表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/56

歓迎会の、その後2


(部屋にいる時は分からなかったけど、ここってタワマンだったんだ……。)


エレベーターで降りながら、夢姫はそんな事を考えていた。


(しかも最上階……だよね?山の手線内から外れた場所とはいえ、ここら辺のタワマンも相当なお値段のはず。家賃いくらなんだろう?それとも、まさか購入?

いやいや、独り身でさすがにそれはないか……。)


広い玄関ロビーを抜け、エントランス部分で待っていると、白いミニバンが一台やってきて、中から神風が出てきた。


(あのエンブレムは、高級車だよね?もしかして神風さんてお金持ちだったの??)



「お待たせしました。後ろは荷物が入っているので、助手席に乗ってください。」


神風は、助手席のドアを開けて夢姫をエスコートした。


「あ、はい。ありがとうございます。」


パタン、と扉が閉まり、運転席に神風が乗り込んだ。


「自宅付近になったらナビしてくれると助かりますが、道案内は出来ますか?」


「花々駅付近の道なら大体分かるので大丈夫です。」


「了解です。じゃあ、このまま出発しますね。……ちょっと失礼。」


神風は突然助手席に腕を回して体を寄せてきた。


(はわわわっ!ち、近い…!)


急に神風が近付いてきたのでドキッとした夢姫だが、神風は車をバックをするために半身を捩っただけだった。


(あ、なんだ車をバックさせるためだったのね。うぅ、今朝の添い寝事件があってから、嫌でも意識しちゃう〜。)


「ゆめちゃん、顔が赤い。もしかして、男として少しは意識してくれている?」


ガン見している夢姫の視線に気付いた神風が、少し意地悪そうな顔で訪ねてきた。


「え!!!いや、その……。」


「ふふっ、冗談ですよ。ゆめちゃんて、いい意味であまり年上っぽくないですよね。……そーいえば、朝聞きそびれたんですが、寝言で「ヒロ」って何度も呼んでかなり魘されていましたけど、悪い夢でも見ていたんですか?」


(……ヒロ……。)


「それは……元夫の名前ですね。寝言をしゃべっていたところを見られるなんて、お恥ずかしい限りです。」


「……ゆめちゃんて、結婚していたんですか?」


「あ、はい。でも……最近離婚したんです。バツイチってやつですね、あはは。」


「そうだったんですか……。すいません、余計な話を振ってしまいましたね。でも、もしお子さんがいるなら早めに帰らないと。」


「あ、子供を授かる前に離婚しているのでその心配はいらないです。お気遣いいただいてありがとうございます。」


「そうでしたか。それなら安心しました。」


「すいません。バツイチを隠すつもりはなかったんですが、中々言い出す機会もなくて。サークルのメンバーにも先に話しておいた方が良かったですか?」


「プライベートな話題だし、無理に話す必要はないと思いますよ。」


「そうですか。じゃあ、必要に応じて対応することにしますね。離婚は嫌な思い出だけど、悪い事していないのに隠すのも何か違う気がするし。それに、元夫と別れて今は清々しい気持ちなんです。大体、借金した挙句に浮気するやつなんてこっちから願い下げです。」


「……借金と浮気?」


「『世界一のボディビルダーに、俺はなる!』とか言って、プロテインやらトレーニング機材に湯水のようにお金使っちゃって。借金でどうしようもなくなったら、今度は金回りのいいマダムを捕まえて、不倫の末に海外逃亡ですよ?今はどこで何をやっているのかすら分かりませんし、知りたくもないです。」


「未練は、ないんですか?」


「夫にですか?そんなもの、ない、ない!!むしろ離婚出来て良かったと思っています」


「……そうですか。」


「ごめんなさい、変な話をしちゃいました。」


「話題を振ったのは僕ですし気にしないで下さい。話してくれて、ありがとう。」


「えと……こちらこそ、聞いてくれてありがとうございます。……ふふっ。」


「……?どうかしましたか?」


「いや、2人してありがとうって言い合っているから。

なんかおかしくなっちゃって。」


「……ふ。確かに。」



ーーーーーーーーーー



「場所的にゆめちゃんの自宅より早くグラウンドに着くので、先に荷物だけ置いてきてもいいですか?」


「あ、はい。いいですよ。」


「じゃあ、このままグラウンドの駐車場にに行きます。荷物運ぶだけなので用事はすぐに終わりますが、エンジン切った車内は蒸し暑くなるかも知れないので、良ければグラウンド内の休憩所で待っていてください。」


「分かりました。」


駐車場に着いた神風と夢姫は車から降り、荷物を持った神風は夢姫と一緒に歩き出した。


「ここから真っ直ぐ見える建物が休憩所なので、中で休んでいてください。僕はこのままグラウンドに行ってから休憩所に寄りますので。」


「あぁ、あれですね?了解です。」


「では、後ほど。」


そう言い残し、神風はひとりグラウンドへ向かって歩き出した。


(じゃあ私は休憩所で待っていよう。)



ーーーーーーーーーー



「……あれ?もしかして、ゆめちゃん?」


休憩所に着き適当な場所に座っていると、いきなり背後から声を掛けられた。驚いて振り向くと、そこには大河がいた。


「え、大河さん!?こんなところで会うなんて、びっくりしました。どうしたんですか?」


「俺はサッカーチームの助っ人で準備に駆り出されてきたんだけど。……それよりなんでこんなところにいんの?今日はうちのチームとの練習試合以外には使用予定はなかったはずだけど?」


「……あっ。えーと……。」



(どうしよう、こーゆー時は何て答えたらいいのかな。

やましい事をしていた訳じゃないけど、神風さんと一緒に来た、なんて言ったら色々と誤解されそうだし。でも、ここは正直に経緯を説明した方がいいかな。)


夢姫が言葉に詰まっていると、背後から神風の声がした。


「ゆめちゃん、お待たせしました。……大河?」


(あっやば。鉢合わせになっちゃった。)


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