第三話
入学式会場となる大講堂にはもう新入生がたくさん集まってきていた。
…席は自由のようだ。
とりあえず一番後ろの端の席に腰掛けた。
だんだんと席が埋まっていくのをボンヤリと眺めていると、いきなり横から声をかけられた。
「あ、あの…」
声をかけてきたのは栗色の髪の毛をセミロングにした小さな少女だった。なんだかリスを連想させるような少女だ。
「えっと、お隣の席にその、座ってもいい…?」
「うん。どうぞ。」
「あ、ありがとう。」
…いまさらだが、この子超かわいいな。
でも、なんか嫌な沈黙だな。何か喋った方がいいだろうか。
「それにしてもすごい人数だね。これ全部新入生だよね。何人くらいいるんだろう。」
「えっと、たしか一学年600人くらいだったと思います…」
「そうなんだ。よく知ってるね、えっと…」
「あ、すいません!自己紹介もせずに…」
「ううん。自己紹介しなかったのは俺も同じだし。おれは轟奏。」
「えっと、私は桃井望。あの、よろしく…ね?轟くん。」
「うん。こちらこそよろしく、桃井さん。でも、俺のことは呼び捨てでいいよ?」
「う、うん。じゃあ私のこともその、呼び捨てでいいよ?」
ヤバい。クソ可愛いなおい。
そんな感じで俺と桃井が喋っていると、講堂のステージのライトがつき、みんながそちらに注目し始めた。
そろそろ入学式が始まるようだ。
俺たちも話すのを止めてステージの方に注目した。