表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/5

新しい生活へ

 好美からあらましを聞きながら、俺たちは近くの村まで辿り着いた。この世界では漢字表記は出来ないからコノミになるのだろうが、俺だけはこの呼び方でいいだろう。

 今の好美は、現実に居た頃に寄せた姿をしている。前髪を額に切りそろえた黒いロングヘアーに黒くて丸っこい瞳、身長も160センチ程度で変わらない。スリーサイズは、何か変わったように見えるが、言及しない方がよさそうだ。

 俺の方は、サージに転生した時に別人の姿になっていた。暗い茶色の短髪に茶色い瞳。身長も180cmはあるし、筋肉も鍛えていたからそれなりにある。スプーンを曲げていなかったら好美にも俺だと判らなかっただろう。

 ユーマの装備や財産は、いつの間にか俺に所有権を移されていたので滞在費は充分にあった。攻略本にルールの穴として暗に示されていたと好美が笑ったが、NPC扱いのパーティーメンバーについてはほぼ言及されてないだろうによく見付けられたものだ。

 もっとも、レベル1の彼女がユーマの装備をしてると怪しまれるので、今はスタート時の皮の鎧と短剣しか装備していない。俺だけ高レベルの装備をすると目立つので、俺も装備を外してアンダーウェアだけになっていた。ユーマが使っていた何でも沢山入るマジックバッグが俺の物になってたのは有難い。

 スプーンのコレクションをこれに入れないで肌身離さず持っていたのは、好美のこだわりなのだろう。流石に今の彼女の体力ではマジックバッグにしまっているが。


 村の宿屋についたら、好美はいきなり2人部屋をとってしまった。ユーマの時の習慣でついやってしまったらしく、カギを受け取って階段を上ろうとしたときにハッとした顔で俺の方を振り返った。

「今から部屋を取り直そうか」

 そう提案したら、好美は首を横に振った。

「一緒の部屋でいいわよ」

 照れくさそうに、好美は笑った。


 二人部屋には、勿論ベッドは2台あった。そういえばユーマだった時も、着替え等では妙に態度がよそよそしかったような気がする。正体は女の子だったのだから、それは当然だろう。

 部屋の両端にあるベッドの間に設けられたテーブルに着席して、俺は好美からさっきの話の続きを聞いた。

「それじゃあ、好美はもう現実には戻れないっていうのか?」

「ええ、キャラメイクにタイミングを合わせてこの世界に飛び込んだ時に、身体は消滅したわ。力もその時に失ったから、もうつなげられないし」

「なんて無茶なことを……」

 俺が残された好美の家族の心配をしていると、彼女はテーブルから立ち上がって俺の手を取った。

「それでも、佐治君にまた会いたかったんだもの」

 俺の手を握って、好美は笑った。

 そこまで彼女に思われていたのには、俺も悪い気はしなかった。

「俺も、また好美に会えて嬉しいよ」

「好きよ、佐治君」

 晩飯の時間までの間、俺たちは互いを見つめ合った。


 ベッドは2台あるので、今夜は勿論別々に寝ることにした。、

 寝る前に、明日はどっちに行くのか好美に聞いてみた。

「実はね、住む所も決めてあるんだ」

 本当かよ。まあ、勇者は大物モンスターを倒すたびに結構な収入があったから、家くらいは買える蓄えはあるし。

「大魔王も倒されて、魔物は弱体化したわ。地方の村で、細々とモンスター退治をやって暮らしましょ」

 この提案には、俺も賛成だ。レベル1になっても好美は勇者だから結構強いし、勇者専用装備も使えるから心配する事はない。

 俺のスプーン曲げは、何の役にもたたないのは認めるしかないし。

 明日は好美についていこう。


     ◇


  まだ日も出ないうちに村を出て山に分け入った俺たちは、夕方には中腹にある開けた場所に出た。旅人や行商人がよく使っているらしく、野営の痕跡が所々にあった。好美はどうやら、ユーマだった頃にここに来たみたいだった。

「明日には、目的の村に着くわ。今日はここで休みましょう」

 勿論、俺たちは野営も何度もやっていた。テントだって短時間で用意できる。1人用の大きさだけど、どうせ見張りを立てるから一緒に寝ることはない。

 そういえば、交代で見張りをしていた事もあって疑問に思わなかったが、俺たちは1つのテントで一緒に寝たことはなかったな。


 交代で数時間ずつ睡眠をとったら、テントを片付けて出発した。昼近くに山頂に辿り着くと、目的地の小さい村がゆるやかな下り坂の先に見えた。前の村よりもさらに小さく、住居が10軒あるかないかといった所だ。

 好美は俺を置いて、この村で唯一の二階建ての家に入ると、10分くらい話し込んでから出てきた。

「村はずれにある家は、私がユーマだった時に用意した家よ」

 こうして、俺たちは2人で暮らす場所を手に入れたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