14.最強拳闘士の闘争と逃走
「ここで会ったが百年目!」
「マジで百年後も言ってそう」
前者、闘争心を剥き出しにしたヴァンダルと、後者、げんなりとしているサヴィチ。
別にサヴィチは闘いが嫌なわけではない。むしろ好きである。しかし、同じ人と何度もやるより、別の人達をとっかえひっかえするやり合いが好きなのだ。だって、毎日のように来られても、そこまで成長していないから同じようなことの繰り返しになってしまうのだ。
今回の闘いでサヴィチ対ヴァンダルは十三連戦目となる。そろそろ他人と闘いたい。
サヴィチの知り得ないことだが、実はサヴィチと闘いたい者は山ほどいるのだが、ヴァンダルがすべてを蹴散らし、サヴィチとの闘争権を文字通り勝ち取っているのだ。パームは知っているが、放置している。真意は不明。
げんなりしているとはいえ、サヴィチとて拳闘士。こと”闘い”において手を抜くことなどあり得ない。
「うらぁ!」
ヴァンダルの渾身の右拳を、腕を滑らすようにして往なし、ヴァンダルの勢いを利用して裏拳を入れる。
視界を潰し、一瞬目を瞑らせると、サヴィチは思い切り金的する。ヴァンダルは声にならない音を絞り出しながら、股間を押さえ蹲る。
そのまま、ヴァンダルはサヴィチの股間を殴るが、舌打ち一つで済ませた。
「睾丸は内臓だ。體にしまっておけ。弱点だぞ、そこ」
閃光を彷彿とさせるほど速い右手が、ヴァンダルの意識を刈り取る。
そこでサヴィチ、悪寒が走る!
この感じ、振り向かなくても分かる。負けから北げるのを嫌うサヴィチだが、唯一といってもいいだろう、今北げているものがある。
「サーヴィーッチー! まーなびーましょー」
パームの声がする。その瞬間、サヴィチの汗が着床した。
それが合図だった。
サヴィチが逃げ、パームが追う。それが日常とばかりに誰も手を出さない。ちなみに、何を学ぶのかと言うと、文字。サヴィチは未だに読めないのである。




