なことフォイ、ロック。やったろうじゃねぇかフォイ!!」

 「ロア◯プラの腕利き運送屋のタフな黒人みたいなことを言うな!! それに僕の名前はロックじゃない!!」

 「え?僕がダッチワ◯フのようだフォイって?」

 「ワイフは余計だ!!!」

 「どうしたフォイ? 笑えフォイ、ここは笑うところだフォイ。笑いなフォイ」

 「こんな時に笑えるか!!! 頼むからマジメにしてくれ!!」


 僕は渾身の土下座を海賊気取りのデブにした。

 プライドを捨てたのだ。

 命の為ならプライドなんてクソ食らえ。

 そう思いながら、頭を床にすりつけた。

 そして……


 「そこまで頼むなら仕方ないフォイ!!」


 デブはそう言って、ヘリを思いっきり右に傾けた。

 ミサイルは丁度ヘリのいた軌道を通っていく。

 絶妙なタイミングでミサイルを避けたのだ。


 だが、なおもミサイルは僕達の乗ったヘリを追い続ける。

 明らかにこっちを追尾していた。

 それでもデブは絶妙なテクニックでヘリを右へ左へ傾けて、ミサイルを翻弄していく。


 「僕は人間をやめるフォイよ!! ジ◯ジョ──ッ!!」


 デブはどこぞの吸血鬼のような気合を叫びながら、ミサイルと一進一退の駆け引きを続けていく。

 でも、敵がそれを許してくれるわけがなかった。

 敵も同様にこちらに聞こえるだけの叫びをあげ、機関銃を撃ってきたのだ。


 「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァァッッ!!!!」

 「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄アァァッッフォイ!!!!」


 こっちのヘリは弾丸の雨にも屈せず躱していく。

 しかし、僕達を追尾していたミサイルは、弾丸の雨をそのまま浴びて、爆発を起こしてしまった。

 激しい衝撃が僕達を乗せたヘリを襲い、バランスが崩れていく。

 ピーピーとヘリから緊急事態を知らせる音が響き渡った。


 「エマージェーシーフォイ!!墜落するフォイ!!!」


 デブが一言そう言い放った。


 「も、もうダメだ!!死ぬ!!」


 僕は色々なものを諦めて、頭を伏せた。


 「同志エモン、助けてフォイ〜」

 「同志君、もうスペアポケット(黒光りパンツ)には僕の愛しい息子しかいないんだお」

 「そんなぁ〜フォイ」

 「国民的アニメのやり取りをヘリでするな!!」


 極限状態の中で、僕はツッコミながらヘリの外を見た。

 ヘリの真下は、田舎町の外れにある愛咲空港だった。

 丁度天井がガラスに覆われている部分。


 僕達は落ちていく。

 死ぬのか生きるのか。

 よく分からない。


 ヘリが落下しているせいで、無重力みたいな状態になっていく。

 なんとなく気持ち悪い。

 そして、僕達の乗ったヘリは空港に突っ込んだのだった。

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