05
ーー疲れた……。
木に体を預け、座り込む。
この世界に来てから、どれだけ時間が経っただろう。
目の前にはまだ、木々がずっと奥に続いていた。
「どんだけ広いんだよ」
現実の巨大迷路でも、ここまで広くは無いだろう。
息を整え、ゆっくりと立ち上がる。
「日が暮れる前に出られたらと思っていたけど、無理そうだ」
フッと笑い、ゆっくり歩き出す。
歩かなければ、一生森で過ごすことになる。
ーーそれだけは、絶対に嫌だ
そう思い、僕はふたたび歩き出した。
いくら歩いただろう。変わらない景色に、少し飽きてきた。
休憩しようと、木のそばに腰を下ろす。
一息ついてから、ふたたび歩き出そう。
そう思った時。
ーーガサガサ
草の揺れる音が、僕の疲れを吹き飛ばした。
「魔物?」
2度の経験で、僕はすぐに直感した。
恐怖はあまりない。僕は、この世界に慣れてきたのかもしれない。
足元に落ちていた、木の枝を手に取った。
ゆっくり音が近づいてくる。
僕は木の枝を構え、戦闘態勢に入る。
ガサガサと草を分け、正体を表す。
その姿に、僕は唖然とした。
ーー人?
金色の長い髪の少女が、草の中から姿を表した。
その少女は、髪の毛についた、葉っぱを払う。
ふと、僕を見つけると、驚いた顔を見せ、口を開く。
「………人?」
その声は、疑問と、困惑の色が混じっていた。
僕は自然と座り込み、彼女を見つめる。
ーー怖い。
ずっと部屋に閉じこもり、家族以外の人と会うのは何年ぶりか。
そんなこと、もう覚えていない。
彼女は、僕の姿を見て、ふたたび口を開く。
「大丈夫?」
ゆっくりと、僕に歩み寄ってくる。
その行動に、僕は、無意識に後ろへ下がる。
ーー何か言わないと。
頭ではわかっていても、声が出ない。
少し、呼吸が荒くなる。
高校の時の記憶が、蘇ってくる。
手が届く距離まで、彼女が近づいてくる。
「ダメだ、きっとこの人も僕を……」
どんどん呼吸が荒くなり、手に力が入る。
過去の記憶が、僕を支配している。
そっと背中に何かが触れる感触があった。
ーー落ち着いて。
その言葉に、僕は、我に返る。
隣に座り、僕の背中を、彼女はさすっていた。
「ゆっくり息を吸って」
そう言われ、僕はゆっくりと息を吸う。
荒くなっていた呼吸も戻り、過去の記憶も、徐々に無くなっていく。
落ち着いた僕を見て、さすっていた手を止め、彼女は口を開く。
「ごめんなさい、怖がらせるつもりはなくて」
彼女の謝罪に、僕は戸惑う。
人が怖い。そんなことを言えば、なんと思われるのか。
そう思い、僕は言葉を選びながら、口を開く。
「君は、悪くない」
僕が口を開くと、彼女は驚いた表情
を見せた。
「そう、なら、少し安心した」
彼女はクスッと笑った。
その顔に、不安な心は無くなっていた。
「ところで」
明るい顔は消え、真剣な表情になる。
「なぜ君は、この森に?」
そう聞かれた時、心臓が大きく跳ねる。
なんて言えばいいか、わからなかった。
気がついたら森の中にいた。
なんて言えば、きっと不審に思われる。
僕は、ゆっくりと、口を開く。
「歩いてたら、道に迷った」
弱く、細い声で、僕はそう答えた。
僕の言葉を聞き、彼女は驚いた顔を浮かべる。
きっと、想像してた答えじゃなかったんだろう。
そんなことを考えていると、彼女はすっと立ち上がり、僕の目の前に立った。
「まぁ、そう言う事にしといてあげる」
彼女は柔らかい笑みを浮かべ、僕に手を差し伸べた。
差し出された手を見て、僕は思う。
ーーこの人は、信用してもいいかもしれない。
なぜそう思ったのか、わからない。人は、僕を見ると、笑い蔑む。
ただ、この人は、他の人とは違う。
そんな気がした。
僕は、差し伸べられた手を取り、立ち上がる。
「私はリニア。あなたは?」
その言葉に、僕は答える。
「響平」
彼女は不思議そうな顔をしながら、首を傾げる。
「キョウ、ヘイ?変わった名前ね」
くるっと踵を返し、歩き出す。
「まぁ、名前なんてそれぞれね。
着いてきて、この森を出たかったら」
その言葉に、僕は少し戸惑う。
この森は、やはり、普通じゃなかったのか?
考えている僕を置いていくように、彼女は深い森を進んでいく。
僕は、彼女を、見失わないよう、ゆっくり歩き出した。
急展開に思わず僕もこの後どうしようかと悩んでます笑
昨日投稿する予定だったんですが、諸事情により投稿できませんでした、すいません。
6話の投稿はまだ未定です!




