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七十二.判ってると思ってるよダイジェスト

 さて、突然ですが!


 ここからはダイジェストでお届けいたします。


 だってえ。

 そんなに強い魔族いなかったんだもん。

 二十人くらい倒したけどさ、大体が瞬殺だったよう。


 あ、瞬殺とは言っても殺してないよ?

 一人目のニューチャレンジャーを「狸隠神流(たぬきいぬがみりゅう)忍術 縛糸陣(ばくしじん)」で捕らえたから、とりあえず首刈っとこうかと思って、相手の持ってた剣を振り上げたら、ユーリさんに止められちゃった。てへ。


 殺すなはわかったけど。

 でもこの状態じゃあまた復活して襲ってくるよ? キリがないよ?

 とユーリさんに聞くと。

 どうやらこの魔王決定戦に限らず、魔族の勝負というのは、明らかに勝敗のついた状態になった場合には、双方ともにそれがわかるらしい。

 これが不文律で暗黙の文化的なものらしく。


 生と死が決着だった忍者狸にはとんとわからない。


 例えば、今の状況。

 完全に体の自由を奪われて動けなくなった状態で相手は無傷。

 つまりは生殺与奪の権利が他人に握られている状態。これは勝敗がついているという事になるらしい。


 他にも色々あるけれど。

 僕にはまったくわからないからユーリさんに判断を任せる事にした。

 勝負がついたら止めてね。止まれなかったらごめんね。


 そんな説明を受けている最中も、次々に襲い掛かってくるニューチャレンジャーたち。


 ヘイ! 順番に紹介するぜえ!


 デデデデー。


 六腕魔族のダイアゴンさんが現れた!


「そこな狸! 強いらしいな! 我が六道の拳を受けてみるがよい!」

 なんかかっこいいこと言いながら現れたこの魔族。

 筋骨隆々でっかくて、その体から腕が六本生えていて、頭はつるりと禿げていた。

 身体強化と種族スキルの六道拳ってのを使うらしい。


「狸にはこの拳だ! 喜んで喰らうが良い! 畜生拳!」

 ガハハと笑いながら僕の体ほどもありそうな拳を繰り出した。

 僕は眼前に迫るでっかくてゴツゴツした拳をどうしようかなあと考えて。


 悩んだ挙句。


 根本から切り落とす事にした。


 小さな狸の僕の体ごと押しつぶさんと放たれた拳は、僕に届く前に地面にゴトリと落ちた。


 傷口から一瞬血が噴き出したが、切られたとすぐに判断したダイアゴンさんは、すぐに筋肉のコントロールで止血し、すぐさま残された腕でラッシュは放ってきた。

 おお、なかなか判断が早い。


 僕はぴょこんと飛んで距離をとった。


「ぬう! 噂に違わぬその強さ! だがまだ我には五本の腕がある! 出し惜しみなしだ! 天地人魔拳!」

 ここでさらに身体強化を強めたのか、体の色が赤黒く変色し、その残る五本の腕のうち四本の腕からくり出される連続した攻撃を僕は華麗に避けていく。


 避けると。

 同時に。

 一本一本、極めて丁寧に、切って落としていく。


 ゴトリ。

 ゴトリ。

 ゴトリ。

 ゴトリ。


 硬質な音が地面を四度鳴らした所で。

 ダイアゴンさんは動きを止めた。


「我の負けだ」


 落ちた五本の腕の真ん中に、ドスンと座り込んでそう言った。


「一本残ってるけどもう終わり?」


 僕がそう問えば。


「これは餓鬼の拳。相手に飢えを与える拳、邪道であるからして正道であるこの戦いには用いる事はない!」

「そっか、切っちゃったけど、腕、大丈夫?」

 腕は大事だよ? こっちが切っといて言うのもなんだから言わないけど。

「問題ない! そのうち生えてくるじゃろう! ガハハ!」

「あ、う、うん」

 腕、生えてくるんだ。

 ……魔族こわあ。


 って感想と一緒に無事に勝利した。


 次。


 デデデデー。


 吸血魔族のノスフェラさんが現れた。


「狸の血はまずいらしいから、あんまり戦いたくないんだけどね」

 青白い顔で黒髪を描き上げながらそう言って現れたこの魔族。

 おおむね僕が知ってる吸血鬼の特徴を持っていた。

 空を飛べる。コウモリに変身できる。血煙になって逃げられる。血を吸って眷属にできる。

 あ、それに加えて血を操れるらしい。


「ここに来るまでに大量の魔族に出血させたのは悪手でしたね」

 フフフ、と笑いながらまるで指揮者のように腕を振る。

 その指揮に従うようにして、今までザクザクと切り落としてきた魔族たちの傷口から流れ出た血液が、僕に刃となって襲い掛かってきた。


 ぎゃあ、ホラー!

 ばっちい。触りたくない! なので僕は軽々とそれを避ける事にした。


 コロコロもふもふと避けながら、どうしよっかなあなんて考えていると。


 さっきまで空に浮いていたノスフェラさんがいない。


 あれえ? いないぞー? みたいな顔をしてあげると。


 嬉しそうに僕の背後から血煙になったノスフェラさんがまとわりついてきた。


 お、キタキタ。


 どうやら僕の背後に回り込み、頭だけ実体化して、僕の血を吸い、眷属化を狙っているようだけど。

 残念。

 僕の背中には腕があるってね。さっきダイアゴンさんからゲットした腕でノスフェラさんの顔を掴み、握りつぶした。しかしノスフェラさんはすんでの所で実体化をとき、血煙となって宙へと逃げていった。


 あらま。


「ふむ、噂通り、強いらしい。ここは一旦逃げて、弱った所を襲わせていただく」

 空から声がする。

 どうやら血煙となって逃げてチャンスを狙うとの事。


「そうはいかないよう、狸隠神流(たぬきいぬがみりゅう)忍術 怪奇氷纏(かいきひょうてん)


 これは氷魔法を改良した忍術。

 元々は周囲の空気を冷やしてターゲットに違和感や恐怖感を与えるのが目的なんだけどね。

 ちょっと応用。

 相手が気体になって逃げるならその気体の温度を一気に下げて液体にしてやればいいでしょう?

 ってね。


 案の定一気に冷やされた空気の中、ノスフェラさんの血煙は徐々に気体に止まれなくなり、ぽたりぽたりと血に変わり、その血は溜まってどろりとした水たまりを形成、その水たまりも冷えた空気にカチカチと音を立てて凝固した。


 これはー? 死んだ? 大丈夫?

 振り返ってユーリさんに確認すると、どうやら死んでいないらしい。

 さすが吸血鬼!

 ちゃんと不死性もあるのねえ。氷の水たまりにチュウするのちょっとやだった。


 という事で、次!


 は、次のお話で。



お読み頂き、誠に有難う御座います。

少しでも楽しかった! 続きが楽しみだ! などと思って頂けましたら。

何卒、ブクマとページ下部にあります★の評価をお願いいたします。

それがモチベになり、執筆の糧となります。

皆さんの反応が欲しくて書いているので、感想、レビューなども頂けると爆上がりします。

お手数お掛けしますが、是非とも応援の程、宜しくお願いいたします。

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