八話 クモが出たようです
八話 クモが出たようです
スミス姉妹はサイズを守るどころか彼女を前面に押し出した。身長三センチくらいの二人では勝てないのは分かっている。でも子供を盾にするのは違う気がする。
「ちょっとお姉ちゃん達!」
サイズが抗議の声を上げるが、無視された。
「まあまあ」
「僕等に暴力を期待しないで」
二人はサイズの背後を取り、送り出しをする。
「嫌だー! 助けて!」
サイズは暴れた。
クモは大きな音にビビったようだが、近付いてくる。
三人は死を覚悟したと言う。
「何を騒いでん……クモか」
洗い場を片付けた黒星はみなのピンチに気付いた。そして腰から銃を抜くと素早く撃った。クモは腹に大穴を開けて仰向けになり、もがいている。
あまりにあっさりと倒したので、サイズは目を輝かせていたそうだ。
「すごい! 料理できるだけじゃないんだね」
サイズが感激したのを聞きおよび、要はアックスとの対応の差を感じていた。顔で言ったらアックスのほうが良いと思うのに黒星がもてはやされるのはなんでだろう。
「小人族はみんな武器を扱える。そいつ等はサボっているだけだ」
「ひどいなぁ」
「僕等がメンテナンスするから、クモが倒せたんだよ」
自分達をアピールしているが、サイズを差し出して助かろうとしたのだ
黒星が睨みつけると、下手な口笛を吹いて顔をそらしていた。
「ねえ、私も武器が使えるかな?」
「使う事は出来る。問題はそれを使う場所をわきまえなくてはならない。引き金を引けば、そこのピクシー族を殺せるからな。自分を律する事が必要なわけだ」
「私もホーリエ・ヴィスコンティーみたいに二丁拳銃が良い」
サイズにはまだ見た目のカッコ良さのほうが重要なのだ。
「ホーリエ?」
「ゲームキャラだよ」
「これさ」
スミス姉妹から黒星に画像が渡った。ホーリエ・ヴィスコンティーは西部劇風の衣装だが、露出が激しくサイズにはまだ早い。
「無駄にヘソ出してるが、これになりたいのか?」
「うん」
「アックスが喜びそうだな」
その感想にサイズはげんなりしている。
黒星はサイズの頭に手を置いた。
「だが二丁拳銃を扱えるようにする前にやる事がある」
「はえ?」
「一つの銃で的に当てる事だ」
「う、うん」
サイズは黒星の指導を受ける事になった。