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名もなき愛の博物誌 ―剥落する鱗の記憶―  作者: 水前寺鯉太郎
第3章:鋼鉄の心臓と、ひまわりの約束

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第4話:ひまわりの詩

数年後。

かつての廃墟は、世界で最も美しい植物園として蘇っていた。

その中心には、一体の錆びたロボットの像が、当時のままの姿で安置されている。

人々はその像を「太陽の庭師」と呼んだ。

彼の腕の間からは、今も変わらず、黄金色のひまわりが咲き誇っている。

ハルカは、その庭園を管理する責任者として、日々、新しい芽に水をやっている。

彼女の手元には、あの日のエムの心臓を解析して作られた、新しい環境浄化システムがある。エムの献身は、今や一つの庭を越え、地球全体を癒すための技術として広がっていた。

「おはよう、エム」

ハルカは、錆びた金属の肩を優しく叩く。

風が吹くと、ひまわりがカサカサと音を立てる。それはまるで、エムが照れくさそうに笑っている声のように聞こえた。

第一章の、命を懸けた魚。

第二章の、声を捧げた青年。

第三章の、心臓を埋めた鋼鉄。

この博物誌に記された彼らは、形は違えど、皆同じ光を放っていた。

自分を使い果たし、誰かの「明日」を孵化させること。

その愛の形は、種となり、歌となり、太陽となって、この世界をいつまでも温め続けるだろう。

ハルカは空を見上げた。

雲一つない青空の下で、数え切れないほどのひまわりが、一斉に風に揺れている。

その一輪一輪が、かつて誰かが捧げた「献身」の証のように、誇らしく輝いていた。

(第三章:鋼鉄の心臓と、ひまわりの約束・完)

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