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六十七.神農流忍法異世界で乱用

 黒く。


 だだっ広い。


 実験器具が整然と並ぶ研究机と、大仰な手術台と、簡素な寝台があるそんな部屋。


 ここが俺の新しいラボだ。


「いいね、俺好みだ」


 そんな充足した気持ちで部屋を眺めていると。


 そんな幸福を破って丸めて踏みつけるような声が扉の外から響く。


「マーティン様! 出ていらして下さい! お父上が大変お怒りです!」

 家令だ。


「うるせえ!」

 俺は扉の外でわめく声を一喝した。


 なんだってんだ。俺は忙しい。お父上? 知らねえ! あんな馬鹿なオヤジに構ってる時間はねえ。


 そもそもありゃなんだよ。こっちに来て早々、前を横切っただけでいきなりキレ散らかしてきたオヤジ。あれがこの身体、マーティンの父親、エイドルらしい。うるせえから一発ぶん殴って気絶させてやった。


 繰り返す、俺にはあんなの構ってる暇はない。


 早いとこ、現世への扉を開いて向こうの俺と協力しながらこの世界を征服しなきゃならんのだ。

 幸いと、乗っ取ったこの身体の持ち主は侯爵家の人間だ。金と時間と労働力は使いたい放題。これは異世界侵略がスムーズに進むぜえなんて思ってる矢先に、金を使っていると、エイドルとかいうオヤジがまたギャアギャアと喚きだした。


 だからまたぶん殴ってやった。あの段階では気絶していたから、今はそれから目覚めたらしい。

 めんどくせえな。


 あー、そうだな。


 ラボの設立だとか、優先的にやらなきゃいかん事はそろそろ終わったから、次はとりあえずうるせえあいつらの脳みそを弄って俺の言う事はなんでも聞くようにしとくかなあ。


 よし、決めた。


 とりあえず、いま扉の外でギャアギャアわめいてる家令を手始めに改造してみるか。


 そう思い立って俺は扉を開けた。


 まさか開くとは思ってなかった扉が開いて、家令はいったん驚いた顔したが、すぐにその表情を戻した。


「マーティン様、家の予算をこれ以上使うのはおやめ下さい! エイドル様の血管が切れてしまいます! さすがにこれ以上は私でも抑える事はむずかッ!」

 俺に向かって、無礼にも声を荒げる家令を部屋に引きずり込んだ。


 黒く広く不気味に広がる、その室内を見て、家令は言葉の続きを失った。


 大丈夫だ。

 すぐにこれも受け入れられるし、すぐに俺の言う事に、はいしか言えないようにしてやるからよ。


 言葉を失っている家令の手をひき、部屋の中央に据えた拘束具付きの手術台まで連れて行くと、そこへと乱暴に家令を叩きつけた。


「ガハッ! ま、マーティンさ、」ま。何をなさるんですか!? それにこの部屋! 広すぎる! 一体どうなってるのですか!?

 とでも言っているのだろうか? 猿ぐつわの下でモゴモゴと動いている口は。


 この手術台は俺が作った特別性だからよ。

 手術台に人が乗ると同時に、自動で手足を拘束し、舌を噛まないように口を塞ぎ、頭を動かせないように固定する。全自動人間改造手術台だ。すげえだろ? グダグダと喋る暇なんて与えねえよ。


 家令はまだモゴモゴと口を動かしている。

 混乱しているようで目がキョロキョロとあちらこちらへと揺れ動く。

 ま、この様を見ているのは愉快だが、これの状態で手術をするのは少し危ないか。

 家令が死ぬのは構わんが、研究者として実験の失敗はあまり受け入れたくない。あの徒労感は好きじゃない。


「ふん、未開人にはこの状況がなんだか、わからんだろうな」

 未開人と呼ばれた理由はわからないが、状況が分からないのは間違いないらしい家令の頭が小さく動く。

 固定されているから首肯もできない。

 少しでも頭が動くのは良くないな。手動で固定を強めると、豚が鳴くような声で家令がうめいた。

 いい声だ。


 その声の褒美に、仕方ない、説明しといてやろう。


「この部屋が不思議か? 不思議だろうな。ここはな、俺の空間忍法で拡張した部屋だ。俺が使うには部屋が狭かったからな。ん? なんだその目、わかんねえって? そうだろうな。ま、お前にもじきに理解できるようになるさ、脳に直接わからせてやるからな」


 喜べ。


 そう言って俺はニンマリと笑った。


 さ、これで言葉は終わりだ。


 俺は無言で、開頭用のノコギリと、脳機能の拡張パックを虚空から取り出した。


 これも空間忍法の応用だ。

 神農流忍法、空間背嚢(ディメンションバッグ)と名づけた。


 空間背嚢が魂と直接結びついていたのはラッキーだったな。現世の頃に収納しておいた忍具が取り出したい放題だ。おかげでラボの創設もスムーズだったしな。俺の空間忍法は万能だ。これのおかげでこの世界への道も作る事ができたし、哲人を厄介払いもできた。あいつに関してはゴキブリ並みにしぶといからトドメを刺しにここまでくる羽目になったが、これも異世界の侵略ができると考えればプラスだな。


 それほどに魔法を忍法に取り込めるのはでかい。

 おかげでこの手術も簡単にやれるぜ。


 よう、家令、感謝しろよ?

 ちゃんと勝ち馬に乗せてやるんだからよ。


 さあ、喜びの歌をしっかりと叫べよ?


 俺は手に持ったノコギリを家令のおでこの皺に沿って当てるのだった。



ここまでお読みいただきありがとうございます!

評価やブクマ凄く嬉しいです!


ぎゃあ!書き溜めが尽きた!

ということで、魔王決定戦編は数日してから投稿致します。


まだ読んでやってもいいよ!

という優しい読者様は、ブクマしてお待ちいただけると、作者がとてもやる気になります!評価なんていただけたら飛んで喜びます!


お手数ですが、何卒よろしくお願い致しますm(_ _)m

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