20.決戦当日、彼等はそれぞれがそれぞれの相手を見つけ、戦いを開始させていきます
ブローンが号令をかける。
「今日こそ、この戦いを終える時が来た。出しゃばりが突っついたりしていたが、全てを終わらせる。英雄のいない時代は不幸だ。しかし、英雄を必要としている時代はもっと不幸だ。英雄のいない、必要としない時代を到来させようじゃないか」
シュドが言い放つ。
「廻れ廻れ報われぬ、道を紡ぐ者等よ。詠え詠え報われぬ、道を歩む者等よ。華のように鮮やかに、鳥のように優雅に、風任せも心地よく、月明かりに照らされながら、時代も変えよう。革命を起こそう。世界を一新しようじゃないか」
「オーバン、ヴィクター、パイク。この三人はここに残れ」
屋敷と城の間での出来事。
ヴィクターが反論する。
「何でだよ!」
「退路の確保の為だ。罠に引っかかって脱出不可能になったら困るだろ?」
「困るで済むのか?」
「分かったよ。でも、一刻経っても戻ってこなかったら、俺達も突入するぜ。これは譲れない」
ブローンは少し黙考する。
「分かった。一刻経ったらな」
城内にて、ブローン達はそれぞれ部屋に別れていく。プラダー、グラディエイタ、ホーリーは右側の部屋へ、エンチャントレス、ウィザード、ウィッチ、セイバー、アヂル、ダイハードは左側へ、ブローン、ケイン、トマホーク、ラントは中央へ行こうとするも、扉が開かず、左側に進む。
プラダーは二階へ進み、部屋を三つほど進むと、そこに勝色の鎧の男がいた。
「私は<摩虎羅>イモータル」
「僕はプラダー。いざ尋常に勝負」
トマホークとラントは地下へ進み、真っ直ぐ進むと、そこに、雄黄色の髪を揺らし、踝まで淡水に浸かっている男がいた。
「私は<宮毘羅>のギャロウズ、愛らしい少女達を殺すのは忍びないな」
「あたしはトマホーク」
「私はラント。忍びないなら殺さなきゃいいじゃん」
エンチャントレスとウィザードとウィッチも地下へと進み、螺旋階段を上がり途中、空色鼠の髪の女性と退紅の髪の男性、新橋色の髪の女性がいた。空色鼠の女性の声に怒気が孕む。
「私は<伐折羅>のハグ。絶対に潰す」
「私は<上無>(応鐘)のソーサラ」
「私は<神仏>(無射)のソーサレス」
「懇切丁寧にどうもありがとう。私はエンチャントレス」
「私はウィザード」
「私はウィッチ」
グラディエイタは二階に上がり、真っ直ぐ進むと、丹色の男がいた。
「俺は<鳧鐘>(蕤賓)ヴァンダル」
「俺はグラディエイタだ」
アヂルとダイハードは二階に上がり、目の前の部屋の中に入る。そこには白橡の髪の巨漢と鶸を滅紫に染めた男がいた。
「俺は<迷企羅>のランパート」
「私は<安底羅>のストール」
「俺はアヂル」
「私はダイハードだ」
ブローンとケインとセイバーは二階のダイハード達の横の道に入っていく。そこには、常盤色の少女がいた。
「久しぶりだね、ブローン達。今まではエイリアスって名乗っていたけど、今回はちゃんと名乗るね。あたしは<波夷羅>のパームって言うんだ。改めて、よろしくね」
ホーリーがグラディエイタと別れて部屋に入ると、承和色の髪の少女がいた。
「私は<頞儞羅>のパピティア。私の研究の糧となってね」
戦いが幕を開ける。
イモータルと名乗った男は相当な剣の使い手であるということは交えなくても、構えだけで分かる。両者とも動けない。手の内を多く見せた方が負ける気がしてならない。
プラダーの緊張の汗が一滴、床に落ちる。
タッ。
着床の音が響き渡り切る前にイモータルが地を蹴った。
二メートルを超える巨体が眼前に迫りくる光景は、否が応でも未熟なプラダーには体を硬直させるに足るものとなった。
何とか剣を間に滑り込ませ、防御をするが、圧倒的にイモータルの方が強い。
「ぬ、んあっ!!」
何とか剣を滑らせ、イモータルから距離を取る。
イモータルは悠然とプラダーの元まで歩いて距離を詰める。
剛に対して柔、力業に対して技業。
イモータルの剛力を往なし、往なし、往なし続け、ついにイモータルの腹を掻っ捌き、上半身と下半身を別つ。
