筋肉と脂肪の僥倖
僕はウ◯コの夢を見ていた。
排泄とは素晴らしい行為だ。
喰らった命を自然に還すのだから。
バクテリアが緩やかに土へと還元し、植物を育む。
植物は花となり、実を付け、生物にまた食されていく。
こうした循環の根底にある礎は、ウ◯コだった。
ウ◯コがなければ生態系は容易く乱れていく。
ウ◯コは縁の下の力持ちだ。
ウ◯コは命だ。
ウ◯コは地球だ。
ウ◯コは神だ。
ウ◯コ最高!!!
快便最高!!!
便秘最低!!!
下痢最低!!!
僕はウ◯コだ!
僕はこの世界の神になる!!!
フハハハハハハハハハ!!!!
ウ◯コウ◯コウ◯コウ◯コォォォ!!!!
ウ◯コ信仰!!
ウ◯コを崇めろ!!
ウ◯コは糞だああああ!!!!
ウ◯コウ◯コウ◯コウ◯コウ◯コウ◯コウ◯コウ◯コウ◯コウ◯コウ◯コウ◯コウ◯コウ◯コウ◯コウ◯コウ◯コウ◯コウ◯コウ◯コウ◯コウ◯コウ◯コウ◯コウ◯コウ◯コウ◯コウ◯コウ◯コウ◯コウ◯コウ◯コウ◯コウ◯コウ◯コウ◯コウ◯コウ◯コウ◯コウ◯コウ◯コウ◯コウ◯コウ◯コウ◯コウ◯コウコ◯ウコ◯ウコ◯ウコ◯ウコ◯ウコ◯ウコ◯ウコ◯ウコ◯ウコ◯ウコ◯ウコ◯ウコ◯ウコ◯ウコ◯…………
「はっ!!!!!?????」
夢から覚めた。
一瞬で僕は覚醒する。
恐ろしく気持ち悪い夢だった。
茶色い悪夢。
僕の人生の中で、こんな夢を見ようとは……
いつの間にか僕はベットに寝かされていたようだった。
清潔な白いシーツに布団。
「おや、目覚めたようだおね」
僕は声のした方向に顔を向ける。
そこには、上半身裸の露出狂マッチョが優雅な姿勢で椅子に座りながら、コーヒーブレイクを嗜んでいた。
うんざりする光景だった。
時計を見ると、もう夜の7時を過ぎていた。
「車が衝突した直後に、君は気絶してたんだおよ? 覚えているおか?」
「ここはどこなんだ?」
「恐らく、殆どの女子が神聖な処女からビッチヘと堕ちる外道の巣窟、その名も高校だお」
「何高校だ?」
「愛咲高校だお」
……え?
「それ、僕の高校じゃないか!!!!」
僕はガバッとベットから飛び起きて、コーヒーブレイクマッチョに詰め寄る。
「てかどうしてお前がこの学校に入れてるんだよ!! 許可がいるだろ!!」
「ハハハ、車で突っ込んでおいて許可もロリもありはしないお」
マッチョが僕の肩を面白そうにバシンと叩く。
仲間みたいな扱いで超不快だった。
「車で突っ込んだ後、教師陣を数人顔面エルボーして気持ち良く眠ってもらって、この保健室へ入ったんだお」
「教師陣に暴力を振るったのかよ!!!」
「あ、若い女教師は流石に顔はマズイから、アヌスに全力で浣腸したお」
「それは倫理的にもっとNGだ!!!」
「えー、それじゃあ浣腸は前の方の下の口にやった方が良かったおか?」
「さっきまで史上最低の低俗と僕が思ったアヌス浣腸すらも悠々と越える爆弾発言はやめろ!!!!」
「甘いお! 僕にはもっと上の奥義があるおよ!!」
駄目だこいつ……早くなんとかしないと……!!
