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ちっぽけな約束2

小さい頃の私が独りで泣いていた。


私は……そんな自分を見てただ冷たい目で見つめることしかできないの



『天野さん……??』


……んっ、何?


『つかっちゃ〜ん?』


……この不抜けた声何処かで聞いた覚えが…………?


『ど、どうしましょう……!もしかして……!!』


何をそんなに焦ってるのかしら


『落ち着いて〜いおりんちゃん。流石にないから。でも起きねぇな〜……あれか?姫は王子のキスで目覚めるあれか?つかっちゃ〜ん。起きないとチューするぞ〜』


「黙れハゲ!!!!!」

バッシ───────ン!!!


「キャ────ア!!川崎君!!」


突然頭がガンガンするような声が響いて目が覚めた。


「な、な、な、……ッ」


なんで……栗山さんがいるの!?


驚いて声も出ない。頭を必死で回転させた。あれ?なんでこんなに辺りが真っ暗なの?

ここは……外?……屋上かしら?遠くの方で何故か川崎 優斗が頬を抑えて倒れてるのは何故かしら。

そんなことより……私なんで屋上で寝ていたのかしら。確か栗山 伊織のお願いを断って、先生達にコソコソ隠れて屋上に来て…………


「……ッ!ち、違うのよ!?屋上に来たのは……そう!学校探索したくて!!」

(星を見に来ただなんてそんな臭い事恥ずかしくて言えないわ!!)


「探索……?それが用事だったんですか?なんだ〜言ってくれたら私も一緒に付き合いましたよ?私もよく迷子になるので学校の中知りたかったですし」


「いおりんちゃんの方向音痴は初対面の時から酷かったからな〜」


「え、えへへ〜(汗)というか天野さん!探検は良いですけど屋上は生徒立ち入り禁止何ですよ??どうしてここにいるんですか?」


「……それは貴方達にもそっくりそのまま返す事ね」


私がそう言った瞬間手をあたふたさせて焦り始めた。


「あ、あ、あ、……!あのですね!別にわたわた私達は!星をこっそり見に来たとかじゃないんですけどね!!?」


アホなの?


「たまたまですよ?本当たまたま川崎君と2人で屋上行ってみる?って流れになっただけで!昨日も実は来てただなんて事はないですから!!」


……訂正するわ。救いようのないバカみたい


これほどバレバレな嘘を吐く人初めて見たわよ。


「ほ、本当ですよッ!?」


そんな必死な目で嘘ついたって無駄なのに。


「え、えーっと……ねぇ!?川崎君!そうだよね!?」


「……いおりんちゃん、多分もうバレてる」


ほら、川崎 優斗だって笑いを必死にこらえる。口元を手で押さえてるけど身体が笑いすぎて震えてるもの。


「と、とにかくもう私の用事も終わったから帰るわ。貴方達も用事が終わったら早く帰りなさいよ。まだまだ夜は冷え込んでるんだから」


柵にもたれ掛かっていたカバンを取って2人の間を小走りで抜けようとした……が、川崎 優斗に手首を掴まれた。


「はいストーップ☆」


「な、何するのよ!!離して!」


手首をぶんぶん上下に振ってもなかなか手を離してくれずむしろ力が込められた。


「まぁまぁそー言わずに上見上げてご覧?」


「上……?」


言われるがままに上を向いた。


「…………ッ……」


人って本当に感動したら言葉が出ないのだろうか。真っ黒なキャンパスにキラキラ光り輝く星が散りばめられていて……


「綺麗…………」


無意識に出た言葉とともに涙がポロリと零れた。


「天野さん!?どうしました!?」


「……お願いだからッ……見ないで」


ハッと気づいた時には涙が止まらなくなっていた。私は涙を隠すように必死に下を向くことしかできずにいた。


恥ずかしい……この私が感動して泣くだなんて……星で人前で泣くだなんて……!!


自分をなんとか奮い立たせ平然を装うとした。そんな時だった。握られていた手首が川崎 優斗によって引っ張られ川崎 優斗の胸に飛び込んでしまう形になった。


そのまま手を離されたが今度は身体を強く抱きしめられてしまい身動きが取れなくなった。


「……ちょッ!?何するのよ!!?」


衝撃的な出来事過ぎて思考回路がオーバーヒートしてしまった。止まりかけた涙がまたボロボロ溢れ出してしまった。


「は…離しなさいッ!服が濡れるわよ!?」


「つかっちゃ〜ん、急に泣かれたら困るんだけど〜?星、気に入らなかった〜?」


まるで子どもをあやすかのように頭を撫でられた。

(やめてよ……余計に恥ずかしいわ……!!)

