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春の目覚め

この小説は拙作「1K8畳亡命記」の前日譚となっております。

未読でも差支えないように配慮しております(どうせ大した量でも内容でもありません)が、支障等ありましたらご一報入れていただければ幸いです。

 北国の住人にとって、春の訪れは一年で一番の祝い事だ。

 雪華北嶺もその名に違わぬ雪国で、長く厳しい冬の間、雪華北嶺の住民は一日のほとんどを家の中に閉じこもって過ごす。男も女も老いも若きも、歌曲や踊りの練習をし、祭りの飾り付けを手作りするのが古くからの風習なのだ。だから、長く厳しい冬が去り新春を迎える今日のこの日には、国中の皆が揃って待ち望んだ祭りに興じていることだろう。

 もっとも、冬が明けたといってもそれは暦の上でのこと。根雪はまだ解けきらず、吹き付ける風は身を切るほどの冷たさである。それでも、冬の間ずっと空を覆っていたぶ厚い灰色の雪雲の切れ間から漏れる陽の光は、確かに春を感じさせるものだった。


 窓から見下ろすと、王城・白銀八重城下の町でも雪割りの祭りが盛大に開かれていた。まだ朝のうちだというのに活気に満ちあふれた町人の歓声は、厳冬の静寂に慣れた耳にはいささか以上にうるさい。笛や太鼓も実に陽気な音色だ。陰鬱な雪空の空気から解放された彼らは、ユキワリソウの新芽が息吹くように思いの限り騒ぎ楽しんでいる。


 しかし、そんな外の様子とは対照的に、私は最悪の気分だった。


「どうしても出なきゃいけない?」


 鏡の中の少女が口をとがらせる。自分で言うのもなんだが、なまじ整っているだけに感情表現もオーバーに見えて、苦りきった顔というのを体現しているようだ。髪も肌も白さがなんとなく陰気に見えるし、特に右の濁った紅い瞳は焦点があっていないのか、しきりに揺らめくのがおどろおどろしくも思われる。

 私は実の母にさえ、蔭口で、あるいは公然と、おぞましい妖精の取り換え児だと罵られることがあった。確かに、白銀の髪も、翠と紅の左右異色の瞳も両親のどちらとも似ても似つかないし、歩けるようになるころにはもういっぱしに口をきいてみせたのは気味が悪かっただろう。でもそれにしたって、醜いだの汚らわしいだのと言われるような見目ではないと内心憤慨していたものだ。だが、私がそんなふうに言われて機嫌を悪くするたびに今のような表情をしていたとすれば、なるほど恐ろしくも思えるかと妙に納得がいってしまった。

 そのくせ、今日のためあつらえられたドレスは憎らしいほどに似合っている。雪に見立てた白染めの生地に薄桜色の花柄をあしらうのはこの季節にはありきたりだが、同じ白でも私の着るそれは綸子の仕立てである。蚕の育たないこの国では絹糸は同じ重さの金と引き換えになるほど高価で、子供としても小柄な私向けのこのドレスでさえ平民はおろかよほどの貴族でもおよそ手が届かない代物になる。さらに私はオーガンジーのボレロを羽織っているのだけれど、これもまた絹糸で、雪華北嶺の国章たる六弁矢雪のレースが精緻きわまる技法で編み込まれている。やはり、これ一枚で屋敷が建つような代物だ。

 そんなおめかしをしてパーティーに出るといえば世の女の子にとっては夢みたいな話で、羨望のまなざしを向けられるような贅沢だとはわかっているのだけれど、やはりどうしても私の気鬱は一向にはらわれる気配もなかった。

 傍らに控える侍女のリッテリットに八つ当たりのように尋ねると、彼女はぴんと立てた人さし指を私につきつけ、諭すように言った。私に咎めるつもりは毛頭ないが、実際ずいぶんな不敬である。


「わがままをおっしゃってはいけませんよ、姫様。今日の主賓は姫様にございますれば」


 そうしてリッテリットは私の髪を撫で、結い上げ始めた。腰まである銀の長い髪がたちまちまとめ上げられていく。ティアラをのせることを前提にしているからか、なんだか少し違和感のある髪型だ。しかも今日は戴冠を受けねばならないので、夜までこのまま群臣の目にさらされるかと思うとますます憂鬱になってくる。

