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七十一.残念なチャレンジャー

 その説明を聞いた後。


 今度は僕が呆れ顔をする番だった。


 曰く。

 魔王決定戦は既に始まっているとの事。

 というか中央都市ワイズに僕らが到着した時には既に始まっていたらしい。


 そもそも魔王決定戦とはこの中央都市ワイズを舞台に行われる魔王候補者のバトルロイヤルで、街中を歩いていて目があったらバトルが始まるんだって。

 なにその半パン小僧が現れそうな○ケモンワールドみたいなシステム。


 ちなみに僕が到着した時に、中央広場に集まっていたのも魔王決定戦の参加者。

 魔王決定戦開始直後にお互いの様子見をしていた所へと、いきなり鳳が飛来したもんだから、てっきり魔王決定戦を妨害しに来たのかと思われたらしい。

 そこで運営委員会に連絡、総出で妨害勢力の討伐で前哨戦や! 盛り上がるでえ! ってなった所。


 残念、全滅。


 犯人は逃亡からの指名手配からの自首からの釈放。


 で、今に至ると。


「ほー、魔王候補、弱くない?」

 ちょっと肩透かしだよう?

 強いスキルがもらえるんじゃないの? と不満げにむふんとしているうちに。


 気づけばいつの間にか、何だか普通より一層厳重なセキュリティゲートへとたどり着いた。


 地上階が事務棟とは言っても、そこは牢獄、セキュリティは厳重で、今までも何箇所かゲートを越えてきていたのだが、ここはちょっと違う感じがする。


 それもそのはず、ユーリさんに問えば、ここがどうやら最終ゲートらしい。

 つまりは最後の砦。

 そのせいなのか、複数人に囲まれて、さらに厳重なチェックを受けるらしい。


 つまりは長いのだ。


 そんな長々なチェックを受けながら、僕の魔王候補に対しての感想にユーリさんが答える。


「そうねえ、魔王候補が弱いってよりも、狸さんが強すぎるとあたしは思ってるわよ?」

 えー? なにそれーてれるー。

「でもお世辞でしょ?」

 もーおべっかとかいらないよう。

 とか言いながらも褒められると狸てれてれしちゃう。


「違うわ、本音よ。だって今回使った夢魔法なんて、あんな広範囲かつ無差別に使える魔法じゃないのよ」

 あれ? 褒めてるよね? 若干引き気味に言われてる気もするんだけど?

 ちゃんと褒めて? 狸は褒められて伸びる生き物だから。

 のびーん。

「ふーん、そうなのう? すっごい強いし使いやすいから、腕試しの時にサイロスさんが使わなかったの不思議だったんだよねえ。本人曰く使えないって言うんだけどさあ」

「使えないってのは、確かにサイロスの言う通りよ。あれって他者の夢を操るような魔法なんだけど、対象は単体だし、その対象と接触してなきゃ入り込めないし、入り込むには対象の心の許可が必要なの」

「え? めんどくさ、使えなあ」

 確かにユーリさんのいう通りの魔法であれば使えないなあ。前世でいうところのドラキュラがターゲットの許可なしに窓から入って来れないってのと同じって事でしょう?


 あれ? でも、僕にはそんな手順いらなかったよ?


「そう、使えないのよ。夢魔族ならみんな夢魔法は持ってるし、それに対して耐性もあるから、結果、使えない魔法という認識なワケ。手順不要なのは……狸さんだからかな?」

 ユーリさんは諦めたように首を軽く振った。

 ええ!? 理由が僕だからってのは解せないよう。


「ふーん。でもさ、極論、魔法ってイメージ力の問題でしょ? イメージすれば何とでもならない?」

「ま、そうねぇ。そういう建て前ではあるけれど、でも、普通はできないのよ。イメージってのは固定されるから。自分の中で固まってしまったイメージを壊すっていうのはとても大変。それができるってのは、イコール強いって事なの。あたしはそれが狸さんの強みだと思ってるのよ」

 うひ。

 褒められた。伸びちゃう。


「そ、そっかあ。そういうものなのかなあ?」

 褒められたのは嬉しいけど、言ってる事はよくわかんないなあ。

 忍術も魔法もイメージが一番肝要でまずはそこを伸ばすべきなんだけどなあ。

 何事も破壊と創造はセットなんだよねえ。


 と、思案している間もセキュリティのチェックは滞りなく進み、時間がかかりながらも出所して問題なしと判断された。キンヒメのボディチェックをしていた女性魔族がなんだかヘロヘロとしているのはおそらく快楽堕ちだろう。


 うん、仕方ない。


 そんな具合に僕らはワイズ中央監獄を正式に出たわけである。


 それを祝福するようにキンヒメが、まだ思案顔の僕に軽く抱きついてきて言う。


「リントは凄くて強くて特別なんですよ。私はそれをずっと知ってます」

 鼻チュウ。


 もーすきい。

 誰に褒められるよりもキンヒメに誉められるのが一番嬉しい。

 あたまばかになって細かい事はどうでも良くなっちゃう。


「キンヒメも僕の特別だよう」

 なんて惚気て抱きついて、鼻チュウしている所へ。


 パンっとユーリさんは手を鳴らした。


 うへ!


 その音に、キンヒメのチュウにトロトロヘロヘロだった僕の意識が叩き起こされる。

 くそう、嫉妬だな。キンヒメは僕の妻だぞ。

 見るとユーリさんがニンマリと笑っている。何だか魅了を振り撒いている普段の笑顔よりも素朴でいい感じだ。


「ま、というわけで、今回の一件で、魔王決定戦の参加者は大幅に削られて、優勝に一歩近づいたんだし、有罪だとか無罪だとか死罪だとかは一旦忘れて、気持ちを切り替え、魔王決定戦で優勝しましょう」


 僕らを鼓舞する言葉に賛同する。

 死罪という言葉は聞かなかった事にするう。


「はーい」


 前脚を天高く掲げて誓う。


 真なる無罪を勝ち取るぞう!


「そうね、勝ち取りましょう」

「「おー!!」」

「ほら、そう言っている間に、早速お客さんが来たみたいよ?」


 そういって獲物を見つけたサキュバスの魅惑的な笑顔と一緒に。


 ネクストチャレンジャーたちの到来を告げるのだった。



お読み頂き、誠に有難う御座います。

少しでも楽しかった! 続きが楽しみだ! などと思って頂けましたら。

何卒、ブクマとページ下部にあります★の評価をお願いいたします。

それがモチベになり、執筆の糧となります。

皆さんの反応が欲しくて書いているので、感想、レビューなども頂けると爆上がりします。

お手数お掛けしますが、是非とも応援の程、宜しくお願いいたします。

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