転勤①
「…これで大体片付いたかな」
私はダスコ、とある会社の相談役をしているアメリカ人だ。
「ダスコさーん!お疲れ様です!」
直属の部下であるラダくんが大きな声で呼びかけてくる
「やぁ、ラダくん、転勤前にわざわざ来てくれて本当に感謝しているよ」
「そんなこと気になさらないでください、あぁ、まだ片付けるものが残ってるんですね」
「そうなんだ、君も一緒に見てくれ 例えばこの名刺、これはいるのかな」
「これはいりません、あなたはこれから相談役ではなく、作業員になるわけですから」
「作業員か…相談役から一転、中々厳しい左遷だね」
「でも、もし任務に成功すれば、場合によっては相談役より報酬が入ってきますよ」
「ドリーミーな仕事なんだね…ちょっとだけワクワクしてきたよ、じゃあ次にスーツ、これはどうなのかな」
「これはいりません、これじゃあ作業するのに動きにくいし、そもそも汚れますから。こちらの作業着を使ってください」
「やっぱり力仕事なんだね、わかったよ。じゃあ次に電話、これは使うよね」
「これはいりません、作業中には携帯どころか、自分が永遠にバイブしていますから」
「揺れ続けるんだ…海の上とかなのかな」
「いえ、陸からは離れませんよ …というより、ずっと陸です」
「掘るんだ…!地面を掘り続けるんだね、ラダくん!?じゃあこの耳当てはもしかして…」
「そうです 耳当ては地面を掘る時の防音用です ダスコさんはそれをつけて地面をただひたすらに掘り続けてください、場所はこちらです」
「日本か…なんかいっぱい印がついてるね」
「この地図はCEOの日本のご友人からお借りしたものだそうです、ここの×印のところを掘れば出てくるそうですよ」
「印って…この何十箇所もあるやつかい!?」
「あんまり浅く掘っても出ないそうですよ、安政の大地震や関東大震災で、元々埋めたところにさらに土砂が積み重なってしまったそうですから…」
「君アメリカ人だよね?日本の大地震とか私言われても分かんないんだけど… 泣いてるのかい…? …歌うか。」
「踏ん張れ〜めげるな〜命の限り〜生きてやれ〜」
「あなたが…!CEOのご友人の目の前に!小さな少年と太った男なんて連れてくるからいけないんだ!」
「ジョークをかまそうと思ってぇ…」