 優しく柔らかな指づかいにかえっていらだちを感じ、ついつい愚痴が口をつく。


「でも、嫌なものは嫌なんだけど。今日一日で何人の手のひら返しに付き合わなきゃならないんだか、わかったもんじゃないわ」


 市井では祭りが開かれる一方、当然のことだが王宮でも新年の行事がある。俗に春賀の会と呼ばれるその行事は、常の年であれば、諸侯が王に挨拶を申し上げ、王から官位や領地を拝領しておしまいだ。要するに封建的契約の確認作業なのであって、まだ御領も直衛も持たない私にはついぞ関わりのない行事であった。

 しかし、今年は違う。数年来に渡ってもつれた継承争いを憂いてか、王太子の指名と戴冠式が執り行われることになったのだ。雪華北嶺では正式に王太子の指名がなされるのは成人してからというのが慣例で、しかし私はまだ8歳である。いや、今日で新年を迎えたので、つまりひとつ歳をとって御歳9歳ということになるが、それでも若すぎる。当然反発は強かったようなのだが、陛下自らの指図とあって、鶴の一声で決まってしまったとのことだ。そのせいで私は今日一日、退屈な新年の行事をおすましして耐えなければならなくなってしまった。

 私の心中を正直に吐露すれば、あまりにお粗末な茶番であると言わざるを得ない。指名などといっても、現王の嫡流はもはや私ひとりである。いまさら国王でも何をどうにかできる段ではないし、派閥間の亀裂など十二分に深まっている。何を狙うでもなく、効果も定かではなく、それなのに公の場に引きずり出されてさらしものにされるのはまっぴらごめんだ。 


「姫様の気苦労は分かりませぬが」


 手櫛を止めてリッテリットは言った。


「リッテリットは鼻が高うございますよ。今日は皆々さま、姫様に平伏してご挨拶申し上げるためにこの城にいらっしゃるのですから」


 実のところ、リッテリットの気迫もわからないではないのだ。なんとなれば、私にとっては久々の表舞台である。ここ数年はこうした晴れやかな場とは縁遠く、リッテリットにはずいぶんと無聊をかこわせたものだ。私付きなどという貧乏くじを引かされた彼女にはずっと申し訳なく思っていた。

 もともと、リッテリットは名門の出である。若くとも宮廷の使用人の中での序列はそれなりの位置にあって、本来の職掌は今しているような王族付きの世話役が相当する。だが、私付きの侍女は実質彼女ひとりきりだったので、やむなくしもじもの仕事もこなしていた次第だ。

 本来ならば下女の差配で済んだものを、貴族の娘が手ずから行うのには相当の苦労を伴ったと思う。給仕がもたついて料理が冷めてしまったり、皿やカップを割ったり、ドレスのひも留めがいい加減で人前でずり落ちてしまったり、不手際ゆえにひどく困らせられることも一度や二度ではなかったけれど、リッテリットはそれをちゃんと己の不明と恥じるような人柄だったから、粗相を詫びる彼女の姿に私はかえって心苦しくも感じていた。


「リッテリットは気楽ね……」


「姫様が賢すぎるのがいけないのです。まだ八つの姫様が心のままにふるまっても、誰も咎め立ては致しませんのに」


 長く深いつきあいのせいか、リッテリットは容赦がない。まだ幼い私にとっては、狂姫とすら称された私につき従ってくれた、この王城でたったひとり頼れる相手で、姉のようにも思っている。後にも先にも、物心ついた後の私の頭を撫でてくれたのは彼女ひとりだ。

 もっとも、リッテリットとて私の異常性を許容してくれても理解してくれているわけではない。私の持つ異質にして異端の知識を余人は狂気の産物として見たが、リッテリットは天与の才とみなしたという違いにすぎないのだ。どちらかといえばむしろリッテリットの方が特異なのだろう。私の異常性は私自身が自覚し、今となっては慙愧するところである。もちろん、リッテリットの存在が私にとってどれだけ救いになったかは言うまでもないことだが。


