07
町が近づく。
徐々に、人の声が聞こえ始めた。
町の前で、彼女は止まり、振り返って口を開く。
「ここの町、小さいけど、王都や、大きい街に行くための馬車が出ているの」
彼女は、落ち着いた声で僕に説明してくれる。
「さぁ、入りましょ」
彼女は町に入っていく。
しかし、僕は。
ーー動けない。
町、つまり、人がいっぱいいると言うことだ。
彼女には、慣れた。
しかし、他の人となれば話は別だ。
足が震え、手に力が入る。
彼女がそっと振り返り、立ち止まる僕を見て、引き返してくる。
彼女は僕の目の前に立ち、少し微笑みながら口を開いた。
「人混みは苦手?」
彼女の言葉に、僕の頭は、驚くほど素直に、縦に動いた。
それを見た彼女は、クスッと笑い、そっと、僕の手を取った。
「大丈夫、1人にはしないよ」
その言葉は、ずっと一人だった僕にとって、なによりも嬉しかった。
彼女に手を引かれると、僕の足は自然と動いた。
「行きましょ」
微笑む彼女を見て、心が少し落ち着く。
怖い。
でも、一人じゃない。
彼女に手を引かれたまま、僕は町へと足を踏み入れた。
町の中は、穏やかな空気に包まれていた。
子供たちがはしゃぎ回り、農具を担いだ男が歩く。
どこかから、パンを焼く、甘い匂いがした。
彼女はそっと、手を離し、口を開く。
「いい町でしょ?」
柔らかい表情で、彼女はそう言った。
いい町。
確かにそうだ。
しかし、僕の心にはまだ、不安や恐怖が残っていた。
ーーそこの兄ちゃん!!
ドクンと、鼓動が跳ねる。
横を見ると、八百屋のような、店の前に、男がいた。
「良かったらなんか買ってってくれ!」
そこには、野菜や果物が並んである。
しかし、僕は固まり、頭が真っ白になる。
ーーどうしよ。
人に話しかけられた。
何か返さないと、不審に思われる。
ごくりと唾を飲む。
手を強く握り、ゆっくり口を開く。
その時。
「リンゴ二つください」
ハッと横を見ると、彼女が立っていた。
「あんまり人がいないのに、迷子にならないでくれる?」
柔らかい言葉だったが、少しの怒りを感じた。
僕は、思わず口を開いた。
「ご、ごめん……」
僕の、突然の謝罪に、彼女は驚き、フッと笑う。
「責めてるわけじゃないわ」
彼女は、男からリンゴを受け取る。
「これでも食べて、落ち着いて」
彼女は微笑み、リンゴを一つ、差し出した。
僕は、そっと手を出し、リンゴを受け取る。
「……ありがとう」
誰かから、ものを貰うなんて、想像もしてなかった。
僕は、ゆっくりとリンゴをかじる。
ーーおいしい。
この世界で、初めて、もらったもの。
胸の奥が、温かくなる。
嬉しくて、僕の手は止まらなかった。
彼女はクスッと笑い。
「そんながっつくと喉に詰まるわよ」
その言葉に、僕はハッとして、恥ずかしくなり、食べる手を止める。
彼女はクスッと笑うと、リンゴを食べながら言った。
「今日はこの町で過ごすから、宿に向かいましょ」
そう言うと彼女は、慣れた足で歩き始める。
彼女の後ろを歩く、その足取りは、さっきよりも軽かった。
少し歩いていると、彼女は、建物の前で立ち止まった。
「着いたわ」
その建物は、木造の二階建てで、窓から漏れる光に、少しだけ安心感が湧いた。
彼女が建物に入っていく。
僕は、少し緊張しながら、彼女の後へ続く。
ーーカランカラン。
建物に入ると、一階は、飲み屋になっており、様々な人が酒を交わしていた。
彼女は、受付へと向かった。
その後を、僕はゆっくりついて行く。
「二人部屋、空いてますか?」
彼女がそう言うと、受付の女性は困った顔をして。
「一部屋しか空いてなくて…」
ーーやばい。
ついに町到着です!
ホテルで二人部屋空いてないって言われたら、みなさんどうしますか?
僕は野宿します。
第8話の投稿は未定です。




