最終話 就はローンを組んだみたいです
最終話 就はローンを組んだみたいです
今度は要が能に電話をかけた。
「あ、お兄ちゃん。ありがとうね」
「それ、黒星師匠とかライトハンドとレフトハンドにも言った?」
「言ったよ。鍵開けてくれたもん」
「話聞いたけど、就君ローン組んだって……」
「あー、それ。ちょっとサイズに甘いよね」
いつもの陽気な能ではなく、何か思うところがありそうだ。
詳しい話を聞く事にした。
能と就が要の家を訪れたのは昼過ぎだったらしい。就が酔いを覚ますのを待ち、さらに昼ご飯を食べてから来たのだと言う。
「お兄ちゃんの家で食べたかったのに」
「待ってたのは薄味のオムライスだったぞ。しかも少量」
「ま、結果オーライかな」
能は笑ってごまかした。
就がドアをノックすると、サイズからメッセージが届いてドアが開けられた。玄関にはガンマンスタイルの黒星が立っていた。
「初めまして。サイズと一緒に住んでいる二瓶就と高星能です」
「李黒星とライトハンド・スミスとレフトハンド・スミスだ」
あいさつもそこそこに中に入った。
「クモ!」
例の穴のあいたクモがあったそうだ。
「銃でやっつけたんだよ! すごいんだよ」
サイズは就に銃の素晴らしさを説いた。そしてこう言った。
「買って!」
就が絶句したのは言うまでもない。一般的な現代日本人に銃の素晴らしさを訴えられても、響かないのだ。だと言うのにスマホと同じようなテンションでねだるとは。
「武器は持つべきじゃない」
就は否定した。
サイズは驚いた。
「え? でも、持たないと戦えないよ。あの人達にクモの餌にされるんだよ」
サイズはスミス姉妹にクモへ差し出されそうになった事を暴露した。そしてそれは武器がないからだと主張してきたのだ。
二人は鳴らない口笛を吹いて、横を向いてとぼけている。
「面倒見てって頼んだ子をクモの餌にするなんてサイテーね」
「僕等は死にたくないんだ」
「信用より命だよ」
言い返してくる二人に能は納得してしまったらしい。
「小人は自衛出来ないと死ぬ。お前等が寝ている間にクモの腹の中なんて事もある」
「じゃあ、この小さな人達はどうして生きているの?」
「ピクシー族には専用の自衛武器がある。後はデカい小人と一緒にいたり、仲間を差し出して逃げるとかだな」
能は引いてしまったという。しかし仲間を犠牲にして集団を守る動物はいるので、生存戦略として悪いものではない。ただ人間が行うと信用を失うというだけだ。
「小人族も似たようなもんだ。デカい動物になす術ない時もある。武器は敵を殺すと同時に自分を守る物だ」
「僕等なら武器を作れるよ」
「もちろん、金はもらうけどね」
就は悩んだ。能に相談もした。能は棍棒か包丁なら良いんじゃないかと言ったが、Gの手応えはイヤだとサイズに抗議された。
「分かった。銃を作ってくれ」
就は決断した。嬉しくなったサイズは追加注文をした。
「ホーリエ・ヴィスコンティーみたいに二丁拳銃で」
「まいどありー!」
「ローンもありだからね」
二人の策略により、二丁作る事になってしまった。能は一丁で良いと言ったが、就は受け入れてしまったのだ。
それがわだかまりになっていると能は言う。
「金はどんな人とでもモメられる要素だ。エスパーダと出会ったのも勝手に課金されてたからだから」
「お義姉様も?」
「だからちゃんと話し合え。俺達くらいにはなれるかもしれない」
「うん。分かった。解決したら援助してね」
否定の返事をするよりも早く電話を切られた。いつも通りの能に戻ったので良しとしようと要は納得する事にした。