「本当に賢かったら、本心を隠していられたら、あんなことにはならなかった」


 今もこうして口答えしているのがその証左だ。子供染みた反抗心でかまってもらいたがっている。他の誰も甘えさせてくれなかったから、どうしてもリッテリットには甘えてしまうのだ。

 そんな私にリッテリットはぴしゃりと言った。


「それを悪しと思われるなら、お披露目を毛嫌いなされませぬよう」


「リッテリットは私にどうしてほしいの……」


「お心のままになさるのが一番ですわ。姫様の栄辱など、リッテリットには係わりのないことですもの」


「リッテリットは厳しいなぁ」


 いつになく辛辣なリッテリットの言葉に嘆息する。

 しかし、リッテリットはすぐに頬をゆるめて笑いかけてくれた。


「何があってもリッテリットは姫様のおそばを離れませぬゆえ。玉座にあらせられませば、リッテリットは六花の宮にて侍ります。雪床に眠るを望まれれば、リッテリットもまた同じ床に就きましょう」


「気持ちはありがたいけど、縁起でもない……」


 私が玉座につくとすれば現王たる父が崩御することに他ならない。嫡女の私に向けて言うならば、それですぐさま物騒と言うわけでもないが、だからと言って新年の祝日にあえて話題にすることでもないだろう。それに六花の宮とは王妃のための宮殿である。女王の治世であれば王配が住まうのであって、私付きの侍女であるリッテリットが足を踏み入れることは基本的にないはずなのだが。

 一方、雪床に眠る、とは、雪華北嶺では自害をさす暗喩だ。先の冬には私の母、すなわち王妃がまさに雪の床に就いたばかりだ。まかり間違えば、いや、万一が起こらなければ、私がそうなっていただろうことは疑いがない。もしそうなっていたら、リッテリットもまた後を追っていたというのだろうか。なかなか笑えない冗談だった。


「とにかく、リッテリットはそういう気概でおります。姫様も万事つつがなくなどと気を張ることはございませんから、十分にお楽しみあそばせ。年明けの勇魚など実に美味しゅうございますよ」


「今年は間に合ったのね。それは楽しみだわ」


 食べ物で釣るのは子供をあやす常套手段だ。もっとも、クジラ料理などこの歳ごろの女子が喜ぶものでもないのだが、さすがにリッテリットは私の好みをよく知っている。ここ数年は初物が雪割りの祭りに間に合わないことが続いていたのだが、もしかしたらリッテリットが間に合わせたのかもしれないと思った。

 まだ公にはならずとも、王太子付きの唯一の侍女ともなれば、その程度の指図は造作もないことだろう。権力を振りかざしてまずすることとしてはあまりにささやかでかいがいしい。


「ええ。さあさ、姫様。そろそろお時間でございますよ」


 幾分かよくなったとはいえまだ気が乗らない私を、リッテリットが手を引いて控え室から連れ出した。どうにも、聞き分けの悪いわがまま娘のようで恥ずかしい。

 だいたい、いかに子供であっても、侍女風情が王族の手を引いて歩くなど外聞以前に不敬極まりない。私やリッテリットによい感情を持たない連中に見咎められても損なので、私はすぐにその手を振りほどいた。精一杯きどって、王族らしく声をかける。


「リッテリット。もう一人で行けるわ。後のことはまかせます」


 リッテリットはあたりを見回し、廊下に人影が無いのを確認してから私の頭を髪型が崩れないようにそっと撫でた。こういうところがどうにも敵わない理由だと思うが、敵の多い私にとって唯一心を許せる相手とあれば、頭があがらないのも仕方ない。


