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誕生日プレゼントは何の育毛剤が良いのかな?

──伊織────


お願い。その名前で私を呼ばないで。


お願いだから……ッ!!!




「今日も遅刻するつもりなのかしら?…さすがに人間としてどうかと思うわよ」


「ぐっ……」


冷ややかな声と急に感じた顔への痛みで私は目が覚めた。


顔にのめり込んでいる枕とご対面。そして心をえぐられるような言葉かけ。


精神的にも身体的にもダメージを受け朝の目覚めは最悪でした。←ただし私が悪い


枕が強く投げつけられたのか分からないがとにかく顔が痛い。ジンジンして痛みが全く引かない。


「……っ痛すぎます…」


「貴女が何度名前を呼んでも起きないからよ。それより…早く支度してよ。置いていくわよ」


「え?」


部屋のドアの前で制服に着替え準備満タン!あとはドアノブを捻って高校に行くだけ!な天野さんが腕を組んで私を待っていた。


「…もしかして一緒に行ってくださるんですか??」


「本当はすぐにでも行って予習したいんだけどね、昨日貴女を置いていったら…あのハゲ男がうるさくて……だからよ。早く顔洗って歯磨いて準備してきてよ」


「は、…はい」


(顔の痛みなんてもう気にならないぐらいビックリしちゃった…まさか待っててくれるだなんて……)


私は急いでベッドから降りて支度をした。2人一緒に部屋を出て高校に行くまでの道にあるコンビニに寄り朝ごはんを買った。

2人でサンドウィッチを買い歩きながら食べた。


「全く、貴女が遅いからモグモグ寮の朝ごはん食べられなかったのよモグモグ本当迷惑だわゴックン」


「ご…モグッごめんなさい……」


「ふんっ、まぁ良いわ。コンビニだなんて初めて入ったし…良い体験を朝からできたわ」


「初めて!!?コンビニがですか!??」


私は手に持っていたサンドウィッチを思わず落としてしまった。


「勿体無い事を…というかゲームセンターに行った事のない貴女に驚かれたくないわ。小さい頃に普通行くでしょ。…メリーゴーランドとか乗ったことないのかしら?」


「いや〜昨日は川崎君とハシャぎました…って、んん??!メリーゴーランド!?そんなのゲームセンターに無かったですし遊園地じゃないですか??」


「……遊園地の事をゲームセンターって言うんじゃないの??娯楽施設でしょ?」


私は顎が外れるくらい口を開けてしまった。


「何言ってるんですか!!!??えぇぇぇぇぇえ!?流石の私でも違うって分かりますよ!!!!??遊園地とゲームセンターが同じなわけないじゃないですか!!月とスッポンぐらい違いますよ!!?」


「な、…なんですって……そんなに違うの?おかしいわ…ありえないわ。これから何を信じたら良いのよ……」


私の顔をまるでこの世のものとは思えないぐらいドン引きした顔で見つめてきて絶望していた。


「だったら、私が今までゲームセンターだと思っていたのは遊園地だったのね……。なんてことかしら。完璧に騙されていたのね」


「……?誰かに嘘つかれてたってことですか??」


「…………あ、ほら、話している内に高校が見えてきたわ。貴女のせいで遅刻だなんて嫌だから走るわよ」


「え?え?え?ま、待ってくださいー!!!(汗)」


(なんだろう、話を逸らされた気もしたけど……)


