五話 帰ると静かになってました
五話 帰ると静かになってました
なんとオムライスを仕上げて、要は身支度を始めた。早く起こされたが、時計を見るといつもの出社時間。そろそろ出なくてはならない。問題は鍵だ。小人達なら鍵をかけても出入り自由みたいだけれど、能達人間には無理だ。かといつて開けっ放しにすると要は不安で仕事が手につかなくなるだろう。
結果鍵は黒星に預け、能達のために開けてもらう事にした。その後能達に予定がなければ家に居座ってもらう感じで。
この提案をみな了承してくれた。
これで仕事に集中出来る。
「頼んだよ」
「任せておくれよ」
「居候から家事手伝い位までランクアップするように仕込むからさ」
二人は悪そうに笑った。
要に不安がよぎる。でも出社しなければならない。
「頼むね」
要は外に出ると鍵をかけて、スペアキーをドアに備え付けたポストに入れた。エスパーダはいつも鍵をかけても外に出ているから気にしていなかった。
能にはサイズを黒星達に預けてあることも伝えてある。要に出来ることは会社で仕事をする事だけだ。
仕事をやり終え、帰ってきた。玄関に鍵がかかっていて静かだった。どうやら能達は帰ってしまったようだ。
「ただいま」
部屋の中に入ると、エスパーダがいてゲームをしていた。
「あ、おかえり」
その後の会話が続かない。決して倦怠期ではないと思いたい。でも朝がバタバタしすぎて、今の状態との落差に慣れていなかったのだ。
「静かだね」
「うん。なんか変な感じ」
それ以上会話が続かない。要は焦った。
「お昼どうだった?」
「お昼? ああ、オムライスね。おいしかったよ」
それだけで終わった。
「それだけ?」
「黒星の作ったやつだから。まあおいしいけどね」
何やら気を遣っているようだ。要と黒星、どっちも悪く言いたくないのだろう。
「あれ、俺が指示してたんだ。師匠は中華しか作れないし」
「そうだったんだ。なんでオムライス? とは思ってたのよね」
「いきなり弁当を作れって言われて困ってたよ。俺が言わなきゃ唐揚げと炒飯だったんだから」
「オムライスもどうかと思う。おかずがなくて同僚に分けてもらったし」
要の決断は裏目に出たようだ。
「でもうらやましがられた。黒星の弁当だから複雑だったけど……要のアイディアなら嬉しい」
エスパーダは照れていた。
しかし要は素直に喜べなかった。
「さすがに弁当を作るの無理だよ」
早起き出来たのはスミス姉妹のおかげだ。自力では辛い。
「残念」
「ごめんね。俺も朝はギリギリまで寝ていたい」
「今日のライトハンドとレフトハンドが酷かったわ。蚊の鳴き真似をするなんて」
「あれはやめて欲しかった」
「文句言ってやろうかな」
エスパーダはゲームを中断して電話をかけた。