百十三.ほら言ったじゃん!最強はおばちゃん!
「はあ、お嬢さん、提案があるんだが聞いてくれるか?」
欄人は実にめんどくさそうにキンヒメに向かって交渉を始めようとする。
いや、お前は負け犬だぞう。なにを完全敗北したやつがぐだぐだと言ってるんだよう。さっさと尻尾を丸めて帰りなさい! しかも絶対に何か企んでそうだしなあ。ああ、やだやだあ。
「何ですか?」
ちゃんと聞いてあげるキンヒメかわいい。
嫌そうな顔で若干ほっぺが膨らんでるのがなおかわいい。好きい。ほっぺに鼻チュウしちゃおう。
あ、お礼にお腹モフられた。
「哲人「リントです!」……ふむ……リント、も封じられ、灰司もやられ、大半の忍者もリントに殺された。言いたくはないが、我らの敗色が濃厚だ」
あら、珍しいしつこくて陰湿で有名な欄人がしっかりと負けを認めた。
嘘くせえ。
「そうですね。早くお引き取りください。後始末がありますので」
そうだぞう。
負けを悟ったらさっさと帰るもんだぞ。狸なら絶対にすぐ逃げてるからなあ。
かえれかえれえ。
「はあ、そちら側がそういいたくなるのもわかるがな、我らもただただ負けて帰る訳にはいかないんだよ」
「……なにが言いたいのですか?」
「いやあ、な。はあ、なに、俺が言いたいのはシンプルな話だよ。そう、シンプルだ。こちら側のスタンスを、侵略から交易に切り替えさせてくれと、そういう話だ」
は?
って顔してるキンヒメかわいい。鼻チュウしたろ。隙あらばチュウしたろ。あん、しっぽの付け根を揉まないで。いやあ変になるう。わかったあわかったよう、ふざけないからああ。
「そんな話が通るとでも?」
僕の尻を揉みながらもキンヒメは真面目な顔で欄人に相対している。
「はあ、通してもらわないとな、困るんだよ。我らもここに来るのにだいぶコストをかけている。このままただ逃げれば大損害だ。そうなれば経理のおばちゃんにドヤされてしまう。最後までこの侵略プロジェクトに反対していたからな。それ見たことかと言われて、来年の経費はマイナスにされてしまうんだ。そこで、だ。こちらの世界の特殊素材などを我らの世界に輸入したい。ついてはこの国を我らがもらって、ここを交易窓口としてこの世界の生き残りと取引がしたいんだが」
ほええ、なんと馬鹿な事を臆面も無く言えるものだろうか? 侵略に失敗したから交易させろ? しかもこの国丸ごと俺らのもんな? って負けた奴のいう事じゃないよ? 戦う前に世界を半分やろうといった竜王の方がまだかわいいと思うよ。というかお前もおばちゃん怖かったんかい。おばちゃんすごう。おばちゃん来てたら負けてるんじゃなあい?
そんな欄人の言葉に、キンヒメの顔は怒りを通り越して呆れを超越してから無になってそこから一周回って嫌な顔だ。一見普通に嫌がってる顔だが違う。僕にはわかる。普通に嫌がってる顔だったらもっとかわいい。
「お断りします」
ふふう、さすがキンヒメ、キッパリと断るう。大好きい。首筋の匂いスンスンしとこう。ああ、いい匂い。
「はあ、じゃあ、仕方がないな。俺は逃げるよ。その前にこの世界に出来る限りの破壊をもたらしてからな!」
ヒステリックな叫びと同時に、空間に亀裂が入り、欄人はそこへと姿を消した。
「ああ!」
キンヒメが逃げる欄人を追うような仕草を見せたけれど。
僕はそんなキンヒメの顔の前に鼻先を突き出し、追いかけようとするキンヒメを表情だけで止めた。
なんで? そうキンヒメの表情がいう。かわいい。
「大丈夫だよう、ちょっと待っててえ」
僕はドヤ狸顔でニンマリと微笑んだ。
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