僕は頭を抱えて唸った。
「大丈夫かお? さっき寝てる時にウ◯コウ◯コとうなされていたくらいだしお」
「僕は夢の中のウ◯コ発言を寝言で言っていたのか!!!」
「しかも途中からウ◯コからウ◯ンに変わっていたからビックリしたお」
「メチャクチャ恥ずかしいからやめろ!! むしろやめてください!! それとウ◯ンじゃ何かと誤解あるから、普通に◯を取ってウコンにしてくれ!!!」
僕は僕自身の失言を必死でフォローする。
「ウコンって、いくら連呼してもウ◯コにはならないんだおよ? 知ってるおか?」
「そういうトリビアを提供されるきっかけを作った気絶中の僕を、過去に戻ってブン殴ってやりたい……」
僕は心底そう思った。
「そういえば、あのクリミナルデブはどこに行った?」
「同志のことをそう呼ぶなら、せめて犯罪紳士とオブラートに包んで言って欲しいんだお」
「それもそれで危ない呼び方だけどな……」
マッチョが透明な窓の向こうを指差す。
そこには……
「抵抗をやめて、人質を解放してください! 貴方達は包囲されています! 繰り返します! 抵抗をやめて、人質を解放してください!」
「おらあぁ!!! このお嬢ちゃんを殺されたくなかったら、校門の外で大人しく意味のないスピーカーでの説得を飽きるまでリピートでもしてろだフォイ!!!」
クソデブは車に同乗していた女の子の首筋にナイフを押し付け、ヤクザの恐喝顏で群がる警察を脅していた!!!
「何やってんだお前!!」
僕は窓をガラリと開けて、ヤクザデブに大声でそう言った。
「おお、我らが共犯者!! やっと目覚めたフォイね!」
「何が軽い口調で目覚めたフォイね、だ!!! この状況は何なんだよ!! あと共犯者って言い方はやめろ!!」
「僕達は共犯者。お前が魔女なら、僕が魔王になればいいだけだフォイ!」
「世界の3分の1を軍事支配する第11皇子みたいなことを言うな!!!」
「散々使い倒して、ボロ雑巾のように捨ててやるフォイ!」
「人の話を聞け!!このエセ皇子!!」
会話が成り立っていない。
目茶苦茶だった。
「まあまあ、そんなに怒るなフォイよ。あんまり力んだらケツの門が決壊して濁流が流れるフォイよ?」
「ブッ殺すぞ」
腹がまた痛くなってきているという事実は、僕の殺意を後押しした。
ガチな殺気を察知した恐喝デブは、急に上司の怒りをなだめる中間管理職のような媚びた表情へと切り替えた。
「……車で学校に突っ込んだ後に警察が来ましたので、貴方様をお守りするために時間稼ぎをしてたんでゲスフォイ」
「で、この時間まで粘ったってわけだお」
マッチョが僕の隣で補足した。
「ヘッヘッヘッ、あっしゃぁ貴方様の役に立ちたかっただけでさぁフォイ」
「……分かったからその卑屈な言動をやめろ」
僕は保健室の中に入るようにデブを手招きした。
すると、デブは手招きを手で制して、後ろを振り返って警察官達にこう言った。
「おらぁ!! クソファッ◯ンポリス共!!! 校庭の中に一歩でも侵入してみろフォイ!! このいたいけな瞳をした少女のケツの穴を溶接して、代わりに額に第2の穴をこのナイフで開けてやるフォイよ!!!」
「脅すにしても、それは言い過ぎだ!!」
僕のツッコミをスルーして汚い言葉を言うだけ言うと、スッキリとした顔で少女と共に部屋に入ってきた。
「快便した後のようにスッキリだフォイ」
「実際にウ◯コ出来ていない僕への嫌味か?」
「まあまあ、今の内にトイレへ行っておくことをオススメするフォイ。これがシャバで出す最後のシャイニングスパイラルウ◯コかもしれないフォイからな」
「直訳すると輝く巻き糞だぞ、それ」
狂った言動に対して、冷静に対応する僕の姿を冷めた目で少女は見ていた・・・
どうせもう何でもいいさ。
ここでトイレが出来るなら、もう僕のメンツなんて……
僕はトボトボと廊下へ出てトイレへ目指す。
「あらあら、トイレへ1人で行けるかママ心配だわフォイ」