そんな心情とは裏腹に私は川崎 優斗の服の裾を無意識に強く握りしめていた。


「いおりんちゃん」


「は、はい!」


「今日はもう帰ろっか」


「……そ、そうですね!初めて行ったゲームセンターではしゃぎ過ぎて疲れちゃいました。ふぁ〜よく眠れそうです」


バレやすい嘘をついて栗山 伊織は私の裾を掴んでいない方の手を取り握ってきた。


「ほら、帰りましょ!天野さん!」


本当に……この人たちは変な人だわ


「全く〜いつまで俺に引っ付いてんの〜?キスしちゃうぞ〜」


「黙りなさい、ハゲのくせに……アハハ」


顔をゆっくり上げて二人の顔を見渡した。



「……天野さんが笑った!!!!川崎君!!見ました!?永久保存版でしたよ!?」


「……失礼ね。私だって笑うわ」


(初めて人前で笑ったけれど)


川崎 優斗から離れて栗山 伊織の手を払った。目にまだ残っている涙を擦り二カッと笑って見せた。


「あと、私の事は呼び捨てで良いわ。……私も貴方の事……い、……伊織って呼ぶから」


「えっ…………」


「……?」


「え、えへへ。嬉しいな」


「ねぇねぇ、つかっちゃ〜ん。俺のことはなんて呼んでくれるの〜??」


「…………ハゲ」


「もっと他にあるよね!!?」


「いいえ。ハゲという言葉がこれ以上似合う人はきっといないはずよ」


「やめて!!本当にふっさふさだから!誤解されるからッ!!」


「川崎君に、つ……つかさちゃん!あまり騒ぐと先生達にバレちゃいます!」


伊織の制裁により一次売り言葉に買い言葉は休戦になった。


屋上から校門までの道をバレないように3人で忍び足で歩いた。男子寮と女子寮が隣同士のため寮まで左から伊織、ハゲ、私の順で並んで無言で歩く。あまりに静かすぎて耐えきれなくなったから私から2人に話題を振ることにした。


「それで、昨日も2人で屋上に行って星を見てきたって本当?」


「ギクッ……え?いやいや、違いますって〜!」


「いや、嘘ってバレてるから良いよ」


「はぁ……いおりんちゃん嘘下手すぎ。うん、そうだよ。いおりんちゃんが星が好きで俺が天体が好きなんだよ。昨日はその話で2人で盛り上がっちゃってたから帰るのが遅くなっちゃったんだよね〜」


「ふーん……それ、日課にするの?」


「で、できれば私は毎日見たいです。本当に綺麗なので」


「俺も、いおりんちゃんと2人で放課後残って見るの楽しいし」


(どうしよう。私も参戦したい。でも、星座が好きだなんて知られるのは恥ずかしいし……そうだわ)


「夜に誰もいない場所で男女が2人だなんて伊織が危険だわッ!」


ビクッ


伊織の肩が震えた。


「ほら、伊織だって震えてる!……心配だから私もついて行ってあげるわ」


「えぇ!?つかっちゃんが〜?ニヤニヤ」


「な、何よ」


「本当は星が好きなくせに〜素直じゃないな」


「はぁ!?違うって言ってるでしょ!!」


「まぁまぁ!落ち着いて下さい2人とも!!良いじゃないですか!つかさちゃんも明日から一緒に行きましょ?」


「ほら、伊織も言ってくれてるんだから良いのよ!」


「素直じゃないね〜」


またそこから始まった言い合い。そうこうしている内に寮に着き私と伊織は部屋に入った。


「あ、そうだわ。本当は昨日あげるはずだったんだけど」


クローゼットに整頓されてある私のボストンバッグから包みを取り出した。茶色の包装用紙で包まれているモノを伊織に差し出した。


「せっかくルームメイトになるんだし仲良くした方が良いかと思って……」


「わぁ!何だろう!?…………オルゴール??」


包装用紙を丁寧に広げて両手に乗せた伊織は私に聞いてきた。


「えぇ、私の好きな曲が入っているの。寝る前や勉強時間に聞くとリラックスできたり集中できる曲だからオススメなの。それだったら私も気にならないから部屋で鳴らしてもらっても構わないし」


「綺麗……桜色で、ガラスで出来ているんですねこれ……ありがとうございます。宝物にしますね!」


「大袈裟ね……クスッ」


就寝時、オルゴールの音が私達の部屋を包み込んだ。心地好くて私はすぐに寝た。



───大丈夫ッ……あの人じゃない───


だから気付いてあげられなかったんだ。


伊織がその晩泣いていたことに


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