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ライオンに遭遇した兎


チュンチュン。

夢姫は、小鳥の鳴き声でふっと目を覚ました。

あの後、夢姫はささっとシャワーを浴びて部屋着に着替え布団に入った……事までは記憶に残っている。

そして、気付いたら朝を迎えていた。


(し、しまった!大河さんのメールも確認せずに爆睡しちゃった!!)


夢姫はガバッと跳ね起き、慌てて携帯を見る。

時刻は朝八時を回ったところだった。


(メールの内容は!……良かった、まだ指定の時間より前だ。)


ホッと夢姫は胸を撫で下ろすと、神風との昨日のやり取りを思い出した。


(そーいえば、昨日は色々あったなぁ。ミツ君に告白されたり、ハグやキスしたり……。)


ふっと壁を見ると、ハンガーに掛けた神風のジャケットが吊るされていた。

そして、黒子のある手の甲には、帰り際に付けられたキスマークが薄ら赤みを帯びている。

神風のぬくもりをリアルに思い出した夢姫は急に頬が熱くなるのを感じた。


(うひゃ〜!朝から何考えてるのよ、私っ!!)


夢姫はバッフ、バッフ、としばらく枕に頭を打ち付けながら一人で悶えていると、ふと神風との約束を思い出した。


「……はっ!いけない、メールするの忘れてた!!」


夢姫は慌てて再び携帯を手に取り、神風にメールを打った。


「これで、よしっと。……あっ、大変!そろそろ支度を始めなきゃ!!」


夢姫はそのままバタバタと身支度を始めた。



ーーーーーーーーーー



(はぁ。なんとか待ち合わせ時間に間に合った。)


夢姫は待ち合わせ場所に着くとキョロキョロと周りを見渡す。

ここは待ち合わせとしてよく使われる場所。休日ということもあり、人で混雑していた。

人混みをかき分けながら進むと、壁際にもたれ掛かるようにして立っている黒髪の男を発見した。


「あっ、大河さーん!!」


「……おう、ゆめちゃん。」


夢姫は手を振りながら大河の側へ駆け寄った。


「はぁ、はぁ。すいません、待たせちゃいました?」


「いんや、俺もさっき着いたとこ。ってか、今日人すげーな。」


「あぁ、私も思いました。きっと休日だから、いつもより待ち合わせで使っている人が多いんじゃないですかね?」


「あ〜、そーだな。……ま、こんな場所で立ち話も何だし、移動しますか。」


大河はそう言うと人混みを縫うようにスイスイと歩いて行った。


(ちょ、ちょっと大河さん、足はやっ!)


夢姫は慌てて大河の後について行った。

そして、しばらく歩くと小洒落たお店の前に着いた。


「とーちゃーく!」


「へぇ。お洒落なお店ですね。」


「だろー?ここ、全席ボックス席か半個室になっていて、おしゃべりするのには持ってこいなんだよね〜。」


「ふーん、そうなんですね。」


「じゃ、中に入ろーぜ。」


大河はそう言うと、さっさとお店の扉を開けて中に入って行った。


(わわ、ちょっと待ってよー!!)


夢姫も慌てて大河に続いてお店の中へ入った。

大河は入ってすぐにやってきたウェイターに予約をしている旨を伝えると、ウェイターは二人を席まで案内した。

通されたのは半個室の席だった。


「半個室の席って珍しいですね。」


「だろぉ〜?ま、個室でも良かったんだけど、シーンとしてると気まずいじゃん?こっちの方がお互い緊張せずに話せるから気に入ってるんだよね〜。」


(へぇ、大河さんて俺様タイプかと思っていたけど、意外と相手の事を考えているのね。)


「あ、ここ料理も旨いからどれ頼んでもハズレはないと思うよ。ちなみに俺のオススメはこれとこれ。」


「美味しそうですね、じゃあこれを頼んでみます。」


「じゃー、俺はこっちにしよ。」


大河はウェイターを呼ぶとテキパキと料理を注文した。ウェイターは水の入ったグラスとおしぼりを丁寧に置きながら注文を受けると、一旦厨房に引っ込んだ。


「さぁてと。じゃ、料理が来る前に軽く俺とおしゃべりしようよ♡」


大河はニヤリと笑いながら夢姫を見た。


(ゔっ!……なんか嫌な予感がする……!)


夢姫は引きつった笑顔を浮かべながら「はは……。」と乾いた笑いを浮かべた。


「やーだなぁ、ゆめちゃん。俺といて緊張してる〜?もしかして、脈有りかなぁ〜?」


大河は軽い口調で夢姫に向かって先制攻撃を仕掛けてきた。


「そ、そんな事はありませんが……。」


「あれぇ、違う?俺、男としての魅力ない?こー見えて結構いい身体してるぜ?」


「えぇ!?いや、えと……、大河さんは男性としての魅力は充分あると思いますよ?」


夢姫は大河の直球過ぎるアピールにどう答えたらいいのか分からず、あたふたしながら答えた。


「ふーん。ゆめちゃん顔赤くなってるよ。かーわいいー♡」


大河はそう言うと、目を細め、薄い笑みを浮かべながらぺろりと舌舐めずりをした。その姿はまるで獲物を前にした空腹のライオンのようだ。

夢姫はライオンに遭遇した兎のように、ブルッと小さく震えた。

大河はそんな夢姫の心情などお構いなしに、夢姫の頬を指でつつ……と撫でてきた。


(ひーーーー!!やめて、怖い!!)


夢姫は大河の手を振り払うのも忘れ完全に固まった。


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