表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/9

【家族 味】涙

 今日日、忘れられないことがある。

 それは私が小学3年生の時だった。

 私は母、父、弟、祖父母と暮らしていた。


 狭い二階建ての家はぎゅうぎゅうだった。


 私が物心がつく頃、やっと気付いた。

 お母さんは祖父からいじめられていた。


 作ったご飯がまずい。

 息子に見合った嫁じゃない。

 お母さんが買い物へ行こうとすると浮気を疑われ、ついてくることもあったらしい。


 私はその事をおかしいと思ってなかった。だって、おじいちゃんはたまにいじわるだけど、私には優しい時もあったから。

 それに、私はお母さんがどれほど傷ついているのか汲み取れるほどの成熟した精神を持ち合わせてなかったから。


 私が小学3年生になって祖父が亡くなった。私たち全員が悲しみのあまり涙を流した。

 葬儀も無事終わり、やっと落ち着いた頃、お母さんと弟と3人になることがあった。

 父は仕事、祖母は友達に会いにいった。祖母が出かけるのを3人にで見送る。


 玄関の扉が閉まり、車の音が遠く聞こえなくなるまでお母さんは玄関に立ち尽くしていた。

 いつまでも立ち尽くすお母さんに弟が声をかける。

 「おかあさん?」

 その言葉と同時にお母さんは膝から崩れ落ちた。

 そして私たちを抱きしめる。


 大粒の涙を流すお母さんに私も心配になって尋ねる。

 「どうしたの?」


 お母さんは声にならない声をあげる。


 「よかった、、やっと、やっと、、、」





 今になってお母さんの涙の訳が分かった。

 今、お母さんは離婚し、一人暮らしをしている。


 私は少し安心している。


 もうお母さんはあんな涙を流す必要はないから。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