2話 病は神から
無双が書きたくて…
「あんたすごいなぁ! あのドラゴンを一撃で」
「当たり前じゃ、我は最高神……神であるぞ」
この世界には"宗教"といったものは無いのか?
あのような力を見せた上、動物の本能の中には神々の存在を刷り込ませてあるはずなのだ……。
「もしや、生体情報か……貴様、我に思うことはないのか」
「すげーと思うぜ! 魔法使いとして、あんたは最上級だ!」
やはり、生体情報までも書き換えたことで"ニンゲン"の本能に反応しないのか……
「で、あれば先の愚行。水に流してやるぞ!」
我は笑いながら、生体情報を戻した。
「何度も言ったが、我は神である。平服せよ」
周囲から音が消え、"ニンゲン"が地にひれ伏した。
「ま……まさか本当に、本当に、最高神……様」
「おお、やはり生体情報じゃな。神々には生体反応がない……よって、少し書き換えるだけでこうも判別がつかなくなるとはな」
こやつのおかげで良いことを知った。
何か褒美をくれてやるか……
「そこの"ニンゲン"、貴様に褒美をくれてやろう。何でも申すが良い」
「お、恐れ多くも……最高神様。褒美と言うなら、私の娘……娘の、"アイシャ"の病を治していただきたいのです……!」
かの"ニンゲン"は我に恐れながらも、娘の為に褒美を使うとな。
「いいであろう。力や富を願っていれば殺してやろうと思っていたが、実に良き者よ。その願い聞き届けてやろう」
「ほ、本当ですか! ありがとうございます……!」
「その"アイシャ"とやらの寝所へ案内せい」
我はその娘の前へゆるりと歩みを進めていた。
だが、その娘が患った病は生半可なものではなかった。
「これが、私の娘の"アイシャ"です。この村の僧侶全員を持ってしても、病の進行は止まらず……あと数日の命であろうと……」
「有象無象じゃ、この病は治せぬな」
冥府神の仕業であろうな。冥府神は我が創った神ではない。
全能神が創った神はタチが悪いわ
「だが、ここが冥界神の管轄から外れていることがわかった……また貴様には礼をせねばな」
「は……ありがとうご、ございます……?」
"全能神"は"最高神"である我の兄弟にして、我と共に神々を統べる存在。
全能神の創った冥府神は"属神"である"堕天"に命を吸わせ、新たなる神にするつもりであろう。
この娘以外にも被害者がいるかも知れぬ。
「神は神でないと手出しはできぬな……娘の病、我が治して見せよう。」
「我が良いと言うまで、この部屋に入ることを禁ずる。わかったら出ていけ」
「わかりました……最高神様。ですが、入ってしまったらどうなるんで……?」
我はニンゲンの方を向き、ニヤリと笑って言った。
「殺してしまうかもしれぬ」
ニンゲン達が慌てて逃げていったのをよそ目に、我は娘に触れ、彼女の深層心理へと潜った。
深層心理内は漆黒であった。
彼女の苦しみや葛藤、憎悪がこだましておる。
「やはり居たな。"堕天"」
「貴様は誰だ……? お前のような若い神は知らんぞ」
間抜けにも知らんと"堕天"は言った。
神は"心体"で相手を見なければな。
我が"心体"を秘匿しているのに気づき、警戒しなければならない所だが
「貴様のような"心体"の薄い雑魚は"属神"にも見たことがない。最近生まれた精霊か?」
「心体の薄い雑魚は貴様じゃ。"堕天"」
「心体の秘匿も習っておらぬのか? 冥府神が聞いて呆れるわ。」
我はゆっくりと歩みを進め、忠告してやった。
「その娘は諦めたほうがよい。貴様の為である」
「残念だが、俺はこいつの命で神になれる。"疫病神"としてなぁ」
疫病神か、趣味の悪い名だが面白そうだ。
「疫病神か……それはさぞ毒に優れているのだろうな」
我はそう"堕天"に言い放つと、"疫病神"を創造した。
「こいつに勝てば、貴様は疫病神となれるじゃろうて」
「なんだお前、創造神の属神かなんかか? まぁいい、勝ってやるよ!」
"堕天"は疫病神に近づき、首に触れながら叫んだ。
「奪命!」
なんと、我の創った神を殺してしまった。
こいつは中々の上物だ。
「へへ、こんくらいヨユーなんだよ!」
「その技は冥府神の物だな。習得しておるとは……命を貪り食っただけあるわ」
「次はお前だぜぇ? 俺は最強だぁ……ハハッ」
冥府神の技は見たことがなかったので見れてよかった。我の属神にも分けてやりたいわ。
「よし、お前にもう用はない。死ね」
そして我は"堕天"へ指で線を描き、胴と頭を切り離した。
指を鳴らし <属神:死神> を新たに創造する。
「そこの死体の技を奪え。冥界神の下に付くのだ。仲間に技を伝えろ。冥界神に一言、"最高神からの贈り物"だと伝えてくれ。」
「失敗は万死に値する」
我は死神にそう言い放ち、
我は娘の深層心理を後にした。
暇つぶしです。