「ここは僕の母校だ!! それとお前は僕の母親じゃない!!」
「シッコは便器の外にはみ出さないようにするんだフォイよ〜」
「余計なお世話だ!!!」
「ま、ゲリラ豪雨だから大丈夫フォイか」
「僕の大便をお前は何だと思ってるんだ!!」
廊下を歩きながら言葉を返す。
ストレスで腹の痛みが増していく。
ケツの穴をキュッとすぼめて僕はトイレへ歩いた。
男子トイレの前に立つ。
やっとだ。
やっと僕は解放される。
この苦しみから、僕は羽ばたく。
おお・・・アーメン。
僕は感動のあまり、意味不明な祈りを捧げて男子トイレへ入った。
・・・そこには、こっそり侵入中の特殊機動隊が3人いた。
「ノオォォォォォッッッ!!!!!!」
僕は英語で悲しみの悲鳴をあげた。
その声に反応したのか、わずか数秒で変態コンビ2人が女の子を連れて走ってきた。
「どうしたおか!! トイレの個室に入る直前で無念のお漏らしおか!?」
「そう誤解されるような叫びをあげた僕も悪いが、生きている内に僕は漏らさない!!」
「じゃあ死んだあとに漏らすフォイか!!」
「死ぬ前に絶対便器で排泄してやるって意味だ!!! と言うか僕が漏らす前提で話を進めようとするな!!!」
2人のボケを流麗に受け止めつつ、僕は嘆いた。
まだ……まだ僕は安住の地へたどり着けないのか。
神様……いい加減、僕にウ◯コさせてください。
もはやそれは懇願の域に達していた。
「……」
一連のやりとりを見ていた機動隊3人が業を煮やしたようで、無言のまま俺達に拳銃を向けた!!!
「僕に任せろだフォイ!!!」
そう言って、無謀なデブは僕を押しのけて前へ出る。
「喰らえ!!! 奥義、あの懐かしの水風船だフォイ!!」
白い液体を入れて縛った、砲丸ほどの大きさのコ◯ドームをデブは振り回した!!!
「なっ!?」
機動隊3人が一瞬うろたえる。
当たり前だ。
だって、白い液体の入ったコン◯ームだ。
白い液体でコンドー◯なんだぞ?
僕はその中身を想像して身震いした。
寒気で一気に便意が遠のいていく。
「フォイヤァー!!!」
デブは白く膨らんだコケティッシュでアダルティーなグッズを、ヌンチャクのように振り回す。
カンフーデブ曰く懐かしの水風船は、機動隊の1人の顔面にクリーンヒットした!
コンド◯ムが割れ、機動隊の顔面に白い液体が飛び散った!!
「ぐああああああああーっっ!!! 大ショオォック!!!」
武器が柔らかいため、相手は外傷を負わない。
代わりに精神的ダメージが尋常ではなかった。
あまりにも強烈な事態のせいか、静かに呪詛を吐いて機動隊の1人が気絶した。
嗚呼、栗の花の匂いが漂ってる気がする。
「フォイチャッ!!!!」
さらにカンフーデブは2個の白く膨らんだ◯ンドームを用意し、投球した。
そのうち1つは機動隊の顔面にヒットする。
「顔射・・・だとぉ?」
機動隊の男はそう呟いて、ブクブクと泡を吹く。
直後白目になって昏倒した。
僕は哀れだなと思った。
「はあっ!!!」
だが、もう1つの方の精神崩壊因子が含まれたコン◯ーム爆弾はかわされてしまう。
「やるフォイな!!」
「うおおおおお!!!」
最後の機動隊員が銃の引き金に指をかける!!
「ならば、奥義、エロ分身の術フォイ!!!」
デブは懐から、アニメキャラの幼女ヒロイン(全裸)のプリントされた抱き枕カバーを取り出した!!!
カバーは一瞬で広げられ、アニメキャラの恥ずかしい部分を惜しげもなく機動隊員に見せつける!!
「こ、これは私の好きな某物語シリーズに出てくるアセロラとオリオンと心臓の下に剣がある金髪ロリババァではありませんかあぁ!!!!!」
機動隊員は偶然にもオタクでロリコンだった!!!
「紛い物のロリであるところのロリババァが好きな奴は、紳士失格だフォイよ!!!!!」
機動隊員がアニメキャラの幼女ヒロイン(全裸)抱き枕カバーに気を取られているうちに、デブは顔面に脂ギッシュなパンチを喰らわせた!!
