19.仇討ち少女は戦いたい
ペチューニャは頭を抱えていた。
父親の仇討ちに来たはずなのに、初戦でサヴィチに軽くあしらわれて往なされて遊ばれた。
許せるはずなどない。諦めることなどできない。
鍛えに鍛えて、再戦を望んだ時、目の前。闘う相手は―――――誰?
膝上の洋袴一枚だけを着た丹色の體、逆立った花紺青の髪をガリガリと掻き毟る男が目の前で口を開く。
「お前もサヴィチに挑むのか」
「だったら何?」
「俺に勝てなきゃ、奴は倒せねぇ。立ち合おうぜ」
言うや否や、男は抜拳する。
左頬の平手。女だから手加減されている? そんなの、許せないし、許されない。
ギリ、と奥歯を噛み締め、踏み止まり、こめかみを狙う渾身の上段蹴り。
男は顔色を変えることなく、平然と蹴り足を掴み取る。そのまま引き込み、持ち上げ、ブン投げ飛ばす。
「な、きゃぁあああああああああっ!?」
ドッゴッドダ、ゴッッ!!
床を転がり、着壁したペチューニャは咳き込み、立ち上がる。
「意気込み良し、決意好し、覚悟吉しだぜ、嬢ちゃん。だが、勝てなきゃ意味がねぇ」
男は地を蹴り、圧倒的な速度でもってペチューニャに近づく。
ペチューニャにはその姿が見えるが、体の対応が追い付かない。振るう拳がペチューニャには見えない。防御の構えをする前に、顎先を捉えられた。
脳が、揺れる。
人工的な脳震盪。
ペチューニャの意識が途絶える。
「駄目だぜ、その程度じゃ奴には届かねぇ」
「君も届いていないくせに」
男、ヴァンダルは天井を見る。そこにはパームがいた。
「何でそこに」
「最近サヴィチが君以外と闘えなくて苛ついているわけなのさ」
ヴァンダルに近づいたパームは、ヴァンダルの拳速を超える速度で股間を蹴る。
「お、がぁあっっっ!?」
ペチューニャの再戦は遥か先の話になりそうだ。




