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8.老導師は隠居中
コト。
静かな山奥に小さな小屋が一つ。前線を退いたオーバンが茶を飲んでいた。
木の葉の擦れる音。小鳥の囀り。川のせせらぎ。全てが心を鎮めてくれる。
もう一口茶を飲み、吐息。
「放火魔とまで言われていたオーバンとは思えんな」
オーバンの目の前には片腕のない男が茶を飲み交わしていた。
「フン。凶笑の団長の貴様も随分と丸くなった」
互いに軽口を叩き、笑い合う。
「私とてもう六十七歳だ。退いても誰も文句は言うまい」
「魔法部隊の人達は文句を垂れていたぞ」
「ほう? 何と?」
「教えてほしい、とか。導いてくれ、とか」
「ふは、我の出来得ることなど、この十五年でやったではないか」
「皆はそう思っていないみたいだぞ」
「我はもう隠居している身なのだ。戻る気はもうない」
コト。