ギャロウズの袖から縄が飛び出す。縄は首を求め、締め上げようとする。ラントは首に巻き付こうとする縄の間に小刀を差し込み、縄を切り落とす。トマホークは首に巻きつく前に小斧で叩き落とす。
ギャロウズは縄を両手で持ち、ピンと張った。
「刃物か。相性悪いな」
「凄い怒気ね。怖いわ」
「お高く留まりやがって、ぶっ殺す!」
ハグは醜い容姿をしているため、整った容姿をしている者が許せなかった。
「久しぶり、ウィッチ」
「今度こそを決着を、ソーサレス」
ハグは杖をエンチャントレスに向ける。
「ユーバーシュヴェンメン!」
大洪水が押し寄せるが、冷静に対処する。
「ブラーゼン。エレクトリツィテート」
洪水を空に飛ぶことで回避し、電撃魔法を落とす。
「はっ、が、あ……」
ハグ達は感電し、動きを止める。
「フランメ!」
「マオアー!」
ウィッチは隙を見ると、炎魔法を放つが、ソーサラが土魔法で壁を作り防御する。
硬直が解けたハグ達はエンチャントレス達と魔法合戦が始める。
「生まれの故郷に同じく三大拳闘士のヴァラってのがいた。参考に聞くが、どっちが強ぇんだろうな」
「他人がよー、勝手に言った尺度で計られてんのがよ癪なんだがよー、ただ言えることは会ったことねぇから知らねぇ」
グラディエイタが言い終わる前に、ヴァンダルは地面を爆発させた。
「う、らぁ!」
首に手を置き、ゴキゴキと鳴らしていた体勢から上半身のみを後退させ、攻撃を躱し、右足でヴァンダルを蹴り上げる。天井から跳ね返ってくるヴァンダルを右腕で殴り飛ばす。
ヴァンダルが跳ね起きると同時に、グラディエイタの蹴りが入る。ヴァンダルは吹き飛び、壁にぶつかりめり込む。
敵わない。敵えない。
俺はまだまだ……未熟だ。
ランパートはストールを庇うように前に立つ。
ダイハードもアヂルを庇うように前に立つ。それが自分の役割だと言わんばかりに。
ストールは小声で詠唱を始める。
「ゲシュウィンディヒ……」
アヂルがストールの詠唱に気付き、走り始める。
匕首がストールに届く寸前、間にランパートが滑り込み防ぐ。
アヂルの動きに合わせて、反対側から攻める。
「……カイト・カイト・マヘン・……」
楯でアヂルを弾き飛ばし、ダイハードとの間にも入り込み攻撃を防ぐ。
「……・ケーフィヒ」
ストールの詠唱が完成する。
ストールも小刀を抜き、戦いに参加する。
ランパートは城壁のような硬さで二人の攻撃を防ぎきる。
アヂルとダイハードがいったん距離を取る。
アヂルは眉を顰めながら、片足で跳んでみる。
「どうした?」
ダイハードが問うと、アヂルは首を振る。
「何でもない。ところで、どう崩す?」
「一対一でやるしかないか」
ダイハードがランパートと相対し、力比べを始める。ストールの小刀をアヂルが防ぐ。
ダイハードが気付き始める。
あれ? 体が重い?
アヂルが剣撃を繰り出し、ストールとランパートに浅いが、着実に傷をつけていく。
「ぐ、ぎ」
「は、速ぇ」
アヂルのその速度に二人は目を張る。ストールはランパートの後ろに隠れて、小さく一言。
「よし、確実に効いていやがるぜ」
「ごめんねェ、皆。後悔は無いよ。だってあたしだって回し者だし、こっち側だし」
「エイリアス、いやパーム。君の正体を見抜けなかった私達の方に非がある。ただよぉ、ホーリーだけは勘づいていたようだがな」
「へぇ、ホーリーかぁ」
顎を擦りながら解釈していく。
「敵とはいえ、一度は味方だったんだ。話し合いで解決は……できないよな」
「一度も何も、味方だったことはないしね」
パームは匕首を抜いて、敵対意識を見せる。
「っ!」
パームは唐突に迫ってきた細剣をギリギリで避ける。
「ヒェー、セイバー、容赦ねぇ」
パームはセイバーの顔を見て気付く。
「あれ? 泣いてんの?」
「悲しいわ。友達だと思っていたのに」
「友達だけど仲間じゃないだけさ。友達だから、見逃してくんない?」
パームの懇願に対する返答はブローンの剣だった。
ケインは仕込み杖を引き抜き、鞭を出す。
三人の絶妙な連携を前にパームは神業で避けていく。
トンッ。
「あ」
いつの間にか壁に追い詰められていた。




