ちっぽけな約束
機械音痴なためやっと、題名をつける場所と前書きと後書きの意味を理解しました(笑)題名に関しては前の話にも付けれたら修正します。
日が落ちて月が空に浮かんだ頃
反省文を書き終えた俺といおりんちゃんは職員室に行き先生に提出した後、寮に向かおうとした。
森園学園の敷地内にある寮は、男子寮、女子寮に分かれていて隣同士に設立されている。学園から徒歩10分。どう考えても異常なまでに大きい森園学園の敷地には他にもコンビニ、ショッピングモール、映画館などなど森に囲まれていて長期休暇でしか家に帰れない生徒達のための娯楽施設が完備されていて休日や放課後に皆遊べることが出来る。
これで私立じゃないから驚きである。
下駄箱に向かうため二人並んで廊下を歩いてるけどさっきからずっと無言で気まずかったから俺から話題をふった。
「にしても、本当朝から災難だったよな〜(笑)廃屋のドア開けた瞬間クマと遭遇するとは……貴重な体験だった」
「だから言ったじゃないですか〜!」
「さっきから気になってんだけどさ、敬語やめたら?タメなのに変じゃね?」
「……これ癖なんです」
「癖??」
首をコクンと動かしたいおりんちゃんの目には、さっき初めてあった時と同じように《何かに怯えたような目》をしていた。
(……やっぱ何処か他の《女》と違う。何か隠してる……?不思議な《女》だな……)
でもまだ会って1日。流石に深く踏み込む気は無い。他の《女》と違ったとしても面倒事は勘弁だ。無言で考えていると今度は、いおりんちゃんが空気を変えるため話題をかけてきた。
「あ、そういえば!ここ展望台があるんですよね!!いつか見てみたいです!」
この学園の名物。望遠鏡の事だろう。……もしかしていおりんちゃんは知らないのだろうか?
「生徒は使えないよ。というか屋上立ち入り禁止だし」
そういった瞬間いおりんちゃんの顔は見る見るうちに表情が暗くなっていった。
百面相かよ。
「そ、そんな……それ目当てで来たのに……」
「屋上は生徒が誤って転落する恐れがあるし、そもそも高価な物に生徒が迂闊に触れるわけがないよ」
「よくよく考えれば……そうかもしれませんね」
(おいおい。落ち込みすぎだろ。マジで泣きそうになってるし…………バレたら怒られるし……うーん、本当は巻き込むつもり無かったけど…………)
「もし良ければ、今から行ってみる?ただし先生に見つかったら面倒臭いけど」
そう言った瞬間、いおりんちゃんは子供のような純粋な目をして俺の顔をガン見してきた。
「行きたいです!!行かせてください!!」
「お、おう」
軽く引くけどコロコロ変わる表情は見ていて飽きない。
今まで“良い顔”しかしてこず俺に言い寄ってきた《女》と違ってきっと裏表がない子なんだろう。
(あぁ……楽だな)
一緒にいればいるほど心が満たされていく不思議な力。安心できて泣きたいほどホッとする。
(この気持ちは何なんだろうか)
答えは分からないまま──
屋上に続く階段を登りさっき職員室に行った時にコッソリ取った鍵を使ってドアを開けた。
「わぁ!!」
先に入ったいおりんちゃんは感嘆の声をもらした。
俺も続いて入り言葉を失った。
夜空に浮かぶ月。その周りを彩るかのように光り輝く星たち。
森に囲まれているため星の光を邪魔する余計な光がないから一層輝いて見えた。
(なんて綺麗なんだ……)
「あ、スピカ!」
突然いおりんちゃんは南東に青白く輝く一等星に指を指して叫んだ。
「凄い凄い!アークトゥルスもよく見える!!春の大三角形が毎年見てるのより綺麗に見える!!」
「……あぁ、乙女座と、うしかい座の事か」
「うん!……ってえぇ!?なんで知ってるの!?」
「なんでって……俺も好きだからな」
