社会人サークル「リーガル」へようこそ 7
「「…………………。」」
(き、気まずい……。)
神風は夢姫を抱えたまま、スタスタと休憩棟に移動をしている。お姫様抱っこをされている夢姫は、どうしたらいいのか分からず、一人気まずい思いをしていた。
「……あ、あの……お、重くないですか?」
沈黙に耐えきれず、夢姫が神風に話しかけた。
「?全然。月野さん華奢ですし。」
「あの、なんだか色々とご迷惑をお掛けしてすいません……。」
「謝るのはこちらの方です。僕が、月野さんに必要以上にパスを回した結果、怪我をさせてしまった訳ですから。……本当にすいませんでした。」
「いえいえ、神風さんは何も悪くないですよ!!私が勝手に転んだだけですし。それに怪我もきっと大したことないですよ。」
「大事になっていなければいいのですが……。」
話しているうちに休憩棟についた。ここには売店があるため、消毒液や絆創膏等、一通りのものは手に入る。まずは、怪我をしている箇所を軽く水洗いして汚れを落とした。
「ちょっと滲みますよ。」
「……っ。」
夢姫の身体に一瞬鋭い痛みが走る。
神風は慣れた様子で傷口の消毒を施し、傷口の大きさに合わせてガーゼや絆創膏使って傷口を覆っていく。
(動きに無駄がない。スポーツには怪我が付き物だし、きっと処置は慣れているんだな。)
「思ったほど傷口は深くなさそうですね。簡易的ですが、これでひとまずは大丈夫だと思います。痛みはどうですか?」
「ジンジンはしますけど歩けます。大丈夫です。」
「良かった。でも、必ず後日医療機関に行って診てもらってくださいね。」
「はい、ありがとうございます。」
傷口の処置が終わって少し経った頃、剛力が急ぎ足で夢姫達に駆け寄ってきた。
「……おーい!!月野さん、怪我は!?大丈夫!?」
「あっ、剛力さん。神風さんが処置をしてくれたのでもう大丈夫です。」
「そうかそうか、良かった!……でも!怪我を甘く見ちゃいけないよ!女の子だし傷になっちゃうと大変だからね。後日必ずお医者さんに行って診てもらってね。」
「(女の子という年齢ではないけど…)はい、そうしますね。あ、試合は……」
「あぁ。月野さんが怪我しちゃったし中止にしたよ。」
「私のせいで、すいません……。」
「あー、いやいや!そんなに気にしないで!事情も事情だから。それに、練習試合が中止になったくらいで文句言う人なんてうちのメンバーにはいないよ。」
「そうですか……。」
「……あ!そうそう。この後、月野さんの歓迎会を予定しているんだけど、どうする?怪我しているから無理は良くないし、次回に変更しようか?」
「え!!いいえ、ちょっと擦り剥いただけでそこまで配慮してもらう必要ないですよ!念のためお酒は控えめにしますが、大丈夫です。喜んで参加させて貰います。」
「……本当に?無理してない?」
「全然大丈夫ですよ。傷口も浅いし。それにみなさんの名前を早く覚えたいので。」
「……そう。分かった。でも、絶対に無理はしちゃいけないよ。怪我は後から悪くなる場合だってあるからね。幸いにもお店はここから近いし、予約時間までは余裕があるので、少しここで休憩を挟んで様子を見てからお店に移動しましょう。じゃあ、他のメンバーも呼んでくるから、また後でね。」
そう言うと、剛力は他のメンバーを呼びに出て行った。
ーーーーーーーーーー
剛力と共に他のメンバー達がゾロゾロと休憩棟にやってきた。その中にいた夕日が月野を見付けて駆け寄ってきた。
「あ!月野さぁん!大丈夫ですかぁ?」
「夕日さん。はい、大丈夫です。ちょっと転んだだけですから。」
後から来たマーサとルリが話に混ざってきた。
「いやいや、月野さん。あれだけ派手に転んだんだから、大丈夫じゃないでしょーよ。」
「そうよ、月野さん。大丈夫だった?」
「マーサさんにルリさん。心配してくれてありがとうございます。傷口は浅いし、神風さんが処置をしてくれたので、この通り、もう大丈夫ですよ。」
試しに手足を動かして、夢姫は三人に元気アピールをした。
「そっか。神風君に抱えられていきなり退場したから心配だったけど、その調子なら大丈夫そうだね。」
マーサのその一言で何かを思い出した夕日がキラキラした瞳で話し出した。
「そぉそぉっ!神風さん、いきなり月野さんをお姫様抱っこして連れ去っちゃうんだものぉ。神風さんてぇ、普段無愛想でちょっと怖く見えるのにぃ、あの時ばかりは王子様っぽく見えちゃいましたぁ〜♡」
「神風君、普段あまり感情的にならないのにねぇ。焦った姿を見せるなんて珍しいよね。ちょっと年相応に見えちゃった。」
「神風君はプレー中も冷静だもんね。でも、王子様には見えないや。」
「マーサさんもルリさんも手厳しいぃ〜。神風さんってぇ元々凄いイケメンだしぃ。私はあの時の神風さん、かっこ良く見えましたけどぉ?」
「私、年下には興味ないの。」
(うわ〜、マーサさんバッサリだなぁ。……ん?もしかして夕日さんは神風さんの事が好きなのかな?)
イケメンのフレーズにルリが食い付いた。
「イケメン具合で行ったら、大河君もだよねぇ。系統は違うけど。」
「確かにぃ。神風さんが王子様ならぁ、大河さんは騎士様って感じかもぉ?きゃははっ!」
「大河君が騎士様?はははっ、そりゃー傑作だわ!きっとすぐに敵に斬り殺されるわ!」
「……ひでーな、マーサさん。俺、そんなにひ弱じゃねぇし。」
どっからともなく現れた大河がマーサの背後から話しかけてきた。
「うわっ!!びっくりしたな!大河君、背後から話しかけないでよ。女子トーク中なんだから、あっちへお行き!!しっしっ!」
「うわ、ひでぇ!俺は犬かよ!!それにみんなで俺の名前連呼してたら気になるじゃん。」
「あんた、地獄耳ねぇ〜。」
「マーサ、そのくらいにしときなさいな。女子はこれから着替やら色々準備があるから、大河君も着替えてきなよ。」
「へーへー。厄介者は退散しますよ〜。」
(マーサさん、大河さんの扱いがヒドイ……。)
夢姫は、夕日、マーサ、ルリの女三人組と共に更衣室へ向かった。
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