俺は超能力者
公園のベンチに座っていた俺は、右手に握ったスプーンを凝視した。
「曲がれ!」
左手をスプーンにかざすと、銀色のスプーンは首を傾げたように曲がった。
俺の隣に座っていた少女が、手をパチパチと鳴らした。
「わあい、やっぱり佐治君ってすごーい!」
感心しながら、少女は俺からスプーンを受け取った。このスプーンは、元々彼女の物だ。
俺の名は金野佐治。ありふれた町に住んでいるありふれた高校1年生だ。
ただ一つ、超能力者だということをのぞけばな。
俺の超能力は、スプーン曲げだ。
「このスプーンは、記念にに取っておくね」
「いや、これで何本目だよ」
俺に突っ込まれながらスプーンを学生カバンにしまっている少女は、クラスメートの芝原好美。長い黒髪が、若草色のブレザーとマッチしてる美少女だ。
入学直後の自己紹介でスプーン曲げを披露した直後はクラスメートたちも注目してくれたが、彼女を除いて皆すぐに興味を失ってしまった。何しろ本当にスプーンを曲げることしか出来ないので仕方がない。中学の時から判ってたことだ。
むしろ、ここまでスプーン曲げを楽しんでくれる好美の方が珍しい。
中間試験が終わる今日までスプーン曲げを見たいのをずっと我慢していた好美に、俺は久しぶりに特技を披露していたのだ。
空を見上げると、鉛色の空がうなり声をあげていた。朝見た天気予報通り、もうすぐ雷雨になるのだろう。
「そろそろ帰ろうか」
「うん、そうだね」
名残り惜しそうだった好美が立ち上がろうとした時、パラパラとついに雨が降り出した。俺たちはベンチに立てかけていた傘を急いで広げた。
「きゃっ」
好美の水色の傘はバネが強かったのか、勢いをつけて開いた。新品の傘のようだし、好美は初めて開いたのだろう。ビックリした拍子に傘を手放してしまった。
風のいたずらで、傘は遊歩道を転がって行った。
「これを持ってて」
黒い傘を好美に渡すと、俺は水色の傘を追いかけた。ほんの数メートル先で縁石に引っかかっていた傘を拾うと、俺は好美に向かって傘を掲げた。
ドッコーーーンッ!!
雷撃が、俺の体を直撃した。