「川崎君が!?そうなんだ!!意外だ!!私ね星が大好きなの。キラキラ一つ一つが輝いているのに今はもうない星もあって……“死ぬ直前まで輝いている姿を誰かに見て欲しい”って星が言ってる気がしてね……光と影の部分の両方に惹かれてぶつぶつぶつ」
いおりんちゃんは童心にかえった子供のように目をキラキラさせて星を指さしながら楽しそうに話をしていた。……かえりすぎて癖って言ってた敬語すらも忘れていた。
(いおりんちゃんって星マニアだったのか……意外だな)
「あ!もしかしてあれですか!?」
「ん?」
いおりんちゃんが指さす方向を向いてみると、ドーム型の建物があった。
俺が答えるより先に腕を掴んでグイグイ引っ張ってきた。
「早く行きましょ!」
「はは……」
(大胆だな(笑))
ドーム型の建物のドアの前まで来た俺達は開けようとしたが、鍵が掛かっていて断念した。
(……やっぱそう簡単に触れるものじゃないしな〜)
「……見れないんですね」
ションボリして落ち込むいおりんちゃん
「そんな落ち込まない〜屋上に来れたこと事態凄い事なんだから」
「………………星たちの声がもっと近くで聞こえると思ったのに」(ボソッ)
「え?なんて?」
「いいえ!なんでもありません!」
明らかにバレバレな作り笑いをして誤魔化された。
「俺、嘘つき嫌いだよ」
少しトーンを下げて言った。半分は“冗談”、半分“本音”
でも思ってただけで……考えてただけで口に出そうだなんてするつもりが無かった。ポロッと零れてしまった。
「…………ッ」
さっきみたいに作り笑いをして誤魔化せば良いのに、いおりんちゃんの瞳が揺れた。
「星を、近くで見てみたかったんです」
これ以上は踏み込んでこないで──
そう聞こえた気がした
「へぇ〜そうなんだ。でも天体望遠鏡って明るく見えるだけでほとんど点でしか見えないんだよ〜」
ヤバイ。楽すぎて安心し過ぎていつもより相手のこと良く見てなかった。
面倒事は嫌いだ。大嫌いだ。なのに無意識の内に踏み込んでしまった。話題を変えなきゃ耐えられない。そんな顔すんなよ。
「えぇ!!?惑星とかハッキリ見えるんじゃないんですか!?」
いおりんちゃんも乗ってくれたのか何事も無かったかのように話を進めてくれた。
「意外と誤解されやすいけどね〜天体望遠鏡で見れる惑星なんて僅かだし、月が1番かな。土星の環や木星の模様が限界かもね。もともと明るく夜空を見るための物だし。だからほとんどの天体は点なんだよ」
「ふむふむ……川崎君って凄い詳しく知ってるんですね」
「俺小さい頃から天体が大好きなんだよね〜」
「だからなんですね!」
「あ、でも星がリアルタイムで見られるよ。ほらよく言うじゃん?今光ってる星でも光が届く速さによって中にはもう死んじゃって無くなってる星があるって。天体望遠鏡だとそういうの抜きで今の現状が見れるよ。まぁ慣れが必要だけど」
「…………!!そうなんですか!!?それは是非いつか絶対見てみたいです!!」
いおりんちゃんが小指を立てて俺の顔の前に出してきた。
「約束しましょ?」
「……プッ。今どき指切りかよ」
小指を絡めていおりんちゃんの指切りの歌とともに約束した。
「それじゃあ今日はもう帰りますか!高校初日ですし、朝あんな事があったので川崎君も疲れてますよね??」
「熊からの脱走なんて貴重な体験させて貰っちゃったからね〜確かにクタクタだね。いおりんちゃんが明日も寝坊したら困るし〜」
「あ、あれはですね!目覚まし時計が壊れちゃってたんです!!」
「へぇ〜」
「もう!川崎君!!!」
次の日、いおりんちゃんは遅刻ギリギリに走って教室に駆け込んだ
話の流れ的に伏線盛りすぎな回でした。いおりんちゃんと川崎君、一体何があったんでしょうかね