少女
僕は畑仕事をする老人を眺めていた
その人は僕の祖父だった
"じいちゃんはこんな仕事して嫌じゃないの?"
僕は畑仕事をする祖父にそう言う
"そりゃ面倒くさいぞ?だがそれがいいんだ。小僧には分からんだろうがな"
祖父は僕にそう言う
祖父は僕の事を小僧と呼んだ
大人になって働いても小僧と呼ばれた
"でもどうして機械を使わないの?今は色んな機械があるのに"
僕がそう尋ねる
"機械なんていらん。ワシは本来の生き方を貫きたいだけだ"
僕の質問に対して祖父は決意を固めた表情で言う
僕はそんな夢から醒めた
"何回寝ただろうか"
そんな事を思いながらも懐かしい祖父の事を考えていた
"にしてもさっき僕が電車で話した人は祖父に似ていたな・・・"
でも祖父は丁度半年前に病気で亡くなった
その病気は機械の手術で普通に治る病気だった
でも祖父は残り短い人生を生きる事を選んだ
ふと僕は外に目をやると
外の景色は雨が土砂降りでよく見えなかった
でも雨の音は不思議なことに一切聞こえて来なかった
おかしいと思いながらも雨をボーっと眺めていた
すると窓ガラスの反射で誰かの姿が見えた
僕が振り返るとそこには僕を悲しそうな目で見る少女が向かいの席に座っていた
「どうしたの?」
と僕は少女に声をかけてみた
「いえ、なんでもありません」
と少女は小さい割にはしっかりした言葉で言った
「あの、お兄さんは誰かを助けるために死ぬ事はできますか?」
少女は突然僕にそんな事を言ってきた
少女は僕を真剣な眼差しで見つめている
「その人が助かったならそれでもいいかな」
と僕は少女のその質問に答えた
「もしその助けてあげた人が死んじゃったとしても怒りませんか?」
と少女は僕に再び質問をする
「怒らないよ。でもできるなら僕の分も生きてから死んでほしいな」
「どう死んでも僕は文句は言えないけどね」
と僕は少女の質問に答えた
そして辺りを凄まじい閃光が響いた
その直後に轟音が鳴り響いた
どうやらこれは雷らしい
そして僕は意識が落ちていった
ああ、そうだった。
僕は雷が怖くて気絶してしまうんだったな
そう思いながら僕の意識は闇に飲まれた
激しい雨の中を走る電車の中で僕の意識は飲まれていった・・・