「では姫様にご武運を」


 さだめし、こんな祝いの席も私にとってはひとつの戦場なのだろう。今日の振る舞いひとつではなくこれまでの総算が問われるのも、実際の戦争と同じことだ。

 恐れる必要はないと自分を鼓舞するように、深々と頭を下げたリッテリットに頷きを返す。

 そうとも、何も恐れることはない。私は今、確かに勝者なのだから。











「フェルゲン西南領主、オーロス・フェルグナウトが謹んで新年のお慶びを申し上げます」


 朝から数刻、もう日は存分に高く昇っていたが、挨拶の席次はようやく土地持ちの大物の番が回ってきたあたりで、まだ半分も終わっていなかった。

 挨拶の席次はまず、今は絶えていないのだが、賜姓家という臣籍に降りた王族の家柄が最初に来る。次に宮中貴族、すなわち王家譜代の貴族が降順に名を連ね、最後が外様の領主貴族となる。宮中貴族はしばしば領主貴族を土地持ちと呼んで下に見る傾向があるが、実際には領地からの収入がある領主貴族の方がむしろ経済的には豊かで、ここに少し複雑な関係性が構築されているのだ。

 しかし、先ほど挨拶を述べたオーロスなどは、王軍の中軍大将を任ぜられているため土地持ちでありながら宮中での序列に含まれていた。もっとも、それも去年までの話である。今年の挨拶ではオーロスは中軍大将を称しなかったし、それはおそらく彼が己の進退を憂慮してのことだと思う。オーロスは先年の後継者争いにおいて弟王子派の首魁の地位にあった。よって私を擁する長子派が勝利した以上、彼はおそらく今年の任官では中軍大将の位を罷免されることになるだろう。それで、彼は自ら宮廷序列を辞し、土地持ちの首座には何とかおさまろうという腹なのだ。

 そういうわけで、それからしばらくはオーロスの子飼いの土地持ち連中が連なって祝辞を述べたてていた。その連中というのは、つまりかつての弟王子派であって、往時の私のわかりやすい敵であったわけだが、彼らは私をないがしろにし、ずいぶんな嫌がらせも受けたものだ。政争が表面化し激化したここ数年は生命の危機を感じることもままあった。

 抑圧されていた頃のことは苦い思い出で、横柄だった彼らが今やオーロスひとりを頼りに細々と寄り添っているありさまは、なるほどリッテリットの言うとおり、多少私の腹の虫を宥めてくれもした。


 しかし、やはりどうにもこうした儀礼儀式の場は退屈である。何をするでもなく、ただ椅子に座っているだけというのもそれに拍車をかける。だがまさか居並ぶ諸侯の前であくびをこらえたり船を漕ぐのも体裁が悪い。

 リッテリットはああ言ったが、たとえ十にもならぬ女子供といっても王族である。王太子の指名戴冠を控える身であればなおさら、不様をさらすこともできない。ただでさえ軽んじられている私のこと、小さな隙のひとつがまだ致命傷になりうるのだ。

 なにせ、今年最初に祝辞を奉じた宰相のミタス=マゥなどは確かに先の政争で長子派を率いていた、言わば私のシンパの第一党であるが、私を頂くとの表明に際して飛ばした檄文の文句がふるっている。

 曰く、「たとえ無能非才、奸佞邪知の輩と言えど、卑しくも嫡流の長子をおいて鼎の軽重を問うは、これすべからく避けられるべし」とのこと。要するに、彼は私が長子だから支持したのであって、むしろ私の評価は谷底ほども低かったという話だ。

 弟王子派が明示の敵とすれば、長子派は獅子身中の虫といったところである。どちらかといえば後者の方にむしろ嫌悪を抱くのは、人として普通の感情ではないだろうか。


 やがて、南中の日が西に傾きかけたころ、ようやく零細の土地持ち貴族が挨拶する段になった。私はそろそろこの椅子から解放されるかと思って人心地つき、退屈を紛らわすため後に控える遅めの午餐を、つまりはメインのクジラ料理を思い浮かべた。


 雪華北嶺で春先のクジラ漁の対象となるのは、ケトテールと呼ばれる体長4メートルほどの小型のクジラだ。身体が小さいぶん素早く泳ぐので、あえて海がまだ氷に閉ざされているのを利用してケトテールを追いこむそうだ。どの部位の肉も大変美味だが、その速力を支える尾びれの付け根の肉は特に上質で、最高級部位とされる。ちなみに、ケトテールから取れる油は燃料や食用になり、髭や皮は工芸品、骨は細工物の材料として珍重される。現に私が着用しているパニエもケトテールの髭が利用されている。

