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霊障事件解決人・伊田裕美:東京に西洋の騎士の亡霊出現!

私は西洋史に惹かれ、日々その世界を探訪しています。ある夜、YouTubeで十字軍の解説を眺めていたとき、ふと「もし西洋の騎士の鎧が動き出したら――」という想像が胸をよぎりました。その瞬間、物語の種が芽を出したのです。

私の作品には、悪魔や魔女といった異界の存在がしばしば登場します。人間の理性と信仰を試すような彼らの影を描くことは、私にとって創作の大きな喜びであり挑戦でもあります。本作もまた、その系譜に連なる一篇です。

序章 ― 麻布の寺に住む女

東京・麻布の臨済宗寺院「湯川寺」。ここに住むのは二十二歳の若き女性、伊田裕美いだ ひろみ。怪奇・超常現象専門誌『あなたの見えない世界』の記者として働きながら、日々、霊障事件の解決に奔走している。

裕美の武器は伝説の三種の神器――「たむならの剣」「たむならの鏡」「たむならの勾玉」。

• たむならの剣:司馬徽水鏡先生より授かった霊剣。邪悪を討つ使命を帯びる。

• たむならの鏡:湯川寺に安置され、危機の際には住職・村田蔵六和尚に念を送る媒介となる。

• たむならの勾玉:魔除けの力を持ち、裕美の両耳にピアスとして輝く。

戦闘時には梵字が刻まれた黒い法衣「黒梵衣」を身にまとう。これは邪霊を寄せ付けぬ衣であり、初めて禿鬼と対峙した際に村田蔵六和尚から授けられたものだ。

裕美の日常は質素だ。麻布の「ビッグA」で半額弁当を買い、「半額弁当の間」で食べるのが日課。ひれかつ弁当がお気に入りである。飲み物は一年を通して熱いラテ。冷たいものは好まず、夏でも熱いチャーシュウメンを食べる。身体を冷やすと邪霊に付け込まれるという信念を持っている。

