プロローグ
こちらの作品は処女作「紅薔薇に秘めた想い」スピンオフ作品です。
こちら単品でもストーリーは理解できますが、本編もお読みくださるとより楽しめます。
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昭和16年
琴葉は女学校から帰ると自宅のポストの中を見る。中には白い封筒があった。宛名には琴葉の名前と住所が書かれていた。
「私に?一体誰からかしら?」
裏を見るが差出人の名前は書かれていなかった。その代わりに封筒の開け口の部分に薔薇の花びらが貼られていた。
「お嬢様。お帰りなさいませ。」
庭の掃除をしている女中が声をかけてきた。
「只今。」
「お嬢様、そちらはどなたからのお手紙ですか?」
女中は琴葉が手にした封筒に気づく。
「それが差出人が書かれていないの。」
「差出人不明の手紙なんて気味が悪い。開け口の薔薇の花びらはロマンチックですけど。」
薔薇の花びら。琴葉はそれに心当たりがあった。
「もしかしたら!!」
「お嬢様?!どうされました?!」
琴葉は女中が声をかけるも耳を貸さずに2階の自分の部屋に戻っていく。2階に誰もいないことを確認し扉を閉めると封筒を開ける。
手紙の文面の最後に書かれた日付と差出人の名前があった。
昭和16年9月5日 川島芳子
「芳子様、やっぱり芳子様だったのね。」
琴葉ちゃんと芳子様久々に書けて楽しかったです。