2.筋骨逞しい男は止められない
「年いっているはずなのに、筋肉デカいなぁ」
「あぁ、隻腕になったから、左腕ばかり使っていたらこうなってしまっていたって話を聞いた」
ブローンが廊下を歩いていると、若者二人の会話が耳に入ってくる。
そんなわけないだろう。筋肉はこの一年まともに育てていないのだから肥大などあり得ない。
嘘の噂話を聞き流しながら通り過ぎる。
今でも戦士の募集をしている。町内の警邏という側面がある。そして、シュドを倒したとはいえ、悪が絶えたわけではない。
ダイハードが隣に来る。
「ここにいたのか」
「あぁ、まぁな」
ダイハードが煙草をくわえると、ブローンが火打石で火を点けてやる。
「ありがとよ」
「あぁ、俺も煙草だけは止められなくてな。戦争の時は吸えなかったからな。最近は量が増えてしまった」
「分かる。それとは別によく左腕一本で火を点けられるな」
「訓練したからな」
ブローンは火打石を机に置き、煙草を取り出した。口にくわえるために左腕を折り曲げる。
パンッ!
「あん?」
ダイハードの眉に皺ができる。
服が弾けた。肩と腕の縫い目がこう、パァン☆ と。
「服の大きさ……」
「いや、待て。お前の言いたいことは分かる。だが待て。これは戦争が終わってから礼服が必要になってついでに作ったんだ。合わないはずは」
「せ、成長したんじゃ」
「あれから鍛えていないんだぞ。なぜ成長を」
「左ばかりを使っているからでは?」
「そ、そんなことがあるとは」
ブローンは驚愕し、その日一本も煙草を吸えなかった。