彼女を支える人々は三人。

• 村田蔵六:五十代の陰陽師で湯川寺の住職。父のように裕美を見守る。

• 田野倉伝兵衛:雑誌編集長。裕美の取材に依存している。

• 高橋霊光:自称・怪奇現象解決人。だが役立たずで今回は登場しない。


第一章:騎士の目が光る夜

東京・麻布。夜十時。

湯川寺の「半額弁当の間」には、湯気の立つインスタント味噌汁と、上島珈琲店のラテの香りが漂っていた。

「今日はね、半額弁当ならぬ、七十五パーセント引きの弁当だったよ」

蔵六和尚が得意げにロースカツ弁当を差し出す。

「えっ、そんなの食べて大丈夫?病気にならないの?」

裕美は眉をひそめるが、和尚は笑って味噌汁を啜る。

テレビでは、明日から始まる西洋中世史展の様子が流れていた。

展示場を移すカメラが、一体の騎士像を映す。

その瞬間――裕美の目が鋭く光った。

騎士の像の瞳が、わずかに光ったように見えたのだ。

裕美の背中、左右均等の真ん中には、観音を表す梵字の痣がある。

それは不幸の予兆が近づくと、必ず疼く。

今は疼きはない。

「気のせいか……」

「裕美は西洋のものが好きだね」

「うん、そうね。日本の歴史と、西洋のものが好き」

「西洋中世史展に行くのかい?」

「行けたら、行きたいわ」

その夜――東京を揺るがす地震が起きた。

博物館の警備員は、展示物の無事を確認するため館内を巡回した。

騎士の鎧だけが倒れていた。

しかし、損傷はない。

「これは早速報告しないと……とはいえ深夜だ。明日の朝でいいか」

消灯。

警備員は部屋を去った。

その瞬間――騎士の目が、再び光った。

音もなく、スーッと姿を消す。

そして、人気のない北池袋に突如現れた。

東武東上線・北池袋駅。最終列車が去った後の静寂。

一人の酔っぱらいが、ふらふらと歩いていた。

向こうから、金属音を響かせて騎士が現れる。

酔っぱらいは目を疑った。

騎士は剣を抜き――脳天を斬りつけた。

一瞬で他界。

その夜、騎士の姿を見たという証言がSNSに続出した。

「北池袋に騎士がいた」「剣を持ってた」「目が光ってた」――拡散は止まらない。

翌朝、博物館。

騎士像は元通りにセットされ、点検の結果、異常なし。

西洋中世史展は、予定通り開幕した。


第二章:騎士の紋章と聖なる斧

西日暮里。午後の光が斜めに差し込む路地裏に、古びたビルが一棟。

その三階にある編集部「光明社」は、怪奇専門誌『あなたの見えない世界』の拠点である。

裕美が扉を開けると、待ち構えていたかのように編集長・田野倉伝兵衛が立ち上がった。

「裕美ちゃん、騎士の亡霊が人を殺した事件、知っているかい?」

伝兵衛の目は、いつになく真剣だった。

「北池袋の駅前惨殺死体と、SNSで騎士の目撃情報が拡散された件ですね」

「そう、それだ。記事にしてくれるかい?」

「……わかりました」

裕美はまだ事件と断定するには早いと感じていた。

だが、展示場に足を踏み入れた瞬間――胸騒ぎが走った。

空間全体が、白い靄に包まれていた。

まるで霊的な膜が張られているかのように、空気が重い。

問題の騎士鎧が展示されている広場に向かうと、その違和感は確信へと変わった。

鎧には説明文が一切なく、ただ静かに立っている。

だが、胸元に刻まれた文様――それが裕美の目を捉えた。

直感が告げる。「これは、ただの装飾ではない」

裕美は六大学の西洋史研究室を訪ね歩いた。

だが、どの教授も首を傾げるばかりで、決定的な情報は得られなかった。

最後に訪れた研究室で、年配の教授がぽつりと語った。

「高田馬場にある西洋骨董店の店主、天沼裕二。あの男なら、何か知っているかもしれんよ」

高田馬場。山手線の外側に広がる静かな街並み。

駅前の喧騒を抜けると、時代に取り残されたような通りが現れる。

その一角に、古びた木造の店があった。

看板には「天沼骨董堂」とある。

裕美が扉を開けると、鈴の音が鳴り、店主・天沼が顔を出した。

「いらっしゃい。何をお探しですか?」

裕美は迷いなく、紋章のスケッチを差し出した。

「この紋章について、知りたいんです」

天沼は目を細め、スケッチをじっと見つめた。

「ああ、これね。ずいぶんレアなものをお探しですね。ペンダント?ワッペン?……在庫が……ああ、ありましたよ」

「そうじゃなくて、この紋章の人物について知りたいんです」

「なるほど。これはね、ポーランドの貴族――タムチャックスキーの紋章です」

「タムチャックスキー?聞いたことのない名前ですね」

「悪名高い人物ですよ。教皇に十字軍への参加を約束しながら、逃げて破門された。教皇ホノリウス三世にね。

その後、非業の最期を遂げたそうです」

「その亡霊を鎮める方法、知っていますか?」

「亡霊?それより、このペンダントなどいかがでしょうか」

天沼はタムチャックスキーの紋章が刻まれたペンダントを差し出した。

裕美は、この男と話していると、買わされてしまいそうな気がした。

「ペンダントなら、ホノリウス三世の方がいいですね」

「ありますよ、こちらに」

裕美は断りきれず、ホノリウス三世のペンダントを購入してしまった。

店の外に出てから、

「……ああ、無駄なものを買ってしまった。経費で落ちないでしょうね」

がっくり肩を落とす裕美。

しかし、収穫はあった。

天沼の話によれば、タムチャックスキーの霊だけではないが、この時期の人物には、ホノリウス三世が所持していた「聖なる斧」が有効!