「あべしっ!!!!」
世紀末を生きる雑魚キャラのような声を出し、最後の機動隊員はバタリと倒れた。
信じられないことに、この変態デブが全部倒してしまったのだ。
「本当ならモータ◯コンバットのようにフェイタリティしてやりたいところだフォイが、これで勘弁してやるフォイ!!」
「フェイタリティが殺し技って知ってて言ってんのか!!」
「当たり前だフォイ!! ちなみに僕は赤ちゃんでもイケるフォイから、実現さえ出来るならベイバリティの方が良いフォイ!!」
「お前が赤ちゃんになって殺されてしまえ!!!」
「僕が赤ちゃんになったら、キュートすぎて誰も逆に手を出せないフォイよ!! 別の意味で手を出す女性ならいるかもだフォイがね!!」
「いっぺん自分の顔を鏡で見てこい!! きっと醜悪な欲求で歪んだ顔が見れることだろうよ!!」
「いやぁ、それほどでもないフォイ」
「決して褒めてない!!!」
フェイタリティを決めようとしていたデブを否定する傍ら、僕はトイレの窓から見た。
続々と突入してくる複数の特殊機動隊員を。
「やばい!! もっと来るぞ!!」
「まだ便意が来るのかお!?」
「違う!! 敵がだ!! そして僕はまだトイレで用を足していない!!」
「じゃあ人類誰しもが持っている性欲が遂に同志3号にも溢れて来たのかフォイ!!」
「僕はまだそんなに欲求不満じゃない!! そして子供の種をコン◯ームに限界まで入れてた、欲求全開のお前に気にされたくもないわ!!!」
「あのコンドー◯に入ってたのはただのミルクだフォイよ? どうやら同志3号は変な想像をしていたみたいだフォイね〜?」
ま・じ・か!!!!!!
「いやいやいや!! あんなの誰だって誤解するわ!!! 俺の認識は正しかったはずだ!!」
「あ、ちなみにミルクとは言っても母乳じゃないフォイよ?」
「そんなこと誰も聞いていない!!!」
そんな言葉の応酬をしながら僕達は走り出す。
後ろから待てぇ!!と怒号が聞こえるが、無視して廊下を駆ける。
マッチョが女の子を背負っているのが横目で見えた。
「もはや1階に留まるのは危険だお!」
「じゃあどうするんだよ!」
「屋上へ行くんだお!!」
「それじゃあ俺達籠城か!? でも、そんなのいつかは捕まるのがオチだろ!!」
あと、俺のウ◯コももたない!
「大丈夫だお!! ちゃんと秘策があるんだお!!」
「本当か!!」
「トラストミーだお!!」
「・・・分かった。信じよう」
悲しいことに、選択肢なんてありはしなかった。
僕達は全力で屋上へ上がっていく。
階段を通じて2階、3階へ。
そして僕達は屋上へたどり着いた。
屋上と校内を繋ぐドアを閉め、施錠する。
空を見ると、ヘリコプターが1台近くで飛んでいるのが見えた。
いよいよ大騒動だ。
既に僕達は社会的に死んだも同然なのではなかろうか?
そんな気持ちがよぎった。
「で、どうするんだよ!」
「こうするんだお!!」
突如、逃走犯デブが女の子のスカートを勢いよくパシンとめくった。
女の子のパンツが丸見えだった。
クマさんのアップリケがついたパンツだった。
「はあああああ!!??」
僕は少女にセクハラ行為を働いた性犯罪者デブの胸ぐらを掴む。
「こんな時に何してるんだよ!!」
「セクハラだフォイ!!」
「堂々と言うな!!」
「堂々と言わないと紳士じゃなくて、ただの変態になってしまうんだフォイ!!!」
「どっちにしろ変態カテゴリーだ!!」
コイツの常識の線引きが僕には理解出来ない。
そしてデブは叫ぶ。
「みんな、死んだふりをするフォイ!!」
「どうしてだよ!?」
僕は言葉の真意を理解出来ず、デブに問う。
「あそこのヘリ、何だと思うフォイか?」
冷静なデブが上空を飛んでいるヘリを指差す。
「警察のヘリということはないフォイ。それなら、地上から侵入してきた機動隊と同じタイミングでヘリから人員が降りてくるはずだフォイ」
「なら、あのヘリは何なんだ?」
「この騒動をカメラに収めたい心の肥えたマスコミだフォイよ」
「なるほど」
「マスコミ連中が犯人達の気絶している場所で、1人泣き叫ぶ少女を上空から無慈悲にも撮影すると思うフォイか?」
デブが知的な笑みを浮かべる。
やばい。
変態が頭良く見えている!!
状況がアレだから口には出さないが、ギャップが凄まじかった。
「ということで、伏せるんだフォイよ」
デブにガッと頭を押さえつけられる。
僕は屋上の床に寝転がる形になった。
「起きるなフォイよ?」
「……分かった」
僕は大人しく寝ておく。
周りを見ると、マッチョの方はM字開脚で 既に倒れていた。
まるで自身のモッコリを天に見せつけるようだった。
女の子の泣き叫ぶ声と、ヘリの旋回音だけが聞こえてくる。
少しすると、ヘリの音が近付いていた。
その轟音の合間から、言い争う声が聞こえてきた。
それは俺達の仕事じゃないだの、女の子を ただ見てるだけなのは耐えられないだの。
デブの予想はどうやら当たったようだった。
ヘリがゆっくり降りてくるのが分かる。
カツンと靴の音が床から響いた。
「今だお!!!」
合図と同時に、マッチョとデブが飛び起きた!!
「えっ!!」
ヘリから降りた人間は驚いた声をあげた。
その人はまだ20代くらいの若い女の人だった。
ああ、ヤられる。
僕は心の中で女性に合掌した。
「熟女は僕がヤルんだお!!!」
マッチョが卓越した身のこなしで女性に襲いかかった!!!
「秘技、天使のヴェーゼだお!!!」
マッチョは女性を太くたくましい上腕二頭筋で包み込む!!
これだけでもう犯罪的な光景だ。
だが、さらにマッチョはやらかした。
思いっきりキスをしたのだ。
「うっわ……」
僕はドン引きした。
マッチョが女性にキスしながら大きく息を吸う。
女性は必死にジタバタしたが、その衝撃はマッチョの筋肉に吸収されていく。
女性が苦しそうな表情をしたかと思えば、次の瞬間白目をむいた。
「グッテイスだお!!」
女性は上腕二頭筋の抱擁から解放されると、パタリと倒れた。
どうやら気絶したようだ。
唇が紫色に変色していた。
僕は近付いてキスマッチョに言った。
「何をしたんだよ!」
「キスを通して、相手の肺の中の空気を全部吸ってやったんだお!!」
「お前はバキュームか!!」
僕は思わず吠えた。
「逆に僕の唾液と空気を吐いて、相手に限界まで飲ませて窒息させる技もあるんだお!!」
「他にも種類があるのかよ!!」
「僕の胃の内容物をオールリバースして、相手に流し込んで窒息させる荒技も……」
「やめろぉ!!!」
僕は熱く語るバキュームマッチョの言葉を無理矢理遮る。
「おっとっと、つい僕の秘技を漏らしてしまったお。今後は注意しないとだお」
「頼むから、もう2度と僕に聞かせないでくれ」
僕まで気持ち悪くなってくるし。
「そっちも終わったようだフォイな」
醜い声のした方向を見る。
そこには、マスコミ関係者のヘリを強奪し、我が物顔で操縦しているデブの姿があった。
ヘリの操縦者はと言うと、デブの隣で涎を垂らしながらビクビクと痙攣しつつ、気絶していた。
……何があったんだろう?
「さっさと行くんだおよ!」
僕はマッチョに腕を掴まれてヘリの後部座席に乗せられる。
・・・女の子を屋上に残して。
瞬間、ヘリは屋上を離れた。
夜の町並みが見えてくる。
田舎なので、寂しく見える。
全体的に暗いのだ。
そんな黒色の景色を、今はパトカーの出す赤色の光が数多く照らしていた。
「・・・もう僕はこの町に戻れないんだろうな」
感傷的な気分になりながら、僕は遠く見える大地に向かって呟いた。