 さて、今日の宴で饗されるのは、やはり尾の身だろう。順当にステーキか、鮮度によれば刺し身ということもあるかもしれない。ケトテールは寒冷な海域に生息する種で、クジラとしては脂が多めなのだが、越冬で体内の脂肪を消耗している春先のケトテールは、赤身にもいい具合に霜が降っている。

 昔、リッテリットにトロと馬のあいのこみたいだと感想を言ったら、馬を食べたのですかと大変驚かれた。雪華北嶺では馬はほぼいないので、食卓にのぼることもないのだ。雪華北嶺で肉といえばまず牛で、次に山羊、鴨までは一般的だ。狩猟の出来次第で鹿や兎、熊の肉も出回る。象やクジラは季節ものということもあって、見かけることは少ない。


 そんなふうに食欲に根ざした雑学をつらつら考え、これでもう二半刻ぐらいは我慢できるなと思った、ちょうどその時である。

 謁見の間の扉の外がにわかに騒がしくなった。衛兵のものと思しき怒声やばたばたとした騒音が壁ごしに伝わってくる。やあやって、重い両開きの扉が開かれ、疲労困憊した様子の兵士らしき若い男が、くずおれるようにひざまずく。よく見れば彼の鎧は泥雪ですっかり汚れ、擦り切れた雪下駄は血と泥が赤黒くにじんでいた。

 およそ尋常ならざる様子に、居並ぶ諸侯はかたずをのんでその男の一挙動に注目した。


「へ、陛下の御前にて、失礼申し上げます!」


 男は王に向かって、息せき切って叫んだ。


「嶺外領エクスシアナプールにて、敵軍襲来!」


 予想だにしなかった凶報に、皆が息を呑んだ。外敵の侵略。

 嶺外領は雪華北嶺の南端で、北嶺山脈の南側にある唯一の町だ。白銀八重の城までは急いでも五日はかかる。山道がまだ雪にとざされていることを考慮すれば、この報が発せられたのは一週間以上前のことになる。敵の規模や勢い次第ではすでにエクスシアナプールは陥落していることだろう。

 にわかにざわめく諸侯を睥睨して、王が玉座から問いを投げる。


「いずこの軍勢か」


「旗色は金糸に紅白、紋章は両頭三翼の鷲! エト=エルゼの軍旗にございます!」


 今度こそ、謁見の間は恐るべき静寂に包まれた。

 古のエルゼ帝国の正統を自称し、周辺国を次々と攻め滅ぼして拡大を続ける大陸の一大強国、新生エルゼ帝国。その爪が、牙が、ついに北限の雪華北嶺まで届いたのだ。


 色をなくし、ただ天を仰ぐ父王。暗い面持ちでうつむく貴族たち。あたかも大仕掛けの舞台装置のように、春の日差しを湛えていた太陽は雲に隠れ、凍えるような重い空気はよどみ、祭り囃子の音も今や遠い。

 私もまた、暗澹たる気持ちでこの知らせを聞いていた。それが、私の、あるいはこの国の末期を告げたものだと、実感したのはまだずいぶん先の話になるが、私はその時確かに直感したのである。


 時に紀元歴1315年、私こと雪華北嶺国第一王女、エイネスラウレフィテンスールクリアフォルストロシアナペールが9歳の春のことであった。

1K8畳亡命記をお読みくださった方にはお久しぶり、それ以外の方にははじめましてを述べさせて頂きます。

事情によりしばらく筆を休ませておりましたが、時間がとれるようになりましたので執筆を再開しました。

しかしながら、その間に設定や構成などかなり変化したこともあり、時系列順としてこちらの小説を先に書くことにいたしました。


……ぶっちゃけると、カキタカッタダケー

不誠実とは思いますが、お許しいただければ幸いです。

これからもご愛顧のほど、よろしくお願いします。

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