その斧は、今回の展示物の中に含まれているというのだ。


第三章:深夜の展示場、騎士の霊は再び街へ

深夜二時、西洋中世史展示場。

館内は静寂に包まれていた。

展示物の間を縫うように、赤外線センサーが張り巡らされ、監視カメラが無数の目となって空間を見張っている。

警備システムは最新鋭。人の動き、熱源、音――すべてを感知するはずだった。

だがその夜、異変は音もなく起きた。

タムチャックスキーの騎士鎧。

展示台の上に、威厳と冷気を纏って立っていたはずのそれが――

突如、消えた。

まるで空気に溶けるように、輪郭がぼやけ、影が薄れ、そして完全に姿を消した。

警備システムは一切反応しなかった。

赤外線も、熱感知も、カメラも――何も捉えなかった。

それは、霊であった。

この世の法則に属さぬ存在。

タムチャックスキーの霊は、獲物を求めて街へと歩み出した。

その足取りは重く、しかし音を立てず、まるで夜の帳の中を滑るようだった。

北池袋。

駅前の通りは、終電を終えた後の静けさに包まれていた。

街灯の光が、濡れたアスファルトにぼんやりと反射している。

一台のタクシーが停まり、ドアが開いた。

ラウンジ嬢・竹田雅美が降り立つ。

黒のワンピースに、銀のヒール。

酔いの残る足取りで、ふらりと歩き出したその瞬間――

「……あっ」

靴の踵が外れた。

彼女はバランスを崩し、しゃがみ込む。

その背後に――気配があった。

冷たい風が、無風の夜に吹いた。

竹田が振り返ると、そこに騎士が立っていた。

銀の鎧。

無表情の兜。

そして、ゆっくりと抜かれる剣。

「なにこれ……?助けて……!」

叫びは、夜に吸い込まれた。

剣が振り下ろされる。

竹田雅美は、一撃で絶命した。

その一部始終を、タクシーの運転手が見ていた。

彼は恐怖に駆られ、急発進しようとした。

だが、焦りがハンドルを狂わせた。

車は電柱に激突し、運転手も命を落とした。

その夜、騎士の霊はさらに街を彷徨った。

SNSには「池袋で騎士を見た」「剣を持った男がいた」「目が光っていた」などの投稿が相次ぎ、

都市伝説のように拡散されていった。

翌朝。

湯川寺の本堂は、朝の光に包まれていた。障子越しに差し込む柔らかな陽射しが畳の目を照らし、静寂の中にわずかな温もりを与えている。

裕美は一人、畳の上に正座していた。

「……ホノリウス三世の斧が必要。でも、展示場の中。貸してくれるわけないよね」

その呟きは、誰にも届かない。

村田蔵六和尚は朝の勤行に出ており、寺はしんと静まり返っていた。

裕美の耳には、昨夜の事件を告げるSNSのざわめきが残っている。

第二の犠牲者――ラウンジ嬢・竹田雅美。

その死は、あまりにも唐突で、あまりにも理不尽だった。

やがて蔵六和尚が戻り、朝食を用意してくれた。

卵焼きに白いご飯、豆腐のお味噌汁。湯気が立ち上り、ほのかな香りが広がる。

「夜より、こちらの食事のほうがうまいわね。蔵六さんの手作りだしね」

「そうじゃろう」

二人は短い会話を交わしながら、静かな朝を過ごした。

午前中、裕美は西洋中世史展の関係者を訪ね歩いた。

騎士の鎧にまつわる異変を必死に説明するが、誰もまともに取り合わない。

「そんな馬鹿な話があるか」と笑われ、最後には警備員に追い出されてしまった。

展示場の外に立ち尽くす裕美の胸には、重い焦燥が広がっていた。

夕方、寺に戻った裕美は蔵六に告げた。

「今夜、タムチャックスキーと対決します」

