サークル活動は、波乱の予感?4
大河が嵐のように去っていき、その場に取り残された夢姫。
ピピーッ!!試合終了のホイッスルだ。
夢姫がポカーンとしているうちに練習試合は終わり、Cチームが一点差で逃げ切る形で勝利した。
負けたDチームのメンバーは雑談しながらゾロゾロとコートの外へやってきた。
「やっぱり剛力さんは強いね。」
「ユウユウと一緒だから張り切ってたよな。」
「やっぱ愛の力ってやつ〜?」
「おい、あんまり騒ぐと剛力さんに聞こえるぞ!」
(大河さんが言ってた通り、みんな剛力さんとユウユウの事知ってるんだ。)
剛力がコートから飲み物を持って戻ってきた大河に向かって話しかけた。
「おーい!大河君!!悪いけど、最後の試合のレフリー役やってくれない!?」
「え〜!俺!?今飲み物買ってきたばっかなのに!」
「次の試合は僕と神風君が出るし、小ノ道は今試合終わったばかりだから大河君やってよ〜。じゃ、ヨロシク!」
「ちぇっ、人使い荒いんだから……。」
大河はブツクサ文句を言いながらコートに入っていった。
(そっか、次は決勝戦だから、勝ったチーム同士の試合なのね。大河さんの事に気を取られていてすっかり忘れていたわ。次はしっかり試合をみておこう。)
夢姫は気持ちを切り替えて試合に集中することにした。
ーーーーーーーーーー
「じゃ、コイントスすっから、こっちに集まって下さ〜い。」
大河のやる気のない声で近くにいたメンバーが集まる。結果はAチームが先攻となった。
ピッ!
試合開始のホイッスルが響く。
マーサのキックオフで試合が動き出した。マーサはまず味方にパスを回す。回されたパスを受けた味方は、ゆっくりめにドリブルしながら相手の出方をみる。
Cチームには実力者である剛力がいるため慎重になっている様だ。
Cチームも相手の様子を伺っている様で、あまり派手に攻めてくる様子はない。
見方は後方の神風にパスを回した。パスを受けた神風は流れを変えるため、いきなり敵陣へ突っ込んでいった。
(おぉ!神風さん、一気に行ったぞ!)
神風の派手な動きに一瞬動揺したCチームだが、すぐに神風を追いかけ、ガードを固める。しかし、神風はボールと共に華麗に身を翻しガードをすり抜けた。
(うわ!凄い!ボールと一心同体のようだわ!)
ゴールまであと少しというところで、剛力が神風の前に現れた。
「神風君、悪いけどここは通せないなぁ。」
「……強行突破します。」
神風は強引に抜けようとドリブルの速度を上げる。しかし、剛力も神風に食い付いてきた。神風は剛力を振り切ろうと左右にフェイントをかける。……が、足捌きを読まれ、剛力にボールを奪われてしまった。
(あっ!剛力さんがボールを奪った!)
そこからの展開は早かった。
剛力は一気に駆け出し、次々に敵を振り切ると相手のゴール付近まで距離を詰めた。そして、近くにいたユウユウにパスを回し、受け取ったユウユウがシュートを決めた。
ガシャン!!
ユウユウのシュートは見事にゴールネットを揺らし、得点が入った。
「やーん♡また入ったぁぁー!!ユズ……剛力さぁん、私頑張ったよぉ♡」
ピョンピョン跳ねて全身で喜ぶ夕日に剛力も嬉しそうな顔をしている。
「良くやったな、ユウユウ。ナイシュー!」
他のメンバーも夕日のシュートを褒めた。
「ユウユウ、ナイシュー!」
「いい蹴りだったね!」
「愛……いや、足!足捌き良かったよ!」
(わぁー!ユウユウ凄い!!なんだか二人の息の合ったプレーに、愛情を垣間見た気がするな……ふふっ。)
「さっきのプレー、凄かったね。」
ルリが夢姫に話しかけてきた。
「あ、ルリさん。そうですね!神風さんと剛力さんのプレーも凄かったし、ユウユウもシュート決めていたし、みなさん上手ですね!」
「そうねぇ。特に剛力さんは代表だけあってこのサークル内じゃ一番の実力者だし、それに追い付けるのは神風君くらいなんじゃないかしら?……あ、小ノ道君と大河君もかな。現役でコーチやってるだけあってあの二人も動きに無駄がないわ。」
「そうなんですね。」
「剛力さんて、サッカー選手の内定者に選ばれるくらいの実力者だったらしいよ。神風君もサッカー選手として期待されるくらい上手かったって聞くし。小ノ道君も大河君も元サッカー部で経歴も長いみたいよ。」
「ええー!そうなんですか!?」
「剛力さんと神風君は、怪我が原因で以前よりパフォーマンスが落ちたって聞いたけどね。それであれだけ動けるんだから、きっと全盛期は凄かったんでしょうね。」
「……怪我、ですか……。」
夢姫はふと、初回のサークル活動時に転んで怪我をした時の事を思い出した。
(あぁ、そうか。だから、私が転んで怪我をした時、二人とも過剰な程心配をしてくれたのね。神風さんが、お姫様抱っこしてくれたり、車で送迎してくれたり、優しくしてくれたのは、きっと、怪我が心配だっただけ……。)
夢姫はチクッとする胸の痛みを抑えながら俯いた。
ピピーッ!!
試合終了のホイッスルが鳴り響く。
「あっ、試合終わったみたいよ。……あれ?ゆめちゃん、どうかした?」
胸を押さえ俯いていた夢姫をルリが心配そうに気遣った。
「へ?いや、あの……何でもないです。」
「そう……?」
試合が終わったばかりの剛力が汗を拭きながらメンバーに声をかけた。
「おーい!試合が終わったから、みんな一度コートに集まってー!!」
「呼ばれちゃったね、行こうか。」
「あ、はい!」
夢姫はルリと共にコートへ向かって歩き出した。
「全員集まったかな!?今日の活動はこれで終了なので、現地解散となります。この後、他の団体さんがコートを使うみたいなので、忘れ物がないように気をつけてくださいね!お疲れ様でした!!」
「「「お疲れ様でした!!」」」
(なんか部活みたいなノリだな。)
夢姫がぼんやりしていると、大河が話しかけてきた。
「ゆめちゃん、着替えたら休憩棟で待っててね!じゃ、後で〜。」
「……え!ちょっと大河さん!!」
大河は用件だけ話してさっさと離れて行ってしまった。
(もー、大河さんっ!一体何なのよ!!)