もっとちゃんと妄想しなさいよ
「オスオミ、マリル。ご飯できたわよ」
「おー、ありがと。いただきまーす」
「いただきます!」
夕飯時。マゴリアとマリルと俺で食卓を囲む。
「相変わらずマゴリアの手料理は美味しいな……お前、あんま料理得意そうなイメージじゃなかったんだけど、ほんと美味しい」
「一言余計なのよ。ま、分からんでもないけどね。あたし割と掃除とか苦手だし」
「ままのごはんすきー」
「そうかぁ、マリルも美味しいか」
「もうなんかすっかりママ呼ばわりにも慣れちゃったわ……」
ほのぼのと、まるで家族のように団欒を過ごす俺たち。
「って、違うだろ。本来の目的どうなったんだよ」
俺はこの幸せな雰囲気にすっかり忘却していたが、救国のための武器の具現化は相変わらず進まない。
「しょうがないでしょ、出来ないもんは出来ないんだから」
「のんびり過ぎないか……?俺が言うのもなんだが」
元々、俺がこの世界に呼び出されたのは、マゴリアが国の脅威となる魔王軍を撃退する伝説の武器を、俺の妄想と己の魔法を組み合わせる事で作り出し、その力をもって国を救いたいという目的のためだ。
「だから言ったじゃない。あたし達だけが頑張ってもしょうがない事だし、毎日あたしもアンタも魔力と妄想力めいっぱい使い切って作ろうとしてんじゃない」
「そうなんだけどさあ」
なんか、こんなんで良いのかなあ、って思ってしまうのだ。
状況が停滞している事に、俺は危惧を抱いていた。
「心配ならもっとちゃんと妄想しなさいよ、エッチな身体のエルフとかばっかじゃなくて」
「ぐうの音も出ねえ……」
今目の前にいて俺たちを両親のごとく慕う無邪気な赤子のようなエルフ・マリルは、俺が『異世界において定番』イメージとして、マゴリアと共に試しに作ってみた『初の人型人造生命』である。
本来ならマゴリアが魔力を回収すれば消えるはずの肉体は何故かこの世に定着し続け、元となったマテリアルの回収もできないので仕方なくこうして娘のように育てている次第だ。
「あー不潔不潔、娘に欲情する父親なんてサイテーだわ、ね?マリル」
「よくじょー?」
「教育に悪い上に人聞きも悪い事を教えるな、マゴリア!!」
全く、俺がいつマリルの身体に欲情したってんだ。
言ってはなんだが、マリルがこの世に生を受けてから、俺は一切そういう感情をマリルに向けずに耐えているのだ。そこはマジなので信じて欲しい。
「冗談よ。流石にそこは信じてるし」
「くっ……男の性欲に微妙に寛容なツラでそういう台詞言われても煽られてるようにしか思えん……」
マゴリアは正直、同居していて思うが、隙が多い。
初日の負い目もあってなるべくそういう目で見ないように意識はしているが、結構ことあるごとにこっちを刺激してくる感じの振る舞いが多いので、溜まったものではない。
「自分の家なんだからダラけてる時くらいあるわよ。なんでアンタにそこまで気ィ遣わなきゃいけないのよ」
とはマゴリアの弁であり、居候の立場からは何も言えない。
とはいえ、その振り撒かれる色気に反応したらしたで、
「何見てんのよ、スケベ」
とニヤニヤ笑われるので、これはもう正直マゴリアにも非があると思うのだがどうだろうか!!
「ぱぱ、まま、けんかしちゃ、や!」
無邪気なマリルに窘められ、俺は黙りこくってしまう。
マゴリアもからかい過ぎたか、と反省の意を込めてマリルと、多分俺に謝る。
「ごめんごめんマリル。喧嘩してないから心配しないで。パパはねー、ママを見るとドキドキしちゃう病気なの。でも、ちゃんと一人で解消できるから大丈夫よ」
「だいじょうぶ?」
「おっ、お前っ、無垢な娘になーにを言ってんだバカ!」
見られてたのか知識として知ってるだけなのか知らないが、どうもそういう行為で解消している事実を把握されているのは分かった。
「まあ、あたしが見てないとこで励むのは結構だから。生理現象なんでしょ、しょうがないじゃない」
「そういう優しさやめてー!!」
奇妙な女2人男1人の共同生活は、こんな感じで精神的な疲弊がかなり溜まるのだった。
妄想★マテリアライゼーション!9話をお読みいただきありがとうございます。
可愛い魔女っ娘、金髪巨乳エルフとの疑似家族生活で溜まり続けるオスオミくん。
マゴリアはわかっててからかってくるタイプのヒロインに変えました。
本気で嫌がる意味でスケベって言わないんすよねコイツ。
お前なあ!!
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