「えっ、ホノリウス三世の聖なる斧は手に入ったか?」

「いいえ」裕美は首を振った。

「たむならの剣があるでしょう。それで戦ってみる」

蔵六は眉を寄せる。

「しかし、何処へ行けばタムに逢える?」

裕美は静かに耳元の勾玉に触れた。

「何を言っているのよ。あたしの両耳には、たむならの勾玉がピアスになっているのよ。念じれば、逢いたい霊を呼び出せる」

和尚は深く頷いた。

「例の黒梵衣を着て戦うのじゃ」

黒梵衣――黒の生地に金の梵字が刻み込まれた法衣。

頭と顔は弱点だが、それ以外は霊的な防壁となり、邪霊を寄せ付けない。

裕美は衣を広げ、指先で梵字をなぞった。そこから微かな熱が伝わる。

「今日は半額のケーキがあったよ」和尚がふと笑みを浮かべる。

「いいわね……目がないわ」裕美も口元を緩めた。

だがその笑みの奥には、夜に待ち受ける決戦への覚悟が潜んでいた。

寺の空気は、次第に張り詰めていく。


第四章:たむならの剣と邪悪の剣

深夜、湯川寺の境内を吹き抜ける風は荒れ狂い、木々を唸らせていた。

黒梵衣に身を包んだ裕美は、駐車場を抜けて本堂へと歩を進める。そこでは蔵六和尚が、絶え間なく読経を続けていた。

本堂正面に据えられた「たむならの鏡」。裕美が念じれば、その鏡は彼女の心を映し、いつでも交信を可能にする。

中央に立った裕美は、胸元の勾玉へと意識を集中させた。勾玉は熱を帯び、淡い光を放つ。

その瞬間、闇の奥から姿を現したのは、西洋騎士の鎧をまとったタムチャックスキーだった。

彼は一言も発せず、静かに剣を抜く。

「――たむならの剣」

裕美の声が夜気を裂いた。

たむならの剣と邪悪の剣。二つの刃が交わり、火花を散らす。

裕美にとって、これまでの敵は槍を操る者ばかり。剣と剣の真正面からの斬り合いは、初めての体験だった。

やがて風は弱まり、代わりに冷たい雨が降り始める。

タムチャックスキーは一歩も退かず、怯む気配を見せない。

裕美の足がぬかるみに取られ、身体は制御を失って前のめりに崩れ落ちた。

振り返った刹那、冷たい雨粒が頬を叩きつける。

その瞬間、タムチャックスキーの剣が閃光のように走り、彼女の顔すれすれをかすめて左側の地面へ突き立った。

刃は土を裂き、深々と食い込んで抜ける気配を見せない。

次の動作は容赦なかった。両腕を伸ばし、裕美の首を締め上げる。

息が詰まりかけたその刹那――裕美の首筋に下がるペンダントが、眩い光を放った。

それは、かつて天沼という山師めいた男から手に入れた、ホノリウス三世のペンダント。

「……ううっ」

初めて声を発したタムチャックスキーは、苦悶の表情を浮かべて後退する。

そして雨の帳の中へ、剣とともに姿を消した。

「まさか……このペンダントが役に立つなんて」

裕美は荒い息を整えながら呟いた。

その時、本堂から蔵六和尚が駆け出してきた。

「裕美!心配したぞ。退治できたのか」

「いいえ……むしろ、あたしが退けられるところでした」

「なんと……」

「でも大丈夫。黒梵衣が、あたしを守ってくれたの」

裕美は濡れた衣を払い、蔵六と並んで本堂へと戻る。

その瞳には、決意の光が宿っていた。

「たむならの剣をもってしても勝てぬ相手……。封じ込められるのは、ホノリウス三世の聖なる斧だけね」


第五章 聖なる斧の威力

翌日の深夜。

街は眠りに沈み、展示場のビルだけが冷たい光を放っていた。裕美は聖なる斧を手に入れる算段もないまま、その巨大な建物の前に立ち尽くしていた。夜気は重く、雨上がりの湿り気が肌にまとわりつく。

