ポーカーフェイスはくずれない
…自慢じゃないが、オレはモテる。
端正な面の皮にそこそこ高い身長、やたら低い声に落ち着いた雰囲気。
何でもクールにこなして、無駄にテンパったりしない。
誰が声をかけてもイカした表情でまっすぐ見つめかえし、気持ちは受け取れないときっぱり断る…そういう男気のある態度に定評がある。
とても二十二歳とは思えない、三十代の風格があると…よく言われる。
バレンタインにクリスマス、8月の誕生日、卒業式…ありとあらゆるイベントで告白をされ、そのたびにオレは顔色一つ変えずに【ごめんなさい】を伝えてきた。
泣いても、怒っても、笑っても、呆然としても…普段と全く変わらない表情で断るので、告白した人たちは皆、全く興味を持ってもらえないんだなと潔く諦めてくれた。
フッた回数がシャレにならないほど多いのに女子から敬遠されることはなく、逆に人気が高まるありさまだ。
…オレ自身、モテたいとかモテようとか思って頑張っているわけではない。
いつか、本気で誰かを好きになった時…自分のチャラい言動を後悔することがないように気を付けているに過ぎない。
何を隠そう、オレは…まだ出会ってすらいない運命の相手に…本気で恋をしているのだ。
いつか必ず会える、そう信じて…一途な思いを募らせてきたのだ。
一生に一度の大恋愛をして、幸せを分かち合う…この世でたった一人の、運命の人。
目が合った瞬間オレの小指はジンと熱くなり、運命の赤い糸が燃え上がるはずだ。
そしてその熱がきっかけとなり、生まれる前に永遠の愛を育むと誓ったことを思い出すのだ。
華奢な手を握った時、オレは愛する人の小指もまた熱くなっていることに気が付いてヒートアップするに違いない。長年恋焦がれた愛する人を目の前にもはや理性を保ち続ける事は叶わないだろう。そのまま指と指を絡ませ、ギュウと小柄な体を抱き込んでプルプルの耳たぶをひと噛みしてからサクランボのような唇をいただいちゃって食み食みでもってもちろんふにふにすべすべもちもちも徹底的に堪能しまくりくんずほぐれつ快楽の極みを一緒に目指して昇天からの更なる別世界にダイブを経て神の領域への侵攻そして異次元へさらにはぎゅふふ…ぐへへ…ウヒヒ!
「あの、ずっと好きでした…」
…大丈夫、ただれた胸の内は、1ミリも漏れ出してはいない。
「…ごめんね?君じゃないんだ、僕の恋の相手は」
オレはいつものように…、遠い目をしながら【ごめんなさい】を、告げた。