なな
猫のななは、グランドの隅のタイヤ遊具の中にいた。
生まれて2〜3ヵ月は経っていたようだが痩せて、顔つきも「人間なんか信じない」と、言う顔をしていた。
余程、人間に痛い目をうけた様に思える。
私が、ななを見つけた時も やはり子供達に砂をかけられて虐められていた。
ななは、逃げようとするがまだ身体は小さいので、すぐに連れ戻されて砂をかけられた。
「止めなさい! 可哀想じゃないか!」
「だって こいつ歯向かうから・・」
ななは、子供達から逃れてグランドの倉庫に向かって走り出した。
「今度、動物を虐めたら退部だぞ!」
「すいませんでした」
「さ、グランド整備につけ!」
その時は、ななを家に連れて帰るつもりはありませんでした。
次の練習日、子供達はキャチボールの練習をしていた時、何処からともなくななが私の近くに寄って来た。
「お前、1匹で大丈夫か?何を食べているんだ?」
「二ャァー」
ななは媚びるわけでもなく、私に向かって鳴いた。
その時、ボールが飛んで来たのに驚いてななは、また 走り去って行った。
「また、捕って来たのか!」
「二ャァー」
「見せに来なくていいよ!」
ななは、家の周りの鼠などを捕っては私に見せに持って来る。
ななを飼いだしてて1年が経とうとしている。
ななは、飼い猫になっても私以外には懐かないでいる。
先輩猫達にも、挨拶はなかった様だ。
ななの目は、鋭く輝き野生を忘れ無いために猟をしているのではないかと思われる。
「最近、家に帰らないな?」
「ななでしょ。何処に行って遊んでいるんだか?懐かない猫は、可愛くないはよ!」
と、妻が言た。
今朝は、胸騒ぎがした!
「ねぇー花屋の向かいの道で、猫が死んでいるらしいはよ」
急いで見に行った!
道の隅に黒い猫が、横たわつていました。
「なな・・・」
猟を終えて帰る途中だったのでしょう。
帰る家があるばかりに・・・
短い一生でしたが、私の記憶に深く残る可愛い猫でした。