歪んだ三角関係〜後攻、大河〜3
小ノ道はタッチラインギリギリでなんとかボールに追い付くと身を翻し、一気に敵陣に向かって駆け出した。
前方からは大河を含めた敵陣メンバーがこちらに駆け寄ってきている。
小ノ道は近くにいた夢姫にパスを回すことにした。
「ゆめちゃん!パス回すよ!」
「は、はい!」
(うわー!!ボールが来るぞ!!)
小ノ道から少し強めのパスが回ってきたが、夢姫はしっかり足裏でそれをキャッチすると、前を向いて走り出した。
(とりあえず、ゴールに向かって走らなきゃ!)
夢姫が少しドリブルしたところで大河が前を塞いできた。
「やっほー、ゆめちゃん。
そのボール、いただくよ〜♡」
「大河さん!ダメですよ、渡しませんっ!」
「ふ〜ん。態度だけは一丁前だね。威勢のいい子は嫌いじゃないよ。でもね……。」
大河はそう言うと、怯んで一瞬後すざった夢姫とボールの間に強引に足先を割り込ませた。
「きゃっ!」
いきなりの出来事に一瞬身体のバランスを崩した夢姫。
すぐに体勢を整えたが、すでに時遅し。
気付いた時にはボールはすでに大河の足元へ。
そして、大河はニヤリと歪んだ笑みを浮かべながら、追い抜き際に夢姫の耳元で囁いた。
「身の程を弁えない子は、大事なモノを奪われちゃうよ?」
(……え?)
驚いた夢姫は振り返るが、大河はそのまま走り去って行った。
(い、今のはどーゆー意味?……はっ!いけない、ボール!)
夢姫は慌てて大河を追いかけた。
しかし、大河の高速ドリブルに追い付けない夢姫はどんどん離されていく。
大河はゴール付近まで行くと、一気にシュートを放った。
ザシュ!!
華麗にゴールが決まった。
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その後、試合は小ノ道が二点入れるも、大河の猛攻撃で大きく点を離されて6ー2でCチームが勝利した。
しかし、大河は納得いかない様子で独り言を呟いた。
「うーん、もっと入れられると思ったんだけどなぁ。」
そんな大河の独り言がたまたま耳に入ったのか、小ノ道が反応した。
「大河くん、何をそんなに気にしているの?」
「あ、小ノ道さん!……あー、えーと、何でもないっす。」
小ノ道はスッと目を細めて、声を落としながら大河の耳元で囁いた。
「何を企んでいるのか知らないけど、チームワークを乱す行為は程々にね。今回は見逃すけど、次回以降も続くようなら、こちらも黙ってはいられないよ。……分かったかい?」
「……!あ、ああ。分かったよ。」
小ノ道は大河から身を離すとニッコリ笑顔を浮かべた。
「そう。なら良かった。じゃ、次の決勝戦も頑張ってね。」
そう言いながら大河の肩を叩き、小ノ道はスタスタとコート外へ向けて歩いて行った。
残された大河は引きつった顔を浮かべながらその場に佇んでいた。