疑問を胸にしまい込んで先を走る天野さんに必死で着いていった。

チャイムと同時に教室に着いたためセーフにはなったが全力疾走した私達は息が上がり頬も火照り、髪も乱れクラスメイト達の視線の的になった。


「ちょっwwなになに〜?今日は二人揃ってギリギリに登校とかwww必死すぎかよ!」


席に着くと川崎君にお腹を抱え爆笑された。


「…………ハゲのせいよ」


天野さんが私を挟んで川崎君に冷ややかな視線を送った。思わず私の肩もすくむ。


「貴方が昨日、私にぶつぶつ言ったから今日は待ってあげたのよ。貴方に笑われる筋合いは無いわ」


「気にしてたの!?えぇー!つかっちゃん俺の事なんて興味すらないからそんな事忘れられてるかと思ってたのにー!」


「えぇ、興味は無いわ。貴方の席が私の隣じゃなく間に伊織が居て良かったわね。じゃなきゃ今頃貴方…………あ、先生が来た」


「何!?俺どうなってたの!!?ねぇ!!いおりんちゃん!つかっちゃん怖くない!!?」


「あの……安心してください川崎君!誕生日プレゼントは強力な育毛剤をプレゼントしますから!!」


「そこじゃないからッ!!てかハゲてないからッ!!!」


川崎君が叫び終わった瞬間、教卓から凄まじい速度でチョークが飛んできて川崎君のおでこに見事に命中した。ぐはっ!と言い放った川崎君はそのままバランスを崩し椅子ごと後ろに倒れた。


恐る恐る前を見るとそこには完璧なフォームでチョークを放った先生が怒りをあらわにしていた。


「全く……!!ハゲの分際でギャーギャー言ってるんじゃありません!!朝からギャーギャーうるさくて耳障りだわッ!!先生が来た時ぐらい静かにできないのかしらッ!!?これからハゲって呼ぶぞ!!!」


先生、口調が段々荒くなってますよ


「ハゲてなぃ……」


川崎君は弱々しく吐いてそのまま目を閉じた──


が、皆スルー。綺麗にスルー。そこに存在していないかのようにスルー。唯一私と天野さん(満足そうに鼻で笑っているが)だけが川崎君を見つめていた。


「さて、今日は校舎案内を一時限はする時間だから授業が一時限分潰れます!授業が本格的に始動するのは明日からだから今日しっかり目に焼き付けてね。それじゃあ皆廊下に出てね」


先生の一言により皆席を立った。入学して3日目しか経っていないがもう皆新しい友達が出来ていてグループもなんとなく固まっていた。


「ほら、伊織行きましょ」


「はい!……川崎君、立ってください(汗)!」


未だ倒れていた川崎君の身体を起こそうとしたが重くて無理だった。天野さんはそんな彼を一瞥して軽く身体を蹴った。


「いつまで倒れてるのよハゲ。さっさと起きなさいよハゲ。通行の邪魔なのよハゲ」


「…………心折れそう(泣)」


「勝手に折れておきなさい。伊織、こんなハゲ放っておいてさっさと行きましょ」


「行くよ!!置いてかないで!!?」


バッと立ち上がり椅子を片付けて川崎君は私の肩と天野さんの肩に腕を回した。


「Let's G……グフっ!!」


天野さんの肘が川崎君の脇腹に見事にヒットして川崎君はその場に倒れ込んだ……


*:..。oƒ *:..。oƒ *:..。oƒ *:..。oƒ *:..。oƒ


「ここが図書室でその隣が準備室ね。1階、2階と終わったから残りは3階ね。そっちに階段があるからそこから行くわよ〜」


先生の引率で私達1年生のいる北舎の1階から3年生の教室がある3階へ、渡り廊下を渡り南舎の職員室等のある1階から物理室など移動授業を行う教室が中心とした2階までの説明が終わり最後の階の案内を聞いていた。


生徒は皆新しく作った友達たちと固まって先生の後ろを着いていき話を聞いていた。


「……どうせなら屋上の天文室も見てみたいです」


思ったことをそのまま口に出してしまいつい独り言を呟いてしまった。

私の両脇には天野さんと川崎君が居て、2人にもしっかり聞かれていた。


「あら、伊織そんなに観たいの?私は星座が見れれば良いから星一つ一つはあまり興味沸かないけれど……私から先生にお願いしてみようかしら?あの人、私に貸しがあるのよ」


「はぁ?聞き捨てならないんだけどつかっちゃん。星一つ一つに興味が沸かないだって?!あんなに素晴らしい天体をただの線としか観ないなんて天体への冒涜だよ〜困っちゃうなぁ」


「何ですって?」


(……また始まっちゃいました(汗)昨日も天野さんとも毎日屋上に行くって約束した後、2人の星に対する価値観が違って対立しあってたんだよね。止めようとしたのに結局夜遅くまで2人とも言い合ってたのにまた始まるだなんて……)


「そーんな事より!今日校舎説明した後、確か係決めでしたよね!?2人とも何に立候補しますか??」


火種が着いたばかりだから鎮火も早く2人は私の質問についてに話題が上手く移ったようだった。


「係?あぁ、私は学級委員に決めてるわよ」


「そうなんですか!?あれって人気のない役職じゃないですか?先生からの雑用も多いそうですし」


「内申のためよ。稼げる所で稼がなきゃ皆との大きな差は作れないもの。じゃなきゃ良い大学の推薦は狙えないわ」


「もう3年後の事まで考えているんですね。流石ですね!」


「……まぁ、主席合格もして更に差を広げておきたかったんだけどね」


天野さんが憎しみを込めて川崎君を睨んだ。


「いやだな〜つかっちゃ〜ん!そんなに見つめられたら照れちゃう〜」


両頬に手を当てキャッキャと赤面しながら騒ぎ出す川崎君。


「で、伊織は何にするの?」


「えっとですね……」


「え?ついにいおりんちゃんまで無視すんの??泣くよ?俺泣いちゃうよ?」


「勝手に泣けばいいでしょ。ハゲのくせに女々しいだなんて男として最低ね。伊織が話してるのに遮らないでよ」


「最低って酷くね?何なのさっきから、つかっちゃん俺に対して当たり強くない??」


「男って時点で受け入れられないわ」


「遂に性別否定されちゃったよ!!?どーしよ!!!俺どうしよう!!」


「と、あんな男は放っておいて、伊織なんて言ったのかしら?」


「あ、私は文化祭委員やってみたいです……ドラマとか見てると凄くキラキラしてて楽しそうなので、ああいう行事には今まであまり積極的に参加できなかったので、今回チャレンジしてみようかと思いました」


「応援するわよ。何なら推薦してあげる。伊織が考える文化祭きっと素敵なものになるわよ」


「そ、そんなことないですよ(照)」


「さっきからつかっちゃん、いおりんちゃんに溺愛し過ぎじゃない?どーしたの」


「…………こういう関係を親友と言うんじゃないの?本でそう習ったのよ。だったら、親友のしたい事を応援するのが当たり前でしょ」


「天野さん……ッ」


(親友!?距離そんなに縮まった気がしないけれど…


…でもこれが親友……)


「嬉しいです。憧れてましたから」


(あぁ、私ちゃんと青春してるんだ。良かった…)


「あ、!じゃあもちろん俺も「土に埋めるわよ」ごめんなさい」



それからまた2人の言い合いが始まってしまった。あまりにもうるさかったため先頭にいた先生が私達のところまで来て川崎君が(だけが)チョークによって成敗された。



結局天文室はおろか屋上にも入らず校舎案内は終了し学校が終わった。本格的な授業開始は明日からなので今日はゲームセンターなどで時間潰しをせず夜になったら川崎君からの連絡で学校に行くことにした。


部屋に入ると真面目に天野さんは明日からの予習をしていたため私もついでに一緒に勉強をした。両壁際にお互いのスペースが別れていて真ん中に私が持ってきた折りたたみ式のミニテーブルを置いて2人で座って川崎君から連絡が来るまでひたすら問題を解き続けた。天野さんの教え方はとても分かりやすく多分明日からの授業より頭に入るんじゃないかというくらいよく理解出来た。


一緒に勉強したり、屋上で星を見たり、親友ができたり……一か月前の私なら考えられないぐらい幸せ。もうあの人はここには居ないのだから────



川崎君からの連絡で屋上に集まり今日も星空を見上げた。

天野さんと川崎君は、また天体と星座の魅力について白熱した討論を繰り返す。

私は……その間、キラキラ輝く星たちに耳を傾け、いつものように《心の中で贖罪を探している》


この3人のプチ天体観測がずっと続けばいいのにな……

お久しぶりです。かなり前回から間が開きました。本当は七夕までにメイン登場人物全員揃うようになればいいな〜と軽く考えておりましたがお気づきのとおり全く間に合いません!!亀ペースにも程がある更新でごめんなさい(^^;

七夕をイメージした小説のため七夕当日にオマケを投稿できるよう頑張ります!

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