九話 サイズは修業したそうです
九話 サイズは修業したそうです
黒星はサイズに銃を貸し与えた。初心者に渡すので、少し不安そうだったらしい。だがサイズはそれに気付かず、ワクワクしていたそうだ。
的はすでに飲んである酒の缶を、専用のゴミ箱から引っ張り出してきたらしい。それを床に置いた。
「良いか。まず覚えるのは射程距離だ。そこより外はどうあがいても無駄だ。無駄な弾を撃つたびに死に近付いていると考えろ」
「うん」
「返事は『はい』だ」
「はい」
黒星は満足そうに頷き、サイズを缶の近くまで誘導した。大体、的から二十歩くらい(スミス姉妹の見立て)の位置だ。
「これくらいだろう。まずはこれを覚えろ。方法は問わん」
サイズは考え、まず今立っている位置に印を付けた。要が見てみると確かに小さな傷がある。
そしてスマホを出して缶まで歩く。
「なるほど」
サイズは頷き、スマホをいじる。それを他の方角にも試して、円の傷を作り出していた。
そして黒星が言った。
「じゃあ、ライトハンド、レフトハンド。適当に散らばれ。サイズは射程距離に二人が入ったら銃を構えろ。撃つなよ」
「はい」
始めてみるとスミス姉妹は射程距離の範囲外に立ち、一向に円に入ってこない。
「やる気あんのか!」
黒星に怒られたが、スミス姉妹はただでは言う事を聞いてくれなかった。
「せめて弾を抜いてくれよ」
「僕等はまだ死にたくない」
黒星はサイズの持っている銃と弾を抜いたところを見せたもう一つの銃と交換した。
「じゃあ、始めるよ」
「僕等を捉えられるかな」
二人はノリノリで的の役を演じてくれた。最初はゆっくり。そしてどんどん速く移動する。
サイズも面白がってロックオン率を上げていく。スミス姉妹は楽しそうにしていたが、銃口が向けられるとビクッとしてしまった。
しばらく続けてから、黒星は弾の入ったほうの銃を差し出して言った。
「今度は射撃だ。まずは止まった的だ」
「え? 動いているやつじゃないの?」
そう言いながらスミス姉妹を見る。恐ろしい小人だ。
「動く的は上級者がやる事だ。素人は缶だ。黙って撃て」
「うん。あ、はい」
サイズは黒星と銃を交換した。
「弾は六発。それで終わりだ。外したらそれまでだ。お前は殺されてしまう。だがすぐに撃たないとやっぱりお前は殺されてしまう。射程距離に入ったらすぐに狙いをつけて撃て」
サイズは片手で持って半身になって、撃とうとする。
「まだ早い!」
黒星に叱られ、両手持ちで撃つように指導された。
しぶしぶ両手で撃つ。撃った時の反動がすごくてあらぬ方向に弾が行ったらしい。
要が部屋を見回すと、壁に小さくて深い穴があいせいた。穴は一つではなかった。