その背後に、音もなく影が忍び寄る。

振り返るより早く、タムチャックスキーの鎧姿が闇から浮かび上がった。鋼鉄の甲冑が月光を反射し、剣先が冷たく光る。

裕美は口元に不敵な笑みを浮かべた。

「来たわね……タムちゃん」

挑発するように呟くと、彼女はすぐさま警備員室へと駆け寄り、ドアを激しく叩いた。

「誰だ、こんな時間に……うるさいぞ!」

扉を開けて現れたのは、以前にも顔を合わせたあの警備員だった。

しかし、彼が裕美を追い払おうと腕を振り上げた瞬間――背後に鎧の影が立ちはだかる。剣を構え、ゆっくりと歩み寄るその姿は、まさしく亡霊のように現実離れしていた。

「う、うわぁ……助けてくれ!」

警備員は恐怖に駆られ、裕美とともに展示場の中へ逃げ込んだ。

「だから言ったでしょう、タムチャックスキーの亡霊がいるって!」

裕美は必死に警備員を誘導しながら走る。背後では鎧の足音が重く響き、剣が空気を切り裂く音が追いかけてくる。

やがて二人は、聖なる斧が収められている部屋へと辿り着いた。

「警備員さん、ここを開けて!」

「そんなこと言ったって……鍵は警備室にあるんだ。俺は持ってない!」

裕美は瞬時に判断した。このままでは警備員も自分も危ない。

「仕方ない……飛燕回し蹴り!」

叫びとともに右足を振り抜き、展示ボックスのガラスを粉砕した。

鋭い破砕音が夜を裂き、同時に警報がけたたましく鳴り響く。赤い警告灯が室内を染め、緊張は極限に達した。

タムチャックスキーが剣を振り下ろす。

裕美は身を翻してかわし、ガラス片の中から聖なる斧を掴み上げた。見かけに反して、その斧はずしりと重く、腕に食い込むような感覚を与える。

「一緒に!」

裕美は警備員に声をかけ、二人で斧を構える。力を合わせて振り下ろした一撃は、鎧の横腹を直撃した。

「うぉぉぉぉ!」

タムチャックスキーの亡霊が、苦悶の叫びをあげて前のめりに崩れ落ちる。

次の瞬間、邪霊は霧のように消え去り、残されたのは空虚な抜け殻の鎧だけだった。

警報の残響の中、裕美と警備員はしばし立ち尽くす。勝利の実感よりも、ただ生き延びたという安堵が胸を満たしていた。


エピローグ

事件の性質が性質だけに、裕美も警備員も警察署で長い取り調べを受けることになった。

裕美は心の奥で「きっと理解してもらえないだろう」と覚悟していたが、意外にも警備員は彼女と同じ証言を繰り返し、亡霊の存在を訴えた。

結局、二人は保釈されることとなり、破壊された聖なる斧のショーケースも警備会社が弁償することで決着した。

西日暮里のスターバックス。

裕美はノートパソコンを閉じ、事件の顛末を記事にまとめてメールで送信し終えたところだった。

テーブルの上には、湯気を立てるキャラメルマキアート。

「しかし、このマキアートって半額弁当よりも高いのよね。半額弁当に七十五パーセント引き弁当……なんだか、あたしってわからない人ね」

そう呟いて背伸びをし、肩の力を抜く。

「でも、今回は本当に大変だった。このくらいの贅沢は許されるわ」

窓の外には、雲ひとつない日本晴れの空が広がっていた。

霊障事件解決人・伊田裕美の仕事は、まだ始まったばかり。

そしてその道に、終わりという言葉は存在しない。

(完)

本来であれば「カマキリ姫」が巨大なカマキリを操り、人間を苦しめる物語を先に書く予定でした。しかし構想がなかなか形を成さず、筆は思うように進みませんでした。

そこで、先に本作を世に送り出すことにしました。鎧の亡霊と聖なる斧の物語は、私自身の想像力を解き放ち、次なる創作への道を照らしてくれたように思います。未完の構想も、いつか必ず物語として結実させたい――その願いを胸に、筆を置